27カ国、約5億人が加盟する欧州連合【国際】

27カ国、約5億人が加盟する欧州連合


【「欧州連合(EU)」誕生までの歴史】
- EUの歴史は、1951年にまでさかのぼる - 
 EU(欧州連合)という言葉をよく見聞きしますが、その実態についてはあまり知られていないようです。現在、EUに27カ国が加盟し、その面積は434万平方km。アメリカの半分以下の面積ですが、日本の37万8千平方kmと比べると約12倍の広さとなっています。この地域で暮らす人は約5億人で、中国・インドに次いで世界3位という大きな連合体を構成しています。経済面でも世界屈指の経済規模を誇り、市民の生活レベルも高水準を保っています。また、政治的にも27カ国が「一つの声」として、世界に発信しているのが現状です。
 このようにEUは、国の枠を超えた集まりとして拡大し、現在27カ国で構成されていますが、その歴史を振り返ると戦後間もない1951年に発足した「ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体」にまでさかのぼります。

27カ国、約5億人が加盟する欧州連合 - 第二次世界大戦の反省が、EU誕生の伏線に!! - 
 当時、西ヨーロッパ諸国の周囲には、鉄のカーテンを施したソビエトを中心とする社会主義陣営、大西洋の向こうには超大国になったアメリカが控えていました。東西冷戦という緊張した国際情勢の中、西ヨーロッパ諸国の間では、ウィンストン・チャーチル英首相などが中心になって「ヨーロッパ統合」という機運が盛り上がってきました。
 ドイツとフランスの国境地帯に炭鉱があり、それを利用した鉄鋼産業が発展していました。これが火種になり、両国はしばしば紛争を起こしてきました。第二次世界大戦では、ヨーロッパ各国は互いに戦い、戦場となって国土が荒廃した歴史を持ちます。この反省から、戦争に欠かせない鉄鋼と石炭を国の枠を超えた国際機関が管理するという考えが提唱され、1951年に西ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの6カ国が参加し「ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)」という国際機関を誕生させました。
 そして同じ6カ国によって、1958年に「ヨーロッパ経済共同体(EEC)」や、「ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)」を発足させ、次第に協力分野を拡大させていきました。
27カ国、約5億人が加盟する欧州連合 - EECによって、共同市場の構築に弾み - 
 これら3つの共同体の中でも、EECではヨーロッパを一つの国のようにするため、共同市場の構築をめざしました。加盟国の間では、互いの輸出商品に関税をかけないことで、商品を安く購入できるようになり、外国との競争力も高まりました。さらに、誰でもパスポートやビザなしに国境を越えて勉強したり働くことができ、加盟国の間で会社を自由に作ったり買収することが可能になりました。
 この結果、各国の経済政策に歩み寄りが見られ、互いに協力し合う関係が生まれることで経済発展をめざしたのです。

- 1967年に「ヨーロッパ共同体(EC)」が誕生 - 
 EUの母体ともいえる、ECSCやEEC、EURATOMの3共同体は、それぞれ個別の機関・枠組みの中で活動を続けてきました。これらの活動をより効率的に進め、深化させるには一緒になったほうが得策という意見のもと、1967年に今日のEUの基になる「ヨーロッパ共同体(EC)」が誕生しました。
 参加国は、EECと同じ6カ国でしたが、1973年にイギリス、デンマーク、アイルランドが加盟。1980年代になるとさらにギリシャ、スペイン、ポルトガルが加盟し、12カ国に拡大しました。
 EUの旗は、青字に12の金色の星が染め抜かれていますが、これはこの当時の加盟国を表しています。現在は27カ国が加盟していますが、アメリカの国旗のように州の増加によって星の数は増やしていません。この理由の一つとして、ヨーロッパでは12という数字には「安全」という縁起のいい意味があるからだそうです。

- EUの存在意義を明記したマーストリヒト条約 - 
 努力を積み重ねることで、加盟国の着実な増加などECはその存在感を増していきました。そして、さらに経済や通貨も統合し、政治的な側面も強化した連合体の設立をめざしていきました。
 この母体となったのが、1991年に締結された「マーストリヒト条約(欧州連合条約)」です。加盟12カ国が、オランダの保養地マーストリヒトで署名したため、このように呼ばれています。この中で、条約の基本精神を「人間の尊厳に対する敬意、自由、民主主義、平等、法の支配、マイノリティに属する権利の尊重という価値観に基づいて設置されている。これらの価値観は加盟国すべてに共通するものである」としています。そして、具体的な目的については「地域内での価値観や平和、市民の福祉の促進を掲げ、経済や通貨の統合など、政治的な連合をめざす」としています。1993年の条約発効によってEUがスタートし、今日の姿が浮かび上がりました。
27カ国、約5億人が加盟する欧州連合 - EUの本部は、EUの象徴ともいえるベルギーに - 
 マーストリヒト条約締結後も、1995年にオーストリアやフィンランド、スウェーデンが加盟し、その後も加盟国は着実に増え、2007年にブルガリア、ルーマニアが加盟して現在の27カ国になりました。さらに、EU加盟の申請が相次いでいるのが現状です。
 さて、拡大するEUの本部がベルギーのブリュッセルに置かれていることはあまり知られていないようです。ベルギーはベネルックス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)の一角を占める小国です。ここに本部が置かれたのは、ドイツ、フランス、オランダ語を話す人々が住む連合国家であることや、イギリスからの玄関口、さらにフランスやドイツといった大国ではないことなどで選ばれました。まさにEUを象徴する国で、ブリュッセルはEUの本部を置くに相応しい条件を備えています。
27カ国、約5億人が加盟する欧州連合 【更なる団結を求めて「リスボン条約」が発行】
- EU初の欧州理事会常任議長(EU大統領)が誕生 - 
 マーストリヒト条約の締結後、時代の変遷に応じてEU加盟各国の間で様々な約束事を交わしてきました。そして昨年12月、EUの新しい基本条約となる「リスボン条約」が発効しました。
 リスボン条約は、それまでのニース条約を改定したもので、「EU大統領」に相当する任期2年半の欧州理事会常任議長と、「外相」に相当する外務安全保障上級代表というポストを新設しました。そして1月、ベルギーのファンロンパイ前首相を大統領に、外相にはイギリスのアシュトン氏を選出しました。
 さらに、リスボン条約ではEU全体の意見集約を素早く行うため、「加盟国の55%以上、総人口の65%以上の賛成」で意思決定を行う二重多数決制を採用しています。世界情勢に素早く対応できる体制を整え、その存在感はこれまで以上に高まったといえるでしょう。

