食卓に登場するゲノム編集食品を考える【科学】
【遺伝子組み換えとの違い、その可能性と問題点】
ゲノム編集技術を用いて遺伝子を書き換え、特徴的な作物を生み出す「ゲノム編集食品」が昨年10月に解禁され、いよいよ食卓に登場します。現在広く出回っている遺伝子組み換え食品は、食品衛生法に基づいた安全性審査が義務付けられていますが、ゲノム編集食品は一部を除いて開発者による届け出制で、安全性審査や食品表示が義務化されていないため、安全性について懸念の声が上がっています。
生命の設計図であるゲノムを書き換えてピンポイントで遺伝子を改変するゲノム編集は、遺伝子組み換えとどう違うのでしょうか。異常気象に適応できる栄養価の高い作物を効率よく作り出すゲノム編集食品は究極の品種改良といわれますが、食料問題解決の切り札となるのでしょうか。今後の可能性と問題点を探って見ました。
- 外部から有用な性質を持つ遺伝子を入れる遺伝子組み換え -
私たちが毎日食べているお米や野菜、果物の多くは、長い年月をかけて「より多くの収穫を得る」ため、あるいは「より美味しく栄養価の高い作物」を目指して品種改良が行われてきました。その結果私たちは現在、様々なニーズに沿った食材を手に入れることができます。
この品種改良の一つとして、遺伝子組換えがあります。遺伝子組換え食品とは、他の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、その性質を持たせたい作物の遺伝子に組み込むことによって作られた食品です。
代表的な遺伝子組み換え食品に、害虫抵抗性のとうもろこしが挙げられます。農薬をまかなくても害虫の繁殖を抑えることができるため、収穫量も多くなります。また、除草剤耐性の大豆は、雑草を除く作業が楽になり、省力化と生産コスト削減や環境保全にも貢献しています。
このように遺伝子組み換えによって、これまでの品種改良では生み出せなかった新しい性質を持った作物が誕生し、食糧問題や環境保全に大きなメリットをもたらしています。
私たちが毎日食べているお米や野菜、果物の多くは、長い年月をかけて「より多くの収穫を得る」ため、あるいは「より美味しく栄養価の高い作物」を目指して品種改良が行われてきました。その結果私たちは現在、様々なニーズに沿った食材を手に入れることができます。
この品種改良の一つとして、遺伝子組換えがあります。遺伝子組換え食品とは、他の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、その性質を持たせたい作物の遺伝子に組み込むことによって作られた食品です。
代表的な遺伝子組み換え食品に、害虫抵抗性のとうもろこしが挙げられます。農薬をまかなくても害虫の繁殖を抑えることができるため、収穫量も多くなります。また、除草剤耐性の大豆は、雑草を除く作業が楽になり、省力化と生産コスト削減や環境保全にも貢献しています。
このように遺伝子組み換えによって、これまでの品種改良では生み出せなかった新しい性質を持った作物が誕生し、食糧問題や環境保全に大きなメリットをもたらしています。
- 日本で流通する大豆の8割が遺伝子組み換え食品 -
遺伝子組換え技術は、自然では交配しない生物から遺伝子を持ってくることができるため、従来の掛け合わせによる品種改良では不可能と考えられていた特長を持つ農作物を作ることができます。
遺伝子組み換え食品は「食品」としての安全性を確保するため、国の「食品安全委員会」で安全性審査を受けるとともに、食品表示が義務付けられています。対象はじゃがいも、大豆、てんさい、トウモロコシ、なたね、わた、アルファルファ、パパイヤの8種類です。
例えば日本人に馴染みの深い豆腐や納豆、味噌、醤油の原料である大豆は、日本で流通している93%が輸入作物で占められています。
このうち、アメリカ、ブラジル、カナダ3国からの輸入が98%。この3つの国でつくられる大豆は、90%以上が遺伝子組み換え大豆です。日本で流通している大豆の8割以上が遺伝子組み換えによるものと推測されます。
- もともと存在する遺伝子の一部を改変するゲノム編集食品 -
遺伝子組み換えが、外から別の生き物の遺伝子を組み込んで新たな機能を持たせるのに対し、ゲノム編集は、もともと存在する遺伝子の一部を切断(編集)することで新たな機能を発揮させる技術です。
例えば遺伝子組み換え食品は、トウモロコシに地中に住むバクテリアの遺伝子を組み込んで、害虫に強いトウモロコシを作ります。
つまり遺伝子組み換えでは、違う種類の生き物の遺伝子(外来遺伝子)を別の生き物に移植することで、本来持たないはずの外来遺伝子が組み込まれた『継ぎはぎ』の生き物を誕生させます。
これに対してゲノム編集は外から遺伝子を入れることなく、もともと存在する多くの遺伝子の中から、「成長を抑制する」など食品として悪い特徴を作ってしまう遺伝子を除く(編集する)ことで、より有用な食品となる作物(生き物)を作り出します。
