質量の国際基準が2018年に変更される【国際】

質量の国際基準が2018年に変更される


 【時間や長さなどの単位は何が基準なのか】
 キログラムという単位で表される質量の国際基準が2018年にほぼ130年ぶりに変更される見通しです。長さや時間、温度、速度などの単位は国際的に統一されていますが、これからは何を基準にしているのでしょうか。絶対的に安定した精度が要求される度量衡のいろいろな単位の基準を考えてみましょう。

質量の国際基準が2018年に変更される - 現在の国際単位系は1960年に決まった -
 さまざまな「量」を測定する際に、基準となる一定の大きさの量を「単位」といいます。現在、日本を含む国際社会では、1960年に国際度量衡委員会が決定した国際単位系(SI)と呼ばれる国際基準に基づく単位が用いられています。  国際単位系では、時間(秒)、長さ(メートル)、質量(キログラム)、電流(アンペア)、温度(ケルビン)、物質量(モル)、光度(カンデラ)の7つを基本単位とし、それぞれの数値を掛けたり割ったりして面積や密度、速度など様々な単位を組み立てています。
 例えば、面積は長さの2乗で㎡と表します。体積は長さの3乗で㎥です。密度は質量を体積で割って㎏/㎥、速さは長さを時間(秒=s)で割ってm/sといった具合です。

- 7種類の基本単位とその組み合わせ単位 -
 現在の国際単位系は、7つの基本単位とそこから組み立てられた様々な組立単位からなっています。しかし、基本単位をベースにした計算が複雑で、組み合わせ単位の表記が難しい周波数(ヘルツ)や圧力(パスカル)、電圧(ボルト)、放射能(ベクレル)、電気抵抗(オーム)、照度(ルクス)といった組立単位は、固有の名称と記号が与えられています。
 そして基本単位や組立単位の量の大小を扱いやすいように10進法で桁を調整して、統一した呼称(SI接頭語)を決めています。
 キロ(1000)、メガ(100万)、ミリ(1000分の1)、マイクロ(100万分の1)などです。
質量の国際基準が2018年に変更される - 質量だけが1㎏の原器を基準にしている -
 度量衡の国際的な基準のうち、質量以外の6つの基本単位はこれまでに基準の変更がなされてきました。国際的な基準となったのは、原子や電気、光の物理的なデータに基づいています。
 例えば、1秒はセシウム133という原子が持つ固有の振動数(周期時間)に基づいていますし、1メートルは光が約3億分の1秒の間に進む距離を表しています。
 ところが質量だけは、1889年に作られた「国際キログラム原器」と呼ばれる合金製(白金90%、合金10%)の重りが、現在でも1キログラムの基準となっています。
 世界に一つしかない直径39ミリ、高さ39ミリの円筒形のキログラム原器はフランスに保管され、世界50カ国に複製品が配られています。

- 物理的データを基に質量の基準づくり -
 ところが近年、原器と複製品に最大1億分の6キログラムの誤差が見つかり、各国は新しい基準作りに乗り出しています。日本や欧州はシリコン原子の数をベースにした「アボガドロ法」。米国やカナダでは、電磁力の力を電気の力に換算して質量を定義する「ワットバランス法」に取り組んでいます。
 質量原器の複製品を管理している産業技術総合研究所の計量標準総合センターでは、2018年に開かれる国際度量衡総会で両方の方法が新基準として採用される可能性が高いとみています。
質量の国際基準が2018年に変更される - 度量衡統一の歩み -
●メートル法から国際単位系(SI)へ
 中国を統一した秦の始皇帝はいち早く度量衡の統一に力を注ぎました。度(長さ)、量(体積)、衡(重さ)の統一は、歴史的に政治、経済、科学技術の発展に欠かせない重要なインフラ(基盤)だからです。
 近代に入ってフランスは、1795年に度量衡を科学的に定義したメートル法を制定しました。メートル法では長さの基準の1メートルを、北極からパリを経て赤道を結ぶ子午線の長さの1000万分の1としました。
 その後、1960年にメートル法に代わる単位の基準として現在の国際単位系(SI)が生まれました。
 日本は1885年(明治18年)にメートル条約に加入し、1951年(昭和26年)施行の計量法でメートル法の使用を義務付けました。そして92年に計量法が大幅に改正されて今の国際単位系に統一されました。
質量の国際基準が2018年に変更される - まだまだ使われる非SI単位 -
 私たちの周りでは、まだまだ国際単位系に属さない多くの量を表す単位が用いられています。
 フィート(0・3048メートル)は航空管制などで使われていますし、インチ(0・0254メートル)は工業分野で多用されています。宝石の質量を示すカラット、熱量のカロリー、土地の広さを表すアールやヘクタール、ゴルフやフットボールで用いられるヤード、船や航空機速度のノットなど、各分野の特殊性や文化性を考慮して非SI単位も多く使用されています。
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