決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -【国際】

決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -


 - 人類の歴史は戦争(紛争)の歴史 - 
 日本史や世界史を学ぶ皆さんは、すでに気付いていると思いますが、戦争(紛争)が歴史に及ぼす影響の大きさは計り知れないものがあります。戦争の結果、国の政治経済の形態が激変し、新たな歴史を刻んでいったという例を数多く学んだことと思います。まさしく、人類の歴史は戦争の歴史といっても過言ではありません。
 これまで、紛争とは「国と国との争い」として考えられてきました。しかし、戦いが起こる原因を詳しく見ると、領土拡大による資源や市場の確保、宗教や民族・文化などの相違による侵略・征服、内部紛争を抱える国に対する他国の介入などが考えられます。そして、これらの要素が複雑に絡み合って紛争が起こるため、根本的な解決への道筋は簡単なものではありません。


 - 「戦争の世紀」とも称された20世紀 - 
 20世紀は戦争の時代ともいわれ、日本を含めて世界各地で戦争が起こりました。第一次世界大戦や第二次世界大戦では、国と国の戦いにとどまらず、各国の思惑が入り混じった地球規模の戦争へと拡大し「戦争の世紀・20世紀」とも呼ばれるようになったのです。
 第二次世界大戦以降、アメリカを中心とする自由主義陣営とソビエトを盟主とする社会主義陣営が、イデオロギーを背景に厳しく対立する「冷戦」時代を経験しました。さいわい、全面的な武力衝突がなかったので「冷戦」と呼ばれています。これに対して、武力衝突を伴う戦いを「熱い戦争」と呼んでいます。
 長く続いた東西冷戦時代は、一方の盟主国ソビエトが1991年に崩壊したことで終焉し、平和で豊かな21世紀を期待する機運が高まりました。しかし、冷戦構造は、世界各地で完全に解消されずに残されているのが現状です。北朝鮮の核開発などを巡る対立は冷戦時代の構図を色濃く残し、日本も参加する6カ国協議などで対応を協議していますが、目立った進展を見せていません。このように、20世紀の負の遺産を引き継いで21世紀がスタートしました。

決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -  - 「新しい戦争」が登場した21世紀 - 
 2001年9月11日、アメリカで衝撃的な「同時多発テロ」が、国際的なテロ組織アルカイダによって引き起こされました。平和な21世紀という願いは、テロ攻撃で一瞬のうちに崩れ去ったのです。
 テロ組織は、複数の飛行機を乗っ取ってニューヨークの超高層ビル「世界貿易センタービル」や、国防省が入る「ペンタゴン」などに突入させるという、同時多発テロを敢行しました。その結果、死者3000人、負傷者6000人を超える被害を出す大惨事になったのです。アメリカは、テロ組織の周到な計画、豊富な資金、国際的ネットワークなどに支えられたテロ攻撃という予想もつかない攻撃を受けたのです。
 ソビエトの崩壊後、世界で唯一の覇権国として君臨していたアメリカは、テロ組織撲滅という正義を掲げて「対テロ戦争」に踏み出しました。アルカイダの根拠地とされるアフガニスタンを攻撃し、タリバン政権を打倒しました。また、大量破壊兵器保持という理由でイラクを攻撃し、フセイン政権を打倒しました。しかし、大量破壊兵器は見つからず、戦争の理由の不透明が指摘されるとともに、抵抗勢力の粘り強い反撃などで苦戦を強いられている様子が連日のように報道されています。

