知っておきたい「政治の仕組み」【政治】

知っておきたい「政治の仕組み」

 昨年6月、公職選挙法が改正され、国政選挙や地方選挙の選挙権年齢を18歳以上に引き下げることが決まりました。今回の改正は、1945年に選挙権年齢が25歳から20歳に引き下げられ、女性の参政権が認められて以来、70年ぶりとなる大改革です。
 この結果、18歳と19歳の新しい有権者が約240万人増え、若い世代の声が政治に反映されると期待されています。しかし、「政治には関心がない」「難しすぎて分からない」「政治家に任しておけばいい」という人も多く、2013年の参議院選挙、2014年の衆議院選挙の世代別投票率では20歳代の投票率が最も低くなっています。
 このため、若い世代への期待とともに、政治への無関心層の増加に繋がるのではという不安の声も聞かれます。日本の政治の仕組みを振り返り、国民主権を保証する選挙制度について考えてみることにしました。

知っておきたい「政治の仕組み」 - 政治への関心を高めるために -
【世界では選挙権・被選挙権年齢引き下げの傾向】
 今年7月に予定されている参議院選挙から選挙権年齢の引き下げが実施されます。日本では70年ぶりの大改革ですが、国立国会図書館の調べでは世界191か国・地域のうち、92%が18歳以上に選挙権を与えています。日本はやっと世界水準に達したことになりますが、諸外国ではさらに引き下げを検討している国も少なくありません。オーストリアではすでに16歳から与えられていますし、イギリスでも18歳からさらに引き下げることを検討しています。
 また、選挙に立候補できる被選挙権年齢は、日本では衆議院議員が25歳、参議院議員は30歳となっています。しかし、世界に目を向けると、被選挙権年齢の引き下げも進められ、18歳以上とする国は50か国を超えています。このため、大学生の国会議員がいる国も少なくありません。

【高校生の政治活動の一部容認】
 文部科学省は選挙権年齢が18歳に引き下げられたことを受け、昨年10月に高校生の政治活動の一部を認める通知を出しました。実は、文部科学省は1969年に当時の学生運動の高まりが高校にも波及したことを受け、高校生の政治活動について「望ましくない」として制限していました。
 今回の通知は、高校生に政治への関心を高め、積極的に関わってもらうことを目的にしています。このため、高校生が学校外での政治活動が可能になりました。しかし、生徒会活動や部活など校内での政治活動は原則禁止され、違法となるデモなどへの参加は制限、または禁止されています。学校内で政治活動を控えることになったのは、学校は教育を目的にした公的施設であるため、政治的中立性が必要だという理由からです。しかし、政治的中立という判断基準について線引きが難しいといった戸惑いの声も聞かれます。
 文部科学省は、政治や選挙に関する副読本などを作り、高校生に対する政治教育、社会教育の充実を目指しています。また、模擬投票など、現実の政治に即した取り組みを強化して政治への関心を促していく方針です。

