世界の経済を支える国際通貨制度とは【国際】
「ドルが売られた、円が買われた」といった言葉が毎日のニュースで飛び交います。世界の通貨を売り買いすることを国際金融取引といい、日々変動する通貨の価値が為替レート(為替相場)で示されます。そしてこの為替相場に世界の経済は大きく影響されます。世界経済を左右する金融取引と、それを支える国際通貨制度を探ってみましょう。
- 通貨の価値は外貨との交換比率で示される -
現在世界には196の国(うち国連加盟国は193カ国)があり、数多くの種類の通貨が存在します。世界各国の通貨は一部の例外を除いて他の国の通貨と取引され、交換比率によってその価値が示されます。通貨の値打ちは一定ではなく常に変動しています。
通貨の取引は商品と同じように、買い手(需要)が多ければその値打ちは上がりますし、逆に売り手(供給)が多ければ値打ちは下がります。
需要が多く値打ちの高い通貨は、その通貨が使われている国の経済がしっかりしていて信用が高いということです。逆に経済状態が悪く、先行きが不安な国の通貨は価値が下がるため、他の通貨に交換しようと売りに出されます。
通貨を売買することを国際金融取引といい、取引の交換比率を為替レート(正確には外国為替レート)といいます。
- 国際通貨はドル、円、ユーロ、ポンド -
普段、私たちはお金の値打ちを物価によって知ることができます。物価が上がればお金の値打ちが下がったと実感します。物価がどんどん上がるということは、お金の値打ちがどんどん下がるということで、この状態をインフレといいます。
自国の通貨は他国の通貨と交換することで価値(交換比率)が分かります。世界の通貨のなかでも、多くの国の人々が世界中で安心して貿易や投資などに使用できる通貨を「国際通貨」といいます。
国際的な取引で他国の通貨と容易に交換できる通貨のことで、ハードカレンシー(国際決済通貨)とも呼ばれます。
存在感の大きい国際通貨になるには、何より通貨の価値を示す為替レートが安定していて、自由に決済や預金ができる通貨でなければなりません。
現在、国際通貨といえるものに、米国のドルと欧州のユーロ、日本の円、英国のポンドがあります。
- 国際通貨を目指す中国の人民元 -
外国為替相場の安定や金融危機を防ぐための国連専門機関として国際通貨基金(IMF)があります。IMFには加盟国(188カ国)が外貨不足で貿易の代金などが払えなくなった場合に、国際通貨を融通してもらう特別引き出し権(SDR)という制度があります。
昨年末にIMFは、人民元も円やドルと同様にSDRに採用することを決め、今年10月からSDRの構成通貨に加わることになりました。ドル、円、ユーロ、ポンドの4つの国際通貨に中国の人民元が新たに加わる予定です。
しかし国内経済が不安定な中国の人民元が、円やドルに匹敵する国際通貨として実質的な地位を確立するのはかなり難しいといわれます。
- ドルが基軸通貨として世界経済をリード -
国際通貨の中で最も支配的な地位を占め、国際金融取引の基準となる通貨を基軸通貨(キーカレンシー)といいます。つまり基軸通貨は、国と国との金融取引のバックグラウンドとなっているのです。
強力な経済力、政治力と圧倒的な軍事力を背景に世界中の人々から高い信頼を得ている利便性の高い通貨で、現在はドル(米ドル)が世界の基軸通貨です。かつては、19世紀半ば以降、国際金融センターとしての役割を担っていた英国のポンドが世界の基軸通貨でした。
しかし第一次大戦後欧州経済が疲弊し、戦禍の及ばなかったアメリカが戦争特需で経済が急成長して基軸通貨の機能がポンドからドルに移りました。第二次大戦後はアメリカのドルが名実共に世界の基軸通貨となっています。
現在世界には196の国(うち国連加盟国は193カ国)があり、数多くの種類の通貨が存在します。世界各国の通貨は一部の例外を除いて他の国の通貨と取引され、交換比率によってその価値が示されます。通貨の値打ちは一定ではなく常に変動しています。
通貨の取引は商品と同じように、買い手(需要)が多ければその値打ちは上がりますし、逆に売り手(供給)が多ければ値打ちは下がります。
需要が多く値打ちの高い通貨は、その通貨が使われている国の経済がしっかりしていて信用が高いということです。逆に経済状態が悪く、先行きが不安な国の通貨は価値が下がるため、他の通貨に交換しようと売りに出されます。
通貨を売買することを国際金融取引といい、取引の交換比率を為替レート(正確には外国為替レート)といいます。