 - 世界的紛争が続き、不安と混乱の時代に! - 
 21世紀に入り、国際社会にはテロ組織やNGOなどの国際機関、多国籍企業などが登場しました。人類共通の課題になってきた環境問題も、地球規模での対応が求められています。そして情報通信技術は飛躍的に発展し、国境を超えたヒト・モノ・文化などの交流も拡大する一方です。このようにグローバル化が急激に進む中、従来の紛争は大きく姿を変えようとしています。
 連日報道される、新疆ウイグル地区の紛争、イラク・イラン・アフガニスタン紛争、さらに紀元前から続くパレスチナなど、世界の各地で紛争が起こっています。これらの紛争は歴史的にも領域的にも広大であり、複雑な問題を含んでいるため、単に知識を得るだけで理解できるテーマではありません。しかし、いま、世界で何が起こっているのかを知り、じっくりと考える手掛かりになればと考えます。
決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -  - 拡大する中国・新疆ウイグル自治区の暴動 - 
 新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで今年7月、200人近い死者を出すという騒乱が起き、現在でも紛争が続いています。中国は56の民族がともに暮らす多民族国家ですが、漢民族が全体の約9割を占め、他の少数民族を支配しています。中国に5つある自治区の一つ新疆ウイグル自治区は中国の北西部に位置し、区都ウルムチは古くからシルクロードのオアシスとして栄えてきました。
 面積は166万平方キロメートルで日本の約4.5倍、中国国土の6分の1に相当する広さとなっています。人口は約1700万人で、その約半数をウイグル族が占めています。18世紀に清朝がこの地を征服し、19世紀に新しい領域という意味で「新疆」と名付けられた歴史を持ちます。このため、ウイグル族の独立運動志向は高く、これまでにも度々衝突してきました。
 中国政府はこの地に、漢民族の入植を政策的に推進し、漢民族の比率は新疆ウイグル自治区成立時の7%から40%を超えるようになったのです。

 - 背景に横たわる複雑な国際情勢 - 
 さらに、問題を複雑にしているのは、背後に横たわる複雑な国際情勢があります。新疆ウイグル自治区は、イスラム教徒が多数を占める8カ国と国境を接し、ウイグル族もイスラム教徒が主流となっています。中国では信教の自由を保証していますが、イスラム勢力の拡大が自国に及ぶことを警戒し、厳しい監視下に置いています。このため、イスラム教徒の反発を招いているという宗教的な側面も見逃せません。
 さらに、新疆ウイグル自治区は、中国の国防上重要な地点であるとともに、石油や天然ガス、ウランなどの天然資源に恵まれた地域です。また、最西部のタリム盆地は地下核実験場として利用されてきました。
 このように、今回の紛争は少数民族の独立運動、宗教問題、国際情勢を背景にした中国の国益保持・拡大などといった問題をはらんでいます。
決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -  - 「アフガニスタン紛争」から「イラク戦争」へ - 
 2001年9月11日の「同時多発テロ」の後、アメリカは、テロの首謀者をウサマ・ビン・ラディンが組織する「アルカイダ」と指定。テロリストの引渡しをアフガニスタンのタリバン政権に要求しましたが、拒否されたため軍事侵攻したのがアフガン・テロ掃討作戦です。アメリカの圧倒的な軍事力の前に、政権を追われたタリバンは、隣国パキスタンとの国境地帯などに逃亡・潜伏し、現在でもゲリラ作戦を展開しています。
 当時のブッシュアメリカ大統領は、イラクから大量の破壊兵器がテロリストに流れ、国際的な脅威になっていると指摘し、アメリカ軍を湾岸地域に派遣し開戦に備えました。イラクは国内施設への国連査察団の受け入れに応じましたが、アメリカやイギリス軍は査察内容を不服として2003年3月20日、首都バグダッドを空襲し、イラク戦争が始まったのです。陸上部隊も侵攻を開始し、開戦から21日目にはバグダッドを制圧し、フセイン大統領は拘束され、2006年にイラク高等法廷で死刑の判決が下されました。
 2004年6月にイラク暫定政権が誕生し、英米軍を中心とした占領統治は終わりましたが、多国籍軍はそれ以降も駐留し続けています。日本政府は一貫してアメリカに追従する姿勢を見せ、2004年2月から陸上自衛隊が人道復興支援のため、イラク南部のサマワで活動を行ったことは良く知られています。

