人工知能(AI)は 人間を超えるか【科学】

人工知能(AI)は 人間を超えるか


【進化する人工知能と私たちの暮らし】
 今年3月、人工知能の囲碁ソフトが世界トップクラスのプロ棋士に4勝1敗で勝利して話題を集めました。東大の入試突破を目指す人工知能「東ロボくん」が偏差値58を出して国公立33大学、私立441大学で合格可能性80%以上と判定されました。ここ数年長足の進歩を遂げる人工知能(AI)は私たちの暮らしにどう影響するのでしょうか。果たして人工知能は人間を超えるのでしょうか。

人工知能(AI)は 人間を超えるか - AIが囲碁で世界トップ級のプロに勝利 -
1997年に米IBMのコンピューターがチェスの世界王者を破り、日本では2012年に「ボンクラーズ」という将棋ソフトが米長邦雄永世棋聖を打ち負かしました。そして今年3月、AI囲碁ソフト「アルファ碁」が、世界トップクラスの韓国のプロ棋士イ・セドル9段と対戦して4勝1敗で勝利しました。
 チェスや将棋に比べて囲碁は、縦19、横19、361の交点に石を配置して陣地を争う知的ゲームの最高峰といわれます。チェス対局の展開パターンが10の123乗、将棋が10の220乗に対し囲碁は10の360乗以上といわれます。
 プロ棋士は「大局観」という直感や経験に基づいて曲面(とくに『厚み』といわれる中央場面)を読んでいきます。人間特有の判断である「大局観」を人工知能(AI)が手にしてプロ棋士を負かしました。どうしてそれが可能となったのでしょうか。
人工知能(AI)は 人間を超えるか - 深層学習でAIが飛躍的に進歩 -
 近年人工知能は飛躍的な進展を遂げてきました。そのブレークスルーとなったのが機械学習の一種である深層学習(ディーププランニング)の登場でした。
 深層学習とは統計データから回答を導き出すタイプの機械学習ではなく、人間の脳の神経回路を模した手法(ニューラルネットワークといいます)で、大量のデータからAI自身が学習し、分析や分類、予測を行って判断能力を高めていきます。
 プロ棋士を負かしたアルファ碁は、プロ棋士の約16万の対極、3千万種類もの盤面(曲面)を記憶し、その上で自分自身との対戦を数百万回繰り返して経験を重ね、対戦相手の動きを57%の確率で予測するといいます。

- 現在は第3次人工知能ブーム -
 人工知能(AI)という言葉が初めて世に出たのは1956年のことです。ダートマス会議という専門家の研究会で、アメリカの計算機科学者、ジョン ・マッカーシーによって提唱されました。
 人工知能は現在第3次ブームを迎えています。第1次ブームは1950年代から60年代に起り、推論・探査を中心に機械翻訳などが盛んに研究されましたが失敗に終わりました。
 第2次ブームは80年代で、知識処理の時代といわれ、コンピューターに専門家の知識を導入すれば賢くなるという考え方から、エキスパートシステムの研究が産業用途に盛んに行われました。しかし、大きな成果を上げることなく終息しました。
 現在の第3次ブームは、過去の統計から機械に判断させる機械学習と、機械が自ら学んで判断する深層学習の技術によって巻き起こりました。背景にインターネット技術の進展やビッグデータ社会の到来が挙げられます。
人工知能(AI)は 人間を超えるか - AIが2021年までに東大入試突破を目指す -
 大量のデータの中から隠れた特徴(法則など)を自力で見つけ出す深層学習は、21世紀に入ってコンピューターの性能が飛躍的に向上したことで開発が進みました。その結果、人が勘や経験に基づいて判断する作業を機械化する可能性を拓きました。
 例えば、がん患者一人ひとりに最適な薬を処方したり、体内画像からベテラン医師並みAIが囲碁で世界トップ級のプロに勝利深層学習でAIが飛躍的に進歩現在は第3次人工知能ブームAIが2021年までに東大入試突破を目指す「人工知能と2045年問題」人と機械が共生する社会を目指しての精度で診断できる検査機器や危険を未然に防ぐ自動運転車、相手の気持ちをくみ取って自然な会話ができる介護ロボット、接客ロボットなどの実現に期待が集まります。
 国立情報学研究所では2021年までに東大入試突破を目指す人工知能「東ロボくん」を開発中で、毎年センター模擬を行っています。昨年11月は国語や世界史、数学など5教科8科目の合計偏差値が58で、前回の47を大きく上回りました。
 とくに数学では数ⅠAが偏差値64、数ⅡBが同65・8の成績を収めました。東大合格にはまだ届きませんが、国公立33大学、私立441大学で合格可能性80%以上と判定されました。

【人工知能と2045年問題】
- 人と機械が共生する社会を目指して -
 アメリカの世界的なAI研究者のレイ・カーツワイルは、人工知能が自らを規定しているプログラムを自身で改良するようになると、2のX乗という倍々ゲームで指数関数的な進化を遂げ、やがて人工知能が全人類の知能の総和を上回り、世界のすべてをコントロールするようになると予言しています。人工知能が人間の知能を超える時点を「技術的特異点(シンギュラリティ)」といい、それが訪れるのが2045年というのです。
 英国の著名な物理学者スティーブン・ホーキング博士は、「完全な人工知能の開発は人類の終わりをもたらす可能性がある」と述べています。映画「アイ・ロボット」や「ターミネーター」のように、将来ロボットに自我が芽生えて人間を襲ったり支配する可能性に警鐘を鳴らしています。
 人工知能によって、これまで以上に人と機械、テクノロジーの関係が密になる中で、人間VS機械という対立の構図から、人間と機械の相互補完、共生の構図へ発想の転換が求められるようです。
 すでに私たちは原子力テクノロジーの分野で、核兵器の廃絶をはじめ、原発の廃炉や核廃棄物の最終処分を巡って深刻な文明史的課題に直面しています。人工知能がこうした難問を解決する有力なツールとなることを期待したいものです。
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