今年は日本の国連加盟60年【国際】

今年は日本の国連加盟60年


【日本の国連外交と国連改革を考える】
  国連に加盟して60年目の今年、日本は安全保障理事会(安保理)の非常任理事国(任期2年)に選ばれました。いま国連はシリア内戦や核拡散、ウクライナ情勢で有効な機能を果たせず、多くの加盟国から安保理を中心とした国連改革の声が巻き起こっています。国連加盟60年の節目に安保理メンバーとしての日本の国連外交に注目が集まっています。

今年は日本の国連加盟60年 - 日本は加盟国最多の11期目の非常任理事国 -
 国連は第2次大戦後間もない1945年10月に加盟51カ国で発足しました。日本が国連に加盟したのは1956年12月で、今年60年目となります。
 加盟から2年後の58年には早くも国連安全保障理事会(安保理)の非常任理事国に選ばれました。今年1月から日本は安保理の非常任理事国となっていますが、加盟国中で最多の11期目となります。
 国連は東西冷戦、南北格差、局地紛争や気候変動、貧困など国際社会のさまざまな課題解決に取り組み、戦後世界の国際協調を促進する場としての役割を果たしてきました。
 国連憲章第1条では、国連の目的を「国際社会の平和及び安全を維持する」と記しています。その国連で国際平和と安全保障の維持で最も重要な役割を担っているのが安全保障理事会(安保理)です。

- 安保理は5常任理事国と10非常任理事国 -
 世界の平和と安全の維持に主要な役割を担う安保理は、紛争当事者に対して平和的手段による解決の要請や勧告を行うほか、経済制裁などの非軍事的措置や監視活動、軍事行動を決定するなど大きな権限を持っています。
 その安保理は常任理事国5カ国と、2年任期で総会が選ぶ非常任理事国10カ国で構成されます。このうち第2次大戦の戦勝国である米国、イギリス、フランス、ロシア、中国の5カ国が常任理事国として常に議席を保有し、拒否権を持つ特別な地位を占めています。
 安保理の決定には、常任理事国5議席の同意を含む理事国9議席の賛成が必要です。常任理事国のうち1国でも反対票を投じた場合は決定ができません。これを拒否権と言います。
今年は日本の国連加盟60年 - 安保理は拒否権を持つ5常任理事国が実質支配 -
 国連の主要機関としてさまざまな問題解決に責任を負う安保理の構成や意思決定の仕組みは、71年前の発足時と何ら変わっていません。国際社会の変化に対応し、実情を踏まえた形で効果的に対応できる安保理の改革が急がれています。
 5年にわたるシリア内戦では、化学兵器の使用や市民の虐殺を理由にアサド政権に対する非難決議が提案されましたが、ロシアと中国が拒否権を繰り返し行使して問題を先送りにしています。 ロシアのクリミア併合で対立するウクライナ情勢では、常任理事国のロシアが当事者であることから有効な手立てを講ずることができないでいます。
 戦後の国際社会で、中東紛争の震源地と言われてきたパレスチナ問題では、国連の調停案がイスラエルを支援する米国の拒否権によって、今日もなお和平実現に至っていません。
国際社会の平和と安定に大きな役割を担う国連安保理は、拒否権を持つ米国、英国、フランス、ロシア、中国の5つの常任理事国が実質的に支配する構図になっているのです。

- 大国の思惑が絡んで安保理は「機能不全」に -
 創設当初51だった国連加盟国は現在193を数えて4倍近くに増えました。ところが安全保障理事会の議席は、1965年に1度国連憲章が改正されて非常任理事国の議席が6から10に増えたのにとどまっています。
 大量破壊兵器の拡散や中東、中央アジア、アフリカで多発する紛争、IS(イスラム国)をはじめとした頻発する国際テロへの対応など、国際社会の平和と安定のために国連が取り組まなければならない課題が山積しています。
 多発する国際紛争は大国の利害が複雑にからみ、調停にあたる国連の安保理は拒否権を持つ大国の思惑を反映して「機能不全」に陥っているとの批判が強まっています。
今年は日本の国連加盟60年 - 常任理事国の拡大で代表性を高める -
 安保理改革では、まず理事会を構成するメンバーの問題が挙げられます。現在、理事国15のうち常任理事国5を除いた非常任理事国は10ですが、世界人口の半分以上が居住して多様な文化を持つ53の国が集まるアジア・太平洋地域の議席数は2に過ぎません。
 またアフリカは全国連加盟国の4分の1を超える54の国がありますが、常任理事国はなく非常任理事国の議席が3つだけです。
 2005年の国連首脳会合で、国際社会の現状を反映して安保理の代表制、効率性、透明性を向上させ、効率的な安保理決定を実施するため、安保理を早期に改革することで合意しました。 
 日本をはじめ大多数の国連加盟国は、国際社会の平和と安全の維持に主要な役割を果たす意思と能力のある国を新たに常任理事国に加え、常に安保理の意思決定に参加させるべきだと主張しています。