外から他の遺伝子を移植せずに遺伝子を操作できるのがゲノム編集の最大の特徴で、遺伝子組み換えとの大きな違いです。
遺伝子組換え技術は、自然では交配しない生物から遺伝子を持ってくることができるため、従来の掛け合わせによる品種改良では不可能と考えられていた特長を持つ農作物を作ることができます。
遺伝子組み換え食品は「食品」としての安全性を確保するため、国の「食品安全委員会」で安全性審査を受けるとともに、食品表示が義務付けられています。対象はじゃがいも、大豆、てんさい、トウモロコシ、なたね、わた、アルファルファ、パパイヤの8種類です。
例えば日本人に馴染みの深い豆腐や納豆、味噌、醤油の原料である大豆は、日本で流通している93%が輸入作物で占められています。
このうち、アメリカ、ブラジル、カナダ3国からの輸入が98%。この3つの国でつくられる大豆は、90%以上が遺伝子組み換え大豆です。日本で流通している大豆の8割以上が遺伝子組み換えによるものと推測されます。
- もともと存在する遺伝子の一部を改変するゲノム編集食品 -
遺伝子組み換えが、外から別の生き物の遺伝子を組み込んで新たな機能を持たせるのに対し、ゲノム編集は、もともと存在する遺伝子の一部を切断(編集)することで新たな機能を発揮させる技術です。
例えば遺伝子組み換え食品は、トウモロコシに地中に住むバクテリアの遺伝子を組み込んで、害虫に強いトウモロコシを作ります。
つまり遺伝子組み換えでは、違う種類の生き物の遺伝子(外来遺伝子)を別の生き物に移植することで、本来持たないはずの外来遺伝子が組み込まれた『継ぎはぎ』の生き物を誕生させます。
これに対してゲノム編集は外から遺伝子を入れることなく、もともと存在する多くの遺伝子の中から、「成長を抑制する」など食品として悪い特徴を作ってしまう遺伝子を除く(編集する)ことで、より有用な食品となる作物(生き物)を作り出します。
外から他の遺伝子を移植せずに遺伝子を操作できるのがゲノム編集の最大の特徴で、遺伝子組み換えとの大きな違いです。
- 血圧を下げるトマトや大きい肉厚のマダイ、トラフグ -
現在開発が進む主なゲノム編集食品に、血圧を下げるトマトや体の大きい肉厚のマダイ、トラフグ。アレルギー物質が少ない卵、毒素を作らないジャガイモなどが挙げられます。
筑波大学はゲノム編集技術を用いて、血圧降下作用を持つ健康機能性成分として注目されているGABAを多く蓄積するトマトを作成しました。
理化学研究所、大阪大学、神戸大学らのグループは、ジャガイモに含まれる有毒物質であるソラニンなどの生合成に関わる遺伝子を固定して発現を抑制し、毒性の除去に成功しました。京都大学の木下政人助教らの研究グループは、体の大きい肉厚のマダイやトラフグの開発を進めています。
- 種改良の時間が大幅に短縮し、食糧増産に期待 -
数年から数十年かかっていた新品種の開発が、遺伝子組み換え技術によって10年から15年に短縮され、ゲノム編集技術を用いることで1〜4年に縮まるといわれます。
世界の人口は2050年には、現在の72億人から98億人へ増加すると予測されています。そして国連食糧農業機関(FAO)は、この人口増加をきっかけに「2050年の農業生産を06年の水準より50%以上増加させる必要がある」としています。
現在、世界では約8億2100万人が食料不足に苦しんでおり、およそ9人に1人が飢餓に見舞われているといわれます。
究極の品種改良といわれるゲノム編集技術を活用することによって、病気、害虫、異常気象にも耐えられる作物をスピーディに作り出すことが可能となります。
バナナ、ジャガイモなど従来の品種改良や、遺伝子組み換えによってすでに耐性が付いた作物にもゲノム編集は適用可能です。畜産や養殖に応用することで牛や鶏の飼育、鮭の品種改良などの食料増産に期待が集まっています。
- 安全性審査や食品表示が義務化されないゲノム編集食品 -
遺伝子組み換え食品は、「食品安全基本法」や「飼料安全法」に基づいて、それぞれ科学的な評価を行い、問題のないもののみが栽培や流通することができる仕組みとなっています。
厚生労働省はゲノム編集食品が、「科学的に従来の品種改良と区別できない」点や、「安全面でゲノム編集は従来の育種技術と同程度のリスクしかない」といった理由で、外部遺伝子が入らない限り安全性審査や食品表示を義務化していません。
東京大学医科学研究所の内山正登客員研究員らが、2018年に20~69歳の男女約3万8000人を対象にインターネット上で実施したアンケート調査(回答約1万700人)によりますと、ゲノム編集された農作物を「食べたくない」と答えた人は43%で、「食べたい」と答えた人は9.3%にとどまりました。
また、日本消費者連盟などは、ゲノム編集は開発途上の技術で安全性に不安があり、すべてのゲノム編集食品の安全性審査と表示の義務化を求めて署名活動を行っています。
- EUはゲノム編集食品を遺伝子組み換えと同等の規制に -
