日常生活に直接関わる地方公共団体【政治】

日常生活に直接関わる地方公共団体


今年は4年ごとに行われる統一地方選挙の年にあたり、4月に都道府県や市区町村の首長や市町村長を選出する統一地方選挙が行われました。地方の問題は地域住民で解決しようというのが地方自治で、日本国憲法の第8条で地方自治に関する規定を定めています。この地方自治とはどのようなものかを考えてみました。

日常生活に直接関わる地方公共団体 - 地方自治の仕組みを考える -
 全国の各地方で政治を行う機関を、地方公共団体や地方自治体と呼んでいます。そこには、最高責任者の首長と地方議会が置かれています。今年の統一地方選挙は、この最高者である首長や地方議員を選出する選挙だったのです。
 首長とは、地方公共団体の長である都道府県知事や市町村長の一般的な呼称で、普通は知事、市長、町長、村長などと呼ばれています。東京の23区は特別区と呼ばれ、市と同じ扱いとなっています。知事に立候補できるのは30歳以上、市町村長は25歳以上で、その任期はいずれも4年間となっています。また、地方議員に立候補できるのは25歳以上で任期は4年です。

- 国会と地方議会はどう違う -
 国会や地方議会では、有権者から選挙で選ばれた議員が法律や予算などを審議します。しかし、国会はいわゆる議員内閣制と呼ばれる制度を採用し、国会議員の中から内閣総理大臣を選びます。これに対して地方自治体では二元代表制を採用しています。
 地方自治体の首長は、議会の議員と同じように選挙によって住民から直接選ばれます。住民の直接投票によって選ばれた首長は、条例や予算などの議案の提出権や人事権、また災害時の指揮や海外都市との交流など、いわば地方の大統領並みの権限を持ちます。しかし、首長が打ち出す政策と、議会の議員との意見が異なり対立する事があります。こうした場合、首長は議会に対して審議のやり直しを命じることが出来ます。しかし、議会の四分の三以上の賛成があれば、首長の不信任を決議することができます。不信任を受けた場合、首長は辞めるか、議会を解散して住民に判断を仰ぐことができます。新しく選出された議会で、再度不信任決議が採択されると、首長は辞職しなければなりません。
 このように、首長と議会は互いに対等な関係にあり、権力が一方に偏らないようにするために二元代表制が採用されています。
日常生活に直接関わる地方公共団体 - 住民には直接請求権という権利 -
 住民の意向が地方の政治に直接反映できるような制度も保障されています。直接請求権と呼ばれるもので、住民が地方の政治に不満がある場合、署名を集めることで首長や議会に対して条例の制定や改廃、事務の監査請求、議会の解散、首長や議員、その他主な公務員の解職を請求することができます。また、地方に
よっては非常に大切な問題について、住民投票を行うところも出てきています。
 このように、地方の問題はそこに住む住民が一番よく理解しており、住民自身で解決していくのが一番よい方法です。地方自治は、そこに住む住民の生活に密着して行われるため「地方自治は民主主義の学校」と呼ばれることもあります。しかし、国会議員選挙と比較して住民の関心は低く、近年、地方議員への女性の参画率の低さが問題視されています。地方自治体の中には女性議員のいない自治体も少なくありません。

- 地方自治体が抱える問題点 -
 地方自治体の首長には、条例や予算案を議会に提出する権限などの他に、税金を集めるという大きな権限を持っています。地方自治体の収入は、住民が納める地方税と、国からの地方交付税交付金や国庫支出金などで成り立っています。
 2014年の国の一般会計の総額は約95兆8800億円でした。このうち、地方交付税交付金として国から地方自治体に16兆1400億円、予算総額の約16・8%が地方に交付されています。全国の地方自治体の大半は赤字財政で困窮し、これまで多額の資金を地方交付税交付金などの国からの支援に頼ってきました。地方自治体の多くが、地方税など独自の収入が全体の三分の一程度のため、三割自治と称されることもあります。
 これでは、地方のことは地方で判断し、解決するという本来の地方自治の姿から離れる一方です。

- 地方が自活するために -
 赤字財政に苦しむ国にとっても、地方が自活することで地方への交付金が減額することは望ましいことです。このため、政府は地方交付税交付金や国庫支出金の減額、税収作業の一部地方への移譲といった「三位一体の改革」や、市町村合併による地方財政の立て直しや地方自治の効率化などの改革に取り組んできました。
 昨年には「地方創成法」を成立させました。地方を活性化させることで仕事を増やし、雇用を創出して若者の地方還流を促すことで首都圏への人口集中の歯止めなど、さまざまな効果が期待されています。
 いずれにしても、政治の基本は地方自治であり、地方自治体を横断的に統括するのが国の政治です。私たち一人ひとりが基本である地方自治を支えているという視点から、先日の統一地方選挙を振り返ってみてはいかがですか。
バナー
デジタル新聞

企画特集

注目の職業特集

  • 歯科技工士
    歯科技工士 歯科技工士はこんな人 歯の治療に使う義歯などを作ったり加工や修理な
  • 歯科衛生士
    歯科衛生士 歯科衛生士はこんな人 歯科医師の診療の補助や歯科保険指導をする仕事
  • 診療放射線技師
    診療放射線技師 診療放射線技師はこんな人 治療やレントゲン撮影など医療目的の放射線
  • 臨床工学技士
    臨床工学技士 臨床工学技士はこんな人 病院で使われる高度な医療機器の操作や点検・

[PR] イチオシ情報

媒体資料・広告掲載について