- EU拡大の反面、内部に不協和音も? - 
 EU大統領に、世界的に著名なイギリスのブレア前首相の名が取り沙汰されたことがあります。結果として、ベルギーのファンロンパイ前首相が選ばれたのは、ベルギーというEUの縮図のような国の首相を務め、多様な意見をまとめ上げてきた実績が評価されたようです。
 ところで、世界への発信力の高まりの反面、EU内部に多くの問題点も抱えています。二重多数決制の採用で、反対意見も多数に従うことが求められます。EUの拡大を象徴するように加盟申請が続き、申請中のトルコは地理的に純ヨーロッパとは言い難く、宗教面ではイスラム教徒が多くを占める国家だという問題を抱えています。また、国内紛争を経験してきたクロアチア、マケドニアなどのバルカン諸国の加盟についてEU加盟国の判断が分かれています。
 これら加盟申請中の国家について、「条件を満たせば断る理由がない」と、EU拡大に積極的な意見がある一方、「同一の価値観が保ちにくい」、「経済格差があり、財政負担の問題が出てくる」といった慎重な意見を持つ国も少なくありません。このようにEU内部に不協和音が広がる恐れがあり、EU大統領の手腕が注目されています。
27カ国、約5億人が加盟する欧州連合 【EUの共通通貨「ユーロ」の影響力】
- 「ユーロ」の導入で経済発展をめざす - 
 EECがEUにまで拡大・発展してきたのは、停滞するヨーロッパ経済の立て直しという側面も見逃せません。保守化が進むヨーロッパでは、新しい産業が伸びず、価格競争でもアメリカや日本に立ち遅れていました。この問題を打破するには、小さな国々が一つの国のようになれば市場が広がり、コストも下がって国際競争力が高まります。
 さらに、共通の通貨を持つことでより大きな経済発展が望めます。ヨーロッパ各国は、国ごとに通貨が異なり、国境を通過するたびに両替が必要になり、その両替手数料はばかになりません。また、同じ通貨を使えば、国ごとに商品価格がすぐに分かり、消費者は安くて品質に優れた商品を求めます。この結果、企業の競争力が高まることにつながります。
 こうした背景を踏まえて、共通の通貨導入の検討が進められ、1999年1月1日から決済通貨として「ユーロ」が導入され、2002年1月1日から現金の流通が始まりました。そして現在、ユーロはアメリカの「ドル」と並んで世界で最も重要な通貨としての地位を占めています。




- 世界のお金「ドル」と肩を並べる「ユーロ」? - 
 ユーロが流通するまでは、貿易の支払いは世界のお金とされる「ドル」で行われてきました。現在、EU加盟国でユーロを導入しているのは16カ国。ユーロが広く使われるようになると、加盟国同士の支払いはユーロになり、関係の深い国との取引にもユーロが使われるようになります。取引の中でユーロが活発に使われるようになれば、世界経済全体の中でドルの地位が低下することになります。ユーロ導入でEUが経済的に発展すると、「ドルを持っているよりユーロを持ちたい」と考えるようになります。そして、これまでアメリカに流れていた世界の資金がEUに流れ、アメリカの経済に大きな影響を及ぼすようになるかも知れません。
 実際、当初のECの狙い通りユーロの価値はドルに比べて高くなり、世界の流通量も2006年末にドルを追い抜きました。

- EUでユーロを使用しているのは16カ国 - 
 現在、EU加盟国でユーロを導入しているのは16カ国で、モナコやサンマリノ、バチカンなどEU圏以外の国も使用しています。まだ導入していない国も、国内財政や自国通貨とユーロの交換レートなどの問題をクリアすれば導入していくものとみられています。
 こうした中、イギリスが国内事情によってまだユーロを導入していません。イギリス政府はユーロ導入に積極的に動いていますが、国民の多くがユーロ導入に反対し、その理由としてイギリスの政治的・経済的主体性を喪失する。また、慣れ親しんだポンドからユーロに切り替わることは考えられない。さらに、ユーロになればエリザベス女王の肖像画が姿を消してしまうという感情的な意見もあるようです。
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