- 常任理事国の拒否権は是か非か? -
 常任理事国の枠を拡大する意見は、現在の欧米偏重を是正して世界各地からの代表制を高めようというものです。
 しかし、常任理事国の一国でも拒否権を行使すれば決議できないため、現在の5カ国からさらに常任理事国が増え、途上国や各地域を代表する国々が拒否権を持てば、国連が紛争解決に果たす機能は一層低下するのではと考えられます。
 これに対して常任理事国の拒否権をなくしたり、制限を加える意見もあります。ただ拒否権がなくなると、大国が国連決議と対立した場合に国連から手を引いたり協力しないことが予想されます。大国の協調が無ければ国連は弱体化し、機能不全に陥ることが予想されます。
 常任理事国に拒否権がなかった国際連盟では、日本やドイツ、後にイタリアやソ連(ロシア)の列強が脱退して国際連盟が機能しなくなった例があります。
今年は日本の国連加盟60年 - 機能強化へ高まる安保理改革の議論 -
 安保理をはじめとした国連改革の歩みは、東西冷戦が終結した90年代に入って一気に盛り上りました。米国とソ連(ロシア)が対立していた東西冷戦期には、拒否権を持つ米ソの2大国がそれぞれ東西両陣営を主導していたため、国連安保理はほとんど機能していませんでした。
 冷戦の終結と共に世界各地で国境紛争や民族紛争などの局地紛争が頻発したため、国際社会の平和と安全に向けて国連が主導的な役割を果たせるよう安保理の機能強化を図ろうという機運が高まりました。
 93年に国連総会の決議によって「安保理改革の作業部会(OEWG)」が設立され、97年には国連総会のラザリ議長(当時)が常任理事国を5議席、非常任理事国を4議席それぞれ増やす具体的な改革案を提案しました  常任理事国の拡大に反対するグループが強く働きかけて改革案は日の目を見ませんでしたが、以後安保理改革を巡る議論が活発となりました。

- 常任理事国入り目指すG4グループ -
 2004年9月に日本がリーダーとなって、ドイツ、インド、ブラジルが4カ国グループ(G4)を結成して安保理改革のキャンペーンを展開してきました。
 2005年7月にはG4の4カ国を含めた6議席を新たに常任理事国に追加すると共に、非常任理事国を4議席増やす決議案を、32カ国による共同提案として国連総会に提出しました。 
 この時、常任理事国の議席拡大を主張するアフリカ連合(アフリカの加盟54国・地域で結成=AU)も独自に決議案を提出し、さらにG4に対抗するコンセンサス・グループ(イタリア、スペイン、韓国など約20カ国=UFC)が、非常任理事国のみの拡大を目指して反対運動を行い、結局いずれの決議案も廃案となりました。
今年は日本の国連加盟60年 - 日本、ドイツなどG4が安保理改革キャンペーン -
国連創設70年に当たる昨年、4カ国グループ(G4)が中心になって、改めて安保理改革を目指して国連総会で政府間交渉が再開されました。G4の改革案では、常任理事国を現在の5カ国からG4を含む11カ国に、非常任理事国を10カ国から14~15カ国にそれぞれ拡大する。また、新たに就任した常任理事国は拒否権を15年間行使しないとしています。
 安保理の改革には国連憲章の改正が必要ですが、それには常任理事国を含む国連加盟国の3分の2の支持と批准(国会承認)を得なければなりません。このためG4が、54カ国からなるアフリカ連合(AU)と連携できるかどうかが今後のカギとなっています。
 とくに常任理事国の中国は日本の常任理事国入りに反対していますし、米国は常任理事国を増やすことに難色を示しています。今後中国や米国をどう説得していくかが大きな課題となるでしょう。

「国連憲章の敵国条項」
- 政府は安保理改革と共に敵国条項削除を求める -
日本は1986年以降、米国に次いで2番目に多い国連分担金を支払っています。2016〜18年の日本の国連予算分担率は9・68%(約2・4億ドル)で、中国の7・92%や英国の4・46%、ロシアの3・0%を上回っています。日本の国連への寄与率は大きいのですが、国連憲章に残る「敵国条項」の文言上では、戦後71年を経た今も日本は「敵国」扱いとなっています。
 敵国条項とは国連憲章第53条、第77条1項b、第107条に規定されています。要約すれば、第2次大戦中に連合国の敵国であった国が戦後の確定事項に違反したり、侵略政策を再現する行動などを起こした場合、国連加盟国や地域安全保障機構は安保理の許可なくその国に対して軍事制裁を行うことができるというものです。「敵国条項」は国連憲章の「主権平等」の趣旨に反した差別的条項といえます。
 政府は、当時枢軸国だった日本とドイツ、イタリアなどがこれに該当するとして敵国条項の存在に抗議し、95年の第50回国連総会では賛成155、反対0、棄権3で同条項の削除が正式に約束されました。2005年の国連改革の成果文書には「敵国条項の削除を決意」と明記されています。
 ところが国連憲章の改正には、安保理常任理事国5カ国を含む加盟国3分の2以上の賛成と各加盟国の批准(国会承認)が必要です。すでに敵国条項は死文化しているという理由で加盟各国の関心は薄く、現在まで削除には至っていません。政府は安保理改革にともなう国連憲章の改正時に、敵国条項の削除を求めていくとしています。
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