- 国際通貨はドル、円、ユーロ、ポンド -
普段、私たちはお金の値打ちを物価によって知ることができます。物価が上がればお金の値打ちが下がったと実感します。物価がどんどん上がるということは、お金の値打ちがどんどん下がるということで、この状態をインフレといいます。
自国の通貨は他国の通貨と交換することで価値(交換比率)が分かります。世界の通貨のなかでも、多くの国の人々が世界中で安心して貿易や投資などに使用できる通貨を「国際通貨」といいます。
国際的な取引で他国の通貨と容易に交換できる通貨のことで、ハードカレンシー(国際決済通貨)とも呼ばれます。
存在感の大きい国際通貨になるには、何より通貨の価値を示す為替レートが安定していて、自由に決済や預金ができる通貨でなければなりません。
現在、国際通貨といえるものに、米国のドルと欧州のユーロ、日本の円、英国のポンドがあります。
- 国際通貨を目指す中国の人民元 -
外国為替相場の安定や金融危機を防ぐための国連専門機関として国際通貨基金(IMF)があります。IMFには加盟国(188カ国)が外貨不足で貿易の代金などが払えなくなった場合に、国際通貨を融通してもらう特別引き出し権(SDR)という制度があります。
昨年末にIMFは、人民元も円やドルと同様にSDRに採用することを決め、今年10月からSDRの構成通貨に加わることになりました。ドル、円、ユーロ、ポンドの4つの国際通貨に中国の人民元が新たに加わる予定です。
しかし国内経済が不安定な中国の人民元が、円やドルに匹敵する国際通貨として実質的な地位を確立するのはかなり難しいといわれます。
- ドルが基軸通貨として世界経済をリード -
国際通貨の中で最も支配的な地位を占め、国際金融取引の基準となる通貨を基軸通貨(キーカレンシー)といいます。つまり基軸通貨は、国と国との金融取引のバックグラウンドとなっているのです。
強力な経済力、政治力と圧倒的な軍事力を背景に世界中の人々から高い信頼を得ている利便性の高い通貨で、現在はドル(米ドル)が世界の基軸通貨です。かつては、19世紀半ば以降、国際金融センターとしての役割を担っていた英国のポンドが世界の基軸通貨でした。
しかし第一次大戦後欧州経済が疲弊し、戦禍の及ばなかったアメリカが戦争特需で経済が急成長して基軸通貨の機能がポンドからドルに移りました。第二次大戦後はアメリカのドルが名実共に世界の基軸通貨となっています。
- 世界の中央銀行、米連邦準備理事会(FRB) -
通貨の国内的な価値(物価)や対外的な価値(外為相場)は政府が決める金利(政策金利といいます)によって大きく影響されます。世界の基軸通貨であるドルの金利は世界の「基軸金利」となり、金融取引の重要な指標となります。ドルで決済する(ドル建てといいます)債権や債務が世界中の企業経営や国の財政、個人の生活に大きく影響するからです。
そのドルの政策金利を決めるのが、アメリカの中央銀行に当たる米連邦準備理事会(FRB)です。基軸金利を決めるFRBは、いわば世界の中央銀行的な役割を担っています。国際金融、世界経済の「総元締め」としてFRBの動きは世界中の人々の関心の的となっています。
- 国際通貨制度をサポートするIMF -
国際間の貿易や金融取引の決済に使用される通貨を国際通貨といいますが、国際通貨を使った決済制度や国際収支の調整方法を総称して国際通貨制度といいます。
国際通貨制度が円滑に維持されるには、為替相場の安定が重要となります。このため国際通貨基金(IMF)は、加盟各国の為替政策や経済状態を監視したり、貿易で赤字が膨らんで国際収支が悪化した加盟国に融資(SDR)を行って国際通貨制度の安定に努めています。
IMFは、1944年7月にアメリカのブレトン・ウッズで開かれた連合国国際通貨金融会議で創設が決まり、47年3月に業務を開始した国際機関です。
IMFの発足とほぼ同時期に、戦後の復興に向けて各国に長期の融資を行う国連機関として世界銀行(国際復興開発銀行、国際開発協会など)が設立されました。
現在は、発展途上国のインフラ整備などに重点を置いていますが、近年ウクライナへの融資で話題を呼びました。
- 「ASEAN+3(AMRO)が発足 -
今年2月、日本や中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の13カ国によって、アジアの通貨危機を防いで金融の安定化を目指す国際機関「ASEAN+3マクロ経済調査事務局(AMRO)が発足しました。
