減少し続ける「日本人留学生」【国際】

減少し続ける「日本人留学生」


【グローバル人材の育成が急務】
 文部科学省の集計によると、日本から海外に留学する若者は2004年に82,945人でしたが、2011年には57,501人にまで減少しています。一方、海外からの留学生も2010年の141,774人をピークに3年連続で減少しています。
 国際化が急激に進む中、日本ではそれに対応できるグローバル人材の育成が急務になっています。しかし、海外留学生や受け入れ留学生の現状は、それに相反する数字が並んでいます。その背景を考えてみました。

減少し続ける「日本人留学生」 - 減少の背景には様々な要因が -
 日本の海外留学者数は、2004年以降減少し続けています。このまま海外留学者の減少が続くと、世界で活躍できるグローバル人材の育成が滞り、日本の存在感が薄れることが心配されます。また、海外からの留学生の減少は、日本の魅力の低下につながり、優れた人材が日本に来なくなってしまう心配があります。
 留学生減少の要因として、留学対象となる若年人口の減少という社会構造の変化、経済状況の悪化、語学力、帰国後の単位認定や就職問題など様々な問題があげられています。
 しかし、日本と同様に経済問題や少子化問題を抱える韓国では、人口が日本の半分弱の約5千万人にも関わらず、日本の3倍もの留学生を世界に送り出しています。人口がもっと少ない台湾でも日本を上回っています。このことから、少子化が留学生の減少に直接つながるとは考えられません。
減少し続ける「日本人留学生」 - 留学生大国「アメリカ」 -
 アメリカは留学生大国とも呼ばれています。世界の留学生は1990年では約130万人でしたが、2009年には370万人と大幅に増加しています。このうちアメリカが約20%にあたる72万人もの留学生を受け入れています。
 近年、アメリカへの留学は中国、インド、韓国がトップ3を占め、カナダ、台湾、日本と続いています。この結果、アジア地域だけで留学生全体の64%を占めています。日本は1994年から1997年までトップでしたが、2009年には中国の127,628人の約5分の1の24,842人にとどまり、2011年には19,966人にまで減少しています。
 また、他国が学部とともに大学院の留学生を増やしているのに対して、日本は学部生が中心でしかも短期留学生が目立っているのが特徴です。
- 高騰する留学費用 -
 長引く不況の影響で学生生活は疲弊しています。こうした中、留学を考える時に多くの学生を悩ませているのが学費等の経済問題です。
 アメリカの大学の場合、大学間で差はあるものの私立大学では平均で約3万5千ドル、州立大学でも州外学生にあたる留学生は2万5千ドル程度の学費が必要です。これに生活費などの経費を加えると、年間5万ドル程度が必要になります。学生や家族にとって5万ドルという高額を4年間負担し続けるのは困難です。日本の留学生が、短期留学や学部だけ、あるいは大学院だけで留学を終えるのはこのあたりに原因がありそうです。
 このため、日本学生支援機構や地方公共団体、各教育機関などが奨学金制度を設けていますが更なる充実が求められています。

- 留学の利点が生かせない? -
 このところ、私立大学を中心に単位互換制度の導入が進められ、海外の大学で修得した単位が認められるようになってきました。しかし、まだ整備不十分な大学が多く、帰国後に単位不足で留年するケースが少なくありません。
 また、留学期間と企業の就職選考時期のずれで、留学生は帰国後、日本での就職活動が困難になっています。国や企業は、これからの日本を支えていくためにグローバル人材の育成は急務としています。しかし、採用時期の問題、給与や待遇など多くの面で、海外留学経験者を適切に処遇しているのか疑問に思える点が見受けられます。
 現状のままでは、真剣に留学を考えている学生が海外留学に二の足を踏むのではと心配されます。

- 日本への留学生も減少傾向 -
 日本のグローバル化は、海外に留学生を送り出すことだけではありません。多くの外国人に日本への留学を促して相互に交流することも大切です。日本への留学生は毎年増加し、2010年には14万1,774人を記録しました。しかし、それをピークに翌年の東日本大震災などの影響で3年連続で減少しています。
 このため、政府は「留学生30万人計画」を打ち立て、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、外国人留学生を30万人にまで増やす計画です。

- 「スーパーグローバル大学(SGU)」と「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」 -
 政府は留学生30万人計画を実現させる施策の一つとして、昨年から「SGU」と「SGH」の指定をスタートさせました。
 SGUとは、世界に誇れる日本発の研究や、国際化に向けて留学者増などに取り組む大学のことで37大学が指定されました。日本の大学でのトップレベルの研究や、英語で取得できる学位を増やすことで、海外から優秀な留学生を呼び寄せようというものです。
 SGHは、2002年から始まった英語教育を重点とした「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)」とは異なり、グローバルなビジネス現場で活躍できる人材の育成をめざします。社会課題に対する関心、深い教養、コミュニケーション能力、問題解決能力などを身に付ける教育プログラムの導入を進める56校が指定されました。この56校のうち11校が以前SELHiに指定されています。
 日本に世界中から留学生が集まることで、日本の高度な研究や伝統文化といった魅力を世界に発信することができます。このため、政府、企業、教育機関などが一体となって多くの外国人留学生が学び研究できる環境の整備を行う一方、日本の学生が不安なく海外留学できるような支援制度の構築が望まれています。
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