税金逃れの 「タックスヘイブン」とは【国際】

パナマの法律事務所から膨大なデータの「パナマ文書」が流出して、税金逃れの「タックスヘイブン」(租税回避)が話題を集めています。有名な巨大企業や富豪、世界の要人関係者の名前なども登場しています。世界的に経済格差が拡大する中で、特定の会社や富裕層の税金逃れに対する反発が強まっています。タックスヘイブンとは何なのでしょうか?

タックスヘイブンは、Tax(税金)のHaven(避難場所)を意味する英語で「租税回避地」と訳されます。会社の儲けに対して課税される法人税などが全くかからないか、税率が極めて低い国や地域のことで、世界で約70カ所あると言われます。
パナマやカリブ海のバハマ、英領ケイマン諸島、英領バージン諸島、欧州のモナコや香港、シンガポールなどが有名です。
各国から多くの企業がペーパーカンパニーと呼ばれる書類上だけの本社をタックスヘイブンに設立し、儲けたお金をここに移して税金を逃れるという仕組みです。

タックスヘイブンは、19世紀後半から20世紀前半に、資源や産業の乏しい国や地域の生き残り策として生まれました。
法人税を払わなくていいか、もしくは極端に税率が低いため、各国の企業はタックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立して、そこに支払いという形で儲けたお金を送り込みます。いわゆる利益隠しです。
タックスヘイブンの国や地域にとっては、会社設立(登記)に伴う手数料が入り、世界中から資金が集まってくるため金融機関が進出して、雇用の拡大に繋がるというメリットがあります。
しかもタックスヘイブンでは、会社の登記などの手続きが簡単で規制が緩く、口座名などの顧客情報が秘匿されるため、なかなかその実態を外部から知ることができません。
- タックスヘイブンで各国の税収損失は年間約24兆円 -
会社は本社所在地の国に法人税を納める決まりになっています。企業が事業で設けた利益にかかる税金が法人税ですが、その税率はアメリカ39%、フランス34・4%、日本31%強、ドイツ30%などとなっています。
以前から欧米では国の財政が悪化しているのに、高収益を上げている大企業がタックスヘイブンを利用して、本国に払うべき税金を低く抑えて国の財政の足を引っ張っているという批判がありました。
主要先進国34カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)では、タックスヘイブンを利用した税金逃れによる各国の税収の損失は年間最大2400億ドル(約26兆円)に上ると推測しています。

今年5月に公開された過去最大の情報リークと言われる「パナマ文書」によって、これまでベールに包まれていたタックスヘイブンの実態が明らかになりました。
パナマ文書というのは、タックスヘイブンで会社設立手続きを行う中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料のことで、過去40年にわたってタックスヘイブンに設立されたペーパーカンパニーに関する膨大なデータです。
南ドイツ新聞に匿名で情報が提供され、世界65カ国約190人が加盟している国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が合同で取材して公表しました。
ここには、タックスヘイブンに設立した約21万4000社の役員や株主などの名前が詳細に記されています。日本の企業20社と230人の個人名も含まれています。

親族や友人がペーパーカンパニー設立に関与したとされる有力政治家は50カ国、140人に及び、すでに辞任したアイスランドの首相をはじめ、英国のキャメロン前首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席の友人や親族の名が挙がっています。
企業が過剰な税金逃れに走ると本社を置く国の税収が減少します。税収が減ると教育や医療などの公共サービスをはじめ、年金や介護などの社会保障が手薄になり、増税や赤字国債の発行という形でそのツケが国民に回ってきます。
タックスヘイブンが抱える問題は税収面だけではありません。顧客情報が匿名で守られて外部から知ることができないため、国際的なテロ組織の資金や不正に得た利益の隠し場所。さらに、マフィアなどの資金洗浄(マネーロンダリング)の温床になっていると指摘されています。
- 先進主要国がタックスヘイブンの監視強化を進める -
このため欧米の主要国は足並みを揃えてタックスヘイブンの実態解明を進めています。OECD(経済協力開発機構)は、ペーパーカンパニーの金融口座の税務情報を自動的に照会し合う仕組みや、多国籍企業の行き過ぎた節税を防ぐための国際ルールを作り、パナマを含めた約100の国・地域が加盟して17年から実施する予定です。
今年5月に日本で開催された先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(仙台)や主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、タックスヘイブンを利用した課税逃れにG7が結束して監視を強化し、実体のないペーパーカンパニーから利益を得ている人物を各国が把握する新たな枠組みづくりで合意しました。
パナマ文書を契機に各国政府はタックスヘイブンに厳しい監視の目を向けることになったのです。
このため欧米の主要国は足並みを揃えてタックスヘイブンの実態解明を進めています。OECD(経済協力開発機構)は、ペーパーカンパニーの金融口座の税務情報を自動的に照会し合う仕組みや、多国籍企業の行き過ぎた節税を防ぐための国際ルールを作り、パナマを含めた約100の国・地域が加盟して17年から実施する予定です。
今年5月に日本で開催された先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議(仙台)や主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、タックスヘイブンを利用した課税逃れにG7が結束して監視を強化し、実体のないペーパーカンパニーから利益を得ている人物を各国が把握する新たな枠組みづくりで合意しました。
パナマ文書を契機に各国政府はタックスヘイブンに厳しい監視の目を向けることになったのです。