 - 予断を許さない今後のイラク情勢 - 
 正規軍同士の戦いは終わり、アメリカのオバマ大統領はイラクに駐留している14万人強のアメリカ軍のうち、10万人程度を2010年に撤退させ、2011年までには全面撤退させる表明しています。その一方で、アフガニスタンへの増派計画を発表し、対テロ戦争の軸足をアフガニスタンに移す姿勢を示しています。
 外国軍が去ったとしても、イラク情勢は予断を許しません。疲弊しきった国内経済の建て直し、豊富な石油などの資源をめぐる諸外国との軋轢などが予想されます。さらに、北部を中心に居住するクルド族との民族紛争、イスラム教徒が大半を占めるイラクですが、シーア派とスンニ派の宗派間の対立といった難問を抱えています。今後の成り行きを注意深く見守りたいものです。
決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -  - 決着が待たれる北方領土 - 
 ソビエト(当時)が1945年、日ソ中立条約を一方的に破棄して択捉、国後、色丹、歯舞の北方四島を占領。日本はそれ以降、四島を日本の固有領土としてロシアに返還要求しているのが北方領土問題です。
 日ロ間の国境線策定は、19世紀から続く歴史的経緯がありますが、一番最近の条約は1951のサンフランシスコ講和条約。日本は千島列島の領土権は放棄しましたが北方四島は含まれないと主張しています。他方ロシアは、米英ソで結んだヤルタ協定をもとに四島の領土権を主張しています。
 日本の力強い外交手腕が問われています。

 - 海底油田が魅力の尖閣諸島 - 
 尖閣諸島は、沖縄本島の南西約300キロメートルの海域に位置し、その面積はわずか1ヘクタールほどの岩礁になっています。この尖閣諸島を巡って日本、中国、台湾がそれぞれ領有権を主張しています。この小さな島が注目されているのは、1960年代に海底油田の存在が指摘され、中国や台湾が領有を主張し始めたからです。
 日本は、明治政府が沖縄県に尖閣諸島を編入したことから固有の領土としています。第二次大戦後、アメリカの統治下に置かれたが、1972年の沖縄返還で日本の領有化に戻ったとし、アメリカも了承しているとの見解です。中国政府は、沖縄県よりも古く明の時代から中国の海上防衛区域に含まれていたこと、1895年の下関条約で日本に割譲された領土と主張しています。また、台湾は尖閣諸島の地理的位置や地質構造、歴史的な継続使用などを主張して、固有の領土だとしています。
 これまで、日本の民間団体の上陸を巡ってトラブルがありましたが、現在は長期的な視野で問題解決にあたるという認識で一致しています。

 - 日韓両国で竹島領有を巡る争い - 
 竹島は、島根県の壱岐島からさらに北西約150キロメートルの海上に浮かぶ岩礁の島。この竹島の領有権を巡って日韓両国が対立しています。竹島問題が注目されるようになったのは、国連が1996年に200カイリの排他的経済水域を設定したことです。日韓両国はともに漁業を主要な産業にし、日韓両国の漁民たちが17世紀頃から漁業基地として利用してきました。しかし、竹島を自国の領土にすることで、排他的経済水域を拡大できることになり、領有権を主張するようになったのです。
 明治政府は、1905年に竹島の領有を宣言し、島根県に編入しました。国際法的にも日本領土とされています。しかし、韓国は1952年、当時の李承晩大統領が「李承晩ライン」と呼ばれる国境線を独自に設け、「独島」と呼んでいます。韓国はこの「竹島」に警備隊を配置し無線交信所まで設置しています。日韓両国は協議を重ねていますが、互いに譲ることなく問題は先送りされているのが現実です。
決して見落とせない世界の紛争!! - 人々は、なぜ憎しみ合うんだろう... -  - 頻発する国際紛争の中で日本を考える - 
 連日のように報道される新疆ウイグル自治区の暴動、アフガニスタン・イラクでの「対テロ戦争」、日本も決して例外ではなく多くの国際問題を抱えています。このほか、昨年の北京オリンピック前に起こったチベット紛争、北朝鮮による拉致問題や核問題、報復が報復につながるパレスチナ問題、海賊で注目されるソマリア紛争など、世界各地で紛争が勃発しています。
 日本にとって、比較的関係が深い紛争を取り上げ、その背景を考えてみました。しかし、世界全体を見回すと驚くほど多くの紛争が起こっています。領土問題、民族問題、宗教対立、貧富の格差、資源獲得競争など紛争の原因はさまざまで、しかも複雑に絡んでいます。21世紀は環境問題に見られるように、地球規模で考えなければならない時代になりました。世界各地で発生している紛争に、日本は関係ないからといって無視するわけにはいきません。各地の紛争を「地球規模で考える」という視点で向き合うと解決のための新しい発見があると思います。戦争(紛争)を好む国家、民族はいないはずですから。
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