中東の火種 パレスチナ問題 とは?【国際】

中東の火種 パレスチナ問題 とは?


 昨年10月、パレスチナの国連ユネスコへの加盟が承認されました。これに反発した米国がユネスコへの分担金(47億円)の支払いを停止して話題を集めました。パレスチナは国連本体への正式加盟も申請していますが、これには国連の安全保障理事会で常任理事国の米国が拒否権を行使し、現状では絶望的です。  いま、パレスチナは国連の加盟国ではなくオブザーバーとなっています。一体パレスチナとはどんな国なのでしょうか?隣国のイスラエルとの紛争が絶えない、中東の火種といわれるパレスチナ問題を探ってみましょう。


- パレスチナは文明の十字路。世界三大宗教発祥の地 -
 まず、パレスチナはどこにあるのでしょうか。地理的には、地中海の東岸に面するレバノン、シリア、ヨルダン、エジプトなどのアラブ諸国に囲まれた地域をさします。
 地中海周辺の世界地図を見ればよく分かりますが、パレスチナはユーラシア大陸とアフリカ大陸を結ぶ「文明の十字路」といわれます。
 太古の昔からさまざまな文化を持った多様な民族、部族が出会い、交易を行い、また紛争を繰り返した独特の歴史を持ち、そこからユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三大宗教が誕生しました。
 現在、この地域の大部分は、ユダヤ人の国であるイスラエルと、イスラエルの占領地で占めています。アラブ人のパレスチナ自治政府が統治している地域は、シナイ半島東北部にあるガザ地区と呼ばれる種子島程度の面積の飛び地と、ヨルダン川西岸地区の一部、三重県程度の面積です。
 パレスチナ問題を端的にいえば、1948年のイスラエル建国を契機として噴き出した、パレスチナ人(アラブ人)とユダヤ人によるパレスチナの土地の帰属を巡る戦いの歴史といえます。


【ユネスコ加盟で注目のパレスチナってどんな国】

中東の火種 パレスチナ問題 とは? - パレスチナ問題の発端は、英国の「三枚舌外交」 -
 遠い昔、今から3000年前のBC1020年ごろ、今のパレスチナにはユダヤ人のヘブライ王国が栄えていました。その後、内紛が起こり王国は、イスラエルとユダの二つの国に分裂し、BC586年にユダヤはバビロニアに、イスラエルはアッシリアに滅ぼされます。
 やがて、ユダヤ人はイスラエルという国を再建しますが、BC135年にローマ軍に都市を破壊され、ユダヤ人はパレスチナを追われて離散していきます。これを「ディアスポラ」といい、以後2000年にわたってユダヤ人は国のない《流浪の民族》となったのでした。
 その後パレスチナは、16世紀初めから400年間イスラム国家のオスマン帝国の支配下にありましたが、第一次大戦でオスマントルコが敗れてイギリスが占領しました。
 現在のパレスチナ問題の発端は、第一次大戦中に中東の覇権をめざして行なったイギリスの無責任な「三枚舌外交」だといわれます。

- イスラエル建国にアラブが反発して中東戦争が勃発 -
 第一次大戦でオスマントルコと戦っていたイギリスは、戦争を有利に運ぶため、中東のアラブ人に対してパレスチナを含むアラブ国家の独立を認めました(1915年のフセイン=マクマホン書簡)。
 さらに、ともに戦っていたフランスに、戦後中東を両国で分割しようという密約(1916年のサイクス=ピコ条約)を結びます。ユダヤ人に対しては、2000年前に追い出されたパレスチナにユダヤ人の国を建設する支援を約束します(1917年のバルフォア宣言)。
 ナチスドイツのホロコーストに見られるように、ユダヤ人に対する激しい迫害は、『ユダヤ人の故郷』であるパレスチナへの移住に拍車をかけました。そして、ユダヤ人はユダヤ人国家を建設しようという運動を起こします。これを「シオニズム運動」といいます。
 第一次大戦後、パレスチナはイギリスの委任統治となりますが、矛盾に満ちたイギリスの「三枚舌外交」の結果、パレスチナではイギリスとアラブ人、ユダヤ人の間でテロや争いが絶えませんでした。
 第二次大戦後、国連はパレスチナをパレスチナ人とユダヤ人の国家に分ける「パレスチナ分割」を決議しますが、パレスチナ人やアラブ諸国は不公平な分割だと猛反対します。
 しかし、1947年にユダヤ人がイスラエルの建国を宣言すると、これに反発したパレスチナ人や周辺のアラブ諸国がイスラエルに攻め込みました。これが第一次中東戦争で、パレスチナ問題の始まりです。
中東の火種 パレスチナ問題 とは? - 1996年にパレスチナ自治政府設立。内部でファタハとハマスが対立 -
 中東戦争は合計第四次まで戦われ、結果イスラエルは国連の決めたユダヤ人領土をはるかに超えて侵攻し、多くのパレスチナ人が土地を追われて難民となりました。現在、国連が認定しているだけで難民は約400万人にのぼります。
 その後1964年にアラブ諸国によってパレスチナ解放機構(PLO)が設立。88年にパレスチナ国家の独立を宣言します。93年にPLOとイスラエルが暫定的なパレスチナの自治政府設立で合意し、96年にパレスチナ自治政府が誕生して中東和平は実現するかに見えました。
 しかし、パレスチナ自治政府はPLOに属する「ファタハ」(パレスチナ民族解放運動)と、イスラム原理主義の過激組織である「ハマス」の二つの派閥に分かれて激しく対立しています。

- 中東和平に向け粘り強い話し合いで妥協点を見出していく -
 中東和平に向け、イスラエルや米国と話し合い路線を採る「ファタハ」は、ヨルダン川西岸地区の一部分だけの統治にとどまっています。飛び地の領土であるガザ地区は、イスラエルの解体を叫んで一切の妥協を許さず、ロケット攻撃などを繰り返している「ハマス」が支配しています。
 イスラエルや米国は、「ハマス」をテロ組織と認定し、「ハマス」との連立状態にある今のパレスチナ自治政府は国家としての資格を持っていないとして国連への正式加盟を拒み、ユネスコへの加盟に反発しているのです。
 パレスチナの帰属を巡るユダヤ人とパレスチナ(アラブ)人の戦いのルーツは2000年前にさかのぼります。
 ローマ帝国によってユダヤ人は国を破壊され、土地を追われましたが、残ったユダヤ人も多くいました。彼らは他のパレスチナ人と共に20世紀初頭まで平和的に共存してきました。
 対立から融和へ、紛争から和平へ、中東の火種としてくすぶり続けてきたパレスチナに平安が訪れるには、地球的な枠組みで根気強く話し合いを重ねて妥協点を見出していくしかないようです。
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