09年2月に民間法人として加盟13カ国で設立されましたが、権限や機能が強化されて国際機関に昇格し、アジア版IMFとしてアジアの金融取引の安定化に期待が寄せられています。
欧州では、資金の調達に苦しむユーロ圏の加盟国に金融支援を行う欧州安定メカニズム(ESM)が2012年に発足。欧州版IMFとして財政危機に陥ったギリシャの金融支援などを行いました。
そして人民元の国際化に力を入れる中国が主導する国際開発金融機関のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、今年1月から業務を開始しました。
通貨の国内的な価値(物価)や対外的な価値(外為相場)は政府が決める金利(政策金利といいます)によって大きく影響されます。世界の基軸通貨であるドルの金利は世界の「基軸金利」となり、金融取引の重要な指標となります。ドルで決済する(ドル建てといいます)債権や債務が世界中の企業経営や国の財政、個人の生活に大きく影響するからです。
そのドルの政策金利を決めるのが、アメリカの中央銀行に当たる米連邦準備理事会(FRB)です。基軸金利を決めるFRBは、いわば世界の中央銀行的な役割を担っています。国際金融、世界経済の「総元締め」としてFRBの動きは世界中の人々の関心の的となっています。
- 国際通貨制度をサポートするIMF -
国際間の貿易や金融取引の決済に使用される通貨を国際通貨といいますが、国際通貨を使った決済制度や国際収支の調整方法を総称して国際通貨制度といいます。
国際通貨制度が円滑に維持されるには、為替相場の安定が重要となります。このため国際通貨基金(IMF)は、加盟各国の為替政策や経済状態を監視したり、貿易で赤字が膨らんで国際収支が悪化した加盟国に融資(SDR)を行って国際通貨制度の安定に努めています。
IMFは、1944年7月にアメリカのブレトン・ウッズで開かれた連合国国際通貨金融会議で創設が決まり、47年3月に業務を開始した国際機関です。
IMFの発足とほぼ同時期に、戦後の復興に向けて各国に長期の融資を行う国連機関として世界銀行(国際復興開発銀行、国際開発協会など)が設立されました。
現在は、発展途上国のインフラ整備などに重点を置いていますが、近年ウクライナへの融資で話題を呼びました。
- 「ASEAN+3(AMRO)が発足 -
今年2月、日本や中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の13カ国によって、アジアの通貨危機を防いで金融の安定化を目指す国際機関「ASEAN+3マクロ経済調査事務局(AMRO)が発足しました。
09年2月に民間法人として加盟13カ国で設立されましたが、権限や機能が強化されて国際機関に昇格し、アジア版IMFとしてアジアの金融取引の安定化に期待が寄せられています。
欧州では、資金の調達に苦しむユーロ圏の加盟国に金融支援を行う欧州安定メカニズム(ESM)が2012年に発足。欧州版IMFとして財政危機に陥ったギリシャの金融支援などを行いました。
そして人民元の国際化に力を入れる中国が主導する国際開発金融機関のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、今年1月から業務を開始しました。
- 人民元経済圏の拡大狙うAIIB -
途上国のインフラ整備などに投資する国際金融機関としては、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行などがあります。中国が音頭を取って発足したAIIBは、ロシア、サウジアラビア、英国、フランスなど57カ国が参加しています。
習近平国家主席が提唱する広域経済圏構想「一帯一路(新シルクロード)」に象徴されるように、人民元経済圏の拡大を狙いとしています。
AIIBの設立や人民元の国際通貨への動きは、戦後ドルを基軸とした米国中心の金融秩序、経済体制に対する中国の挑戦といえるでしょう。
途上国のインフラ整備などに投資する国際金融機関としては、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)、米州開発銀行などがあります。中国が音頭を取って発足したAIIBは、ロシア、サウジアラビア、英国、フランスなど57カ国が参加しています。
