知っておきたい 「日本の選挙制度」【政治】

知っておきたい 「日本の選挙制度」


  昨年11月に衆議院が解散し、12月16日に第46回総選挙が行われました。その結果、表にあるように自民党が大勝し、26日の特別国会で自民党の安倍総裁が第96代の首相に選出されました。選挙結果によって政権が代わり、それに伴なって日本の方向性が微妙に変化していきます。このように、選挙は国民の意向を大きく反映させる絶好の機会です。
 今回の衆議院選挙を振り返りながら、選挙の仕組みや問題点などを考えてみましょう。

知っておきたい 「日本の選挙制度」 - 衆議院解散・総選挙まで -
 野田前首相は昨年8月、消費税増税法案成立後「近いうち」に衆議院を解散すると約束しました。しかし、法案成立後も解散の素振りを見せないことから野党は強く反発しました。そして11月、赤字国債の発行のための特別公債法案成立や、一票の格差是正などの懸案事項に目途がつき解散に踏み切ったのです。
 衆議院が解散すると、40日以内に新しい衆議院議員を選ぶための選挙が行われます。衆議院選挙は、定数480人の衆議院議員すべてを入れ替える選挙のため「総選挙」と呼ばれています。これに対して参議院は、3年ごとに予定通り半数を改選する「通常選挙」です。
 衆議院議員の任期は4年ですが、途中で解散があると任期が短くなります。前回の第45回総選挙が2009年8月30日に行われたため、議員の任期は約3年3カ月となりました。一方、参議院議員の任期は6年で解散はありません。このため、衆議院のほうがより国民の意向を反映していることなどから、衆議院の優越が認められています。
- 衆議院選挙は「小選挙区・比例代表並立制」 -
 衆議院の定数は480で、300は小選挙区選挙、残る180は比例代表選挙で選ばれます。小選挙区と比例代表の選挙を同時に行うため、小選挙区比例代表並立制と呼ばれています。有権者は小選挙区では候補者名、比例区では政党名を書いて投票します。小選挙区では一人しか当選できませんが、比例代表選挙では獲得した票に応じて各政党に議席が配分されます。
 全国を11のブロックに分けられた比例代表選挙では、各政党はあらかじめ候補者名簿を作り、獲得議席数に応じて上位の候補者から順に当選者が決まっていきます。候補者名簿に小選挙区の立候補者を載せてもかまいません。こうした候補者を重複立候補者といいます。
 重複立候補者の名簿順位は、同じ順位にしている政党が多くなっています。これは、比例区での復活当選を当てにするのではなく、小選挙区で存分に戦って欲しいとの意味が込められています。名簿順位が同じ候補者間では、どのくらいの僅差で負けたかという惜敗率によって当選が決まります。小選挙区で落選した重複立候補者は、同じ政党内で惜敗率というシビアな戦いが待っているのです。
- 参議院は「選挙区制・比例代表制」 -
 今年夏に予定されている参議院議員選挙は「選挙区制・比例代表制」によって行われます。参議院の定数は242人で、このうち半分の121人が改選されます。衆議院の小選挙区と異なり、都道府県単位の選挙区で73人、比例区で48人が選ばれます。
 都道府県ごとの選挙区選挙では、有権者は候補者名を書いて投票し、各選挙区の定数に合わせて得票者の多い順に当選者が決まります。定数は人口によって割り振られ、東京都は5人、大阪府や愛知県など5府県は3人、京都府など12府県は2人、他の29県は1人を選ぶため、1人区と呼んだりしています。
 比例代表制は、非拘束名簿方式比例代表制となっており、全国を単位として行われます。有権者は各政党が名簿に順不同に載せた候補者名、あるいは政党名のいずれかを記入して投票します。両者を合算した得票数に応じて各政党の当選者が決まり、得票の多い候補者から順に当選者が決まっていきます。
- 一票の格差は是正されずに総選挙 -
 2009年の衆議院選挙の最大2.3倍の格差に対して、最高裁判所は「法の下の平等」に反すとして違憲状態であると判断しました。有権者数が最も多い千葉県第4区と最も少ない高知県第3区を比べると、千葉県第4区のほうが有権者数は2.3倍にもなっています。逆にいうと、高知3区の1票に対して千葉県4区の票は0・43の価値しかなく、法の下の平等に反するということです。
 国会はこうした格差を是正するため、昨年の総選挙直前に小選挙区を5つ減らす「0増5減」を成立させました。しかし、区割りの変更などに時間がかかり今回の選挙には間に合わず、従来の違憲状態のまま選挙が行われました。参議院でも一票の格差があり違憲状態との判断が示されたままになっています。
- 戦後最低の投票率を記録 -
 さらに深刻な問題は、投票率が戦後最低だった1996年の59・65%を下回る59・32%を記録したことです。政権選択選挙として注目を集めた前回2009年の投票率69・28%と比べると、10ポイント近く下落しています。原因として政党の乱立や気象条件などが挙げられているようですが果たしてそれだけでしょうか。近く選挙権を得る皆さんにも選挙制度についてじっくり考えていただきたいと思います。
バナー
デジタル新聞

企画特集

注目の職業特集

  • 歯科技工士
    歯科技工士 歯科技工士はこんな人 歯の治療に使う義歯などを作ったり加工や修理な
  • 歯科衛生士
    歯科衛生士 歯科衛生士はこんな人 歯科医師の診療の補助や歯科保険指導をする仕事
  • 診療放射線技師
    診療放射線技師 診療放射線技師はこんな人 治療やレントゲン撮影など医療目的の放射線
  • 臨床工学技士
    臨床工学技士 臨床工学技士はこんな人 病院で使われる高度な医療機器の操作や点検・

[PR] イチオシ情報

媒体資料・広告掲載について