厚労省や食品開発側は、科学的データを可能な限り公表することで消費者の理解を得ようとしています。また、ゲノム編集の技術や改変内容、新たなアレルギーの原因物質の有無などの情報開示を開発側に求め、開示内容はホームページに公開することとしています。
米国では、「ゲノム編集による遺伝的な変異が、従来の育種法によっても生じうる変異である場合に限り、ゲノム編集された作物を特別な規制の下に置かない」という方針が示されました。
対照的にEUでは、「ゲノム編集された作物を、遺伝子組み換え技術によって生み出された作物と同等の扱いをする」という欧州司法裁判所の判決が示されました。つまりゲノム編集食品は遺伝子組み換え食品と同等の規制下に置かれるということです。
わが国では環境省が、ゲノム編集食品で外来遺伝子を含まない品種に関しては、「遺伝子組換えの使用規制による生物多様性確保の法律」(カルタヘナ法)の規制対象外としています。厚生労働省も同様に、最終的に外来遺伝子を含まない品種に関しては、食品衛生法上の安全性審査の対象外としています。
現在開発が進む主なゲノム編集食品に、血圧を下げるトマトや体の大きい肉厚のマダイ、トラフグ。アレルギー物質が少ない卵、毒素を作らないジャガイモなどが挙げられます。
筑波大学はゲノム編集技術を用いて、血圧降下作用を持つ健康機能性成分として注目されているGABAを多く蓄積するトマトを作成しました。
理化学研究所、大阪大学、神戸大学らのグループは、ジャガイモに含まれる有毒物質であるソラニンなどの生合成に関わる遺伝子を固定して発現を抑制し、毒性の除去に成功しました。京都大学の木下政人助教らの研究グループは、体の大きい肉厚のマダイやトラフグの開発を進めています。
- 種改良の時間が大幅に短縮し、食糧増産に期待 -
数年から数十年かかっていた新品種の開発が、遺伝子組み換え技術によって10年から15年に短縮され、ゲノム編集技術を用いることで1〜4年に縮まるといわれます。
世界の人口は2050年には、現在の72億人から98億人へ増加すると予測されています。そして国連食糧農業機関(FAO)は、この人口増加をきっかけに「2050年の農業生産を06年の水準より50%以上増加させる必要がある」としています。
現在、世界では約8億2100万人が食料不足に苦しんでおり、およそ9人に1人が飢餓に見舞われているといわれます。
究極の品種改良といわれるゲノム編集技術を活用することによって、病気、害虫、異常気象にも耐えられる作物をスピーディに作り出すことが可能となります。
バナナ、ジャガイモなど従来の品種改良や、遺伝子組み換えによってすでに耐性が付いた作物にもゲノム編集は適用可能です。畜産や養殖に応用することで牛や鶏の飼育、鮭の品種改良などの食料増産に期待が集まっています。
- 安全性審査や食品表示が義務化されないゲノム編集食品 -
遺伝子組み換え食品は、「食品安全基本法」や「飼料安全法」に基づいて、それぞれ科学的な評価を行い、問題のないもののみが栽培や流通することができる仕組みとなっています。
厚生労働省はゲノム編集食品が、「科学的に従来の品種改良と区別できない」点や、「安全面でゲノム編集は従来の育種技術と同程度のリスクしかない」といった理由で、外部遺伝子が入らない限り安全性審査や食品表示を義務化していません。
東京大学医科学研究所の内山正登客員研究員らが、2018年に20~69歳の男女約3万8000人を対象にインターネット上で実施したアンケート調査(回答約1万700人)によりますと、ゲノム編集された農作物を「食べたくない」と答えた人は43%で、「食べたい」と答えた人は9.3%にとどまりました。
また、日本消費者連盟などは、ゲノム編集は開発途上の技術で安全性に不安があり、すべてのゲノム編集食品の安全性審査と表示の義務化を求めて署名活動を行っています。
- EUはゲノム編集食品を遺伝子組み換えと同等の規制に -
厚労省や食品開発側は、科学的データを可能な限り公表することで消費者の理解を得ようとしています。また、ゲノム編集の技術や改変内容、新たなアレルギーの原因物質の有無などの情報開示を開発側に求め、開示内容はホームページに公開することとしています。
米国では、「ゲノム編集による遺伝的な変異が、従来の育種法によっても生じうる変異である場合に限り、ゲノム編集された作物を特別な規制の下に置かない」という方針が示されました。
対照的にEUでは、「ゲノム編集された作物を、遺伝子組み換え技術によって生み出された作物と同等の扱いをする」という欧州司法裁判所の判決が示されました。つまりゲノム編集食品は遺伝子組み換え食品と同等の規制下に置かれるということです。
わが国では環境省が、ゲノム編集食品で外来遺伝子を含まない品種に関しては、「遺伝子組換えの使用規制による生物多様性確保の法律」(カルタヘナ法)の規制対象外としています。厚生労働省も同様に、最終的に外来遺伝子を含まない品種に関しては、食品衛生法上の安全性審査の対象外としています。