習近平国家主席が提唱する広域経済圏構想「一帯一路(新シルクロード)」に象徴されるように、人民元経済圏の拡大を狙いとしています。
AIIBの設立や人民元の国際通貨への動きは、戦後ドルを基軸とした米国中心の金融秩序、経済体制に対する中国の挑戦といえるでしょう。
「固定相場と変動相場」
- 日本は73年に変動相場制に移行 -
戦後間もない1949年に、日本を占領していた連合国軍司令部(GHQ)が1ドルを360円と交換する固定相場制を決めました。その後、日本は安い円を武器に対米輸出を伸ばして高度な経済成長を遂げました。
国際間の決済で通貨の基準となったのは金です。豊富な金保有を背景に強いドルが世界経済を支配してきましたが、ベトナム戦争による軍事費の増大やヨーロッパ復興のためにドルが大量に流出。さらに欧州や日本の対米輸出の増大などでアメリカの貿易収支が悪化し、ドルの信用が低下していきました。
こうして71年8月に金とドルとの交換が停止されました。これをドルショックといいます。その後もアメリカの貿易赤字は続き、73年に日本の円は外貨との交換レートが、暫定的な固定相場制から市場の売買で決められる変動相場制に移行しました。かつて1ドル360円だった円は現在110円前後になっています。
経済のグローバル化が進むにつれて国際間でますます大規模な資金が移動し、為替相場は世界経済により大きく影響するようになりました。
- 日本は73年に変動相場制に移行 -
戦後間もない1949年に、日本を占領していた連合国軍司令部(GHQ)が1ドルを360円と交換する固定相場制を決めました。その後、日本は安い円を武器に対米輸出を伸ばして高度な経済成長を遂げました。
国際間の決済で通貨の基準となったのは金です。豊富な金保有を背景に強いドルが世界経済を支配してきましたが、ベトナム戦争による軍事費の増大やヨーロッパ復興のためにドルが大量に流出。さらに欧州や日本の対米輸出の増大などでアメリカの貿易収支が悪化し、ドルの信用が低下していきました。
こうして71年8月に金とドルとの交換が停止されました。これをドルショックといいます。その後もアメリカの貿易赤字は続き、73年に日本の円は外貨との交換レートが、暫定的な固定相場制から市場の売買で決められる変動相場制に移行しました。かつて1ドル360円だった円は現在110円前後になっています。
経済のグローバル化が進むにつれて国際間でますます大規模な資金が移動し、為替相場は世界経済により大きく影響するようになりました。
「為替介入と相場の安定」
- 経済の発展は為替相場の安定が不可欠 -
金融取引の交換比率である外国為替レートは、その通貨を発行する国の景気や金利、国際収支といった経済の基礎的な要素に大きく影響されます。経済が安定している国の通貨は、株価や金利が上がるという期待感から買われてレートが上昇します。逆に経済が悪化して先行きが不安な国の通貨は信用力が低下してレートが下降します。
為替レートが乱高下して通貨取引が不安定になれば、世界経済は混乱をきたします。このため政府が巨費を投じて金融取引の安定化を図ることがあります。これを為替介入(外国為替市場介入)といいます。
日本では財務省の指示で日本銀行が円やドルを買ったり売ったりして相場の安定を図りますが、その額は数兆円にものぼります。また、数カ国が連携して行う協調介入があり、為替相場の流れを大きく変えたりします。1985年のプラザ合意によってドル高を是正するため、日、米、英、仏、西独の5カ国が行った協調介入が有名です。
- 経済の発展は為替相場の安定が不可欠 -
金融取引の交換比率である外国為替レートは、その通貨を発行する国の景気や金利、国際収支といった経済の基礎的な要素に大きく影響されます。経済が安定している国の通貨は、株価や金利が上がるという期待感から買われてレートが上昇します。逆に経済が悪化して先行きが不安な国の通貨は信用力が低下してレートが下降します。
為替レートが乱高下して通貨取引が不安定になれば、世界経済は混乱をきたします。このため政府が巨費を投じて金融取引の安定化を図ることがあります。これを為替介入(外国為替市場介入)といいます。
日本では財務省の指示で日本銀行が円やドルを買ったり売ったりして相場の安定を図りますが、その額は数兆円にものぼります。また、数カ国が連携して行う協調介入があり、為替相場の流れを大きく変えたりします。1985年のプラザ合意によってドル高を是正するため、日、米、英、仏、西独の5カ国が行った協調介入が有名です。