【若い世代が関心を高めるために】
 政府は、若い世代の政治的関心の高まりを期待しています。しかし、これまでの日本の政治は、高い投票率を示す中高年を意識した政策に重点が置かれてきました。中高年が求める社会保障や医療、年金など当面する課題を重視し、こうした政策を積み重ねていった結果、日本は1000兆円を超える借金を抱え込んでいるのです。若者には、この巨額の借金を返済していくという厳しい課題が課せられています。若者こそ政治に目を向け、政治に積極的に参加することが強く求められています。声を上げなければ、政治は振り向いてくれません。
 候補者や政党にも同様に課題が課せられています。選挙権年齢が引き下げられたいま、候補者は若い世代を取り込むために魅力ある政策を打ち出せる能力があるか否かが問われます。
 選挙権の18歳への引き下げは、候補者に若者への関心を喚起し、若者には政治への関心を促すことが大きな目的です。
知っておきたい「政治の仕組み」 【2013年、ネット選挙が解禁】
2013年4月、多くの有権者の政治参加を促すために、インターネット選挙運動が解禁されました。今や若者を中心に必須アイテムとなったインターネット。このインターネットを使った選挙運動が可能になりました。候補者や政党は、自らの主張をネットで広く発信するとともに、有権者との対話も可能になりました。一方、有権者は各々が支持する候補者を応援するため、ネットを通じて意見を述べることができます。ネット選挙が実施されたことで、候補者や政党の意見を聞くだけでなく、有権者が政治の主体として選挙に参加できるようになりました。ネットを通じて双方向でのやり取りを可能にし、有権者の政治参加を促そうというものです。
 ただ、ネット選挙運動にはさまざまな禁止事項があります。ネット選挙運動を考えている人は、禁止事項について十分に留意する必要があります。
知っておきたい「政治の仕組み」 - 日本の選挙制度 -
【国の基本制度は三権分立】
 政治に参加する意味、重要性について紹介してきました。次に、日本の政治がどのように行われているか考えてみましょう。
 日本の政治は、議会制民主主義によって行われ、三権分立を国の基本制度としています。三権とは法律を作る立法府(国会)、国会で決まった法律や予算を実行する行政府(内閣)、法律に違反していないかを審査する司法府(裁判所)のことです。
 立法府である国会は、18歳以上の国民から選挙で選ばれた国会議員で形成し、ここで国の意思決定を行います。憲法では「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」とされ、国として一番大切な法律を作ります。
 国会で作られた法律に従って実際に国の政治を行うのが、現在では安倍総理大臣を長とする内閣です。国会議員が総理大臣(首相)を選び、首相が国務大臣を決めて「内閣」を作ります。これを「議員内閣制」と呼んでいます。
 司法府である裁判所は、国会で成立した法律の審査や行政府の取り組みに違法性がないかを監視します。
 国の権力が三つに分かれているのは、互いに牽制し合うことで権力の乱用を防止しようというものです。このトライアングルの真ん中に、主権者としての国民が位置しています。

【憲法で認められた投票権】
 三権分立の仕組みを紹介しましたが、日本の政治はこの中で国会を形成する国会議員の役割が非常に大きいことが分かります。選挙で国会議員を選ぶことで、国民の意思を反映することができるのです。投票する権利は、国民の権利として憲法によって保障されています。
 日本の国会には、衆議院と参議院があるため「二院制」といわれています。二院制を採用しているのは、法律など国の大切な問題を審議し採択する時、間違いのないように二つの院で審議するためです。このため、異なるタイプの議員を選ぶ必要があり、衆議院と参議院では選挙方法、定員、被選挙権、任期などで相違点が見られます。

【衆議院議員総選挙の仕組み】
 衆議院の定数は475人で、295人は小選挙区選挙、残る180人は比例代表で選ばれます。衆議院選挙は、すべての議員を選び直すために総選挙とも呼ばれます。
 衆議院選挙は、小選挙区比例代表並立制で行われます。有権者は小選挙区では候補者名、比例区では政党名を書いて投票します。295に分けられた小選挙区選挙では、最多得票の1人が当選します。全国を11のブロックに分けた比例区では、各党が候補者に順位を付けた名簿を提出し、獲得議席数に応じて上位の候補者から順に当選が決まります。候補者名簿に小選挙区の候補者を載せることもできます。これを重複立候補者といい、小選挙区で当選すればそのまま当選となります。

【参議院議員通常選挙の仕組み】
 参議院には解散がなく、常に任期満了(6年)によるものだけです。ただし、参議院議員は3年ごとに半数が入れ替わるように憲法で決められているため、3年に1回定数の半分を選ぶことになります。参議院議員の定数は242人で、このうち都道府県単位の選挙区で選ばれるのは146人、比例代表選出議員は96人です。
 選挙区選挙では、各選挙区の定数に合わせて得票数の多い順に当選していきます。昨年7月、一票の格差を是正するために定数が改正されました。参議院選挙の選挙区で、島根県と鳥取県、高知県と徳島県が一つの選挙区に統合されました。また、宮城県、新潟県、長野県の定数が削減された一方、北海道、東京都、愛知県、兵庫県、福岡県で定員が増加しました。この結果、全体の定数は変更なく人口比で10増10減となりました。
 比例代表選挙は、全国を一つの単位として行われます。有権者は各政党が名簿に順不同に載せた候補者名、あるいは政党名を記入して投票します。両者を合算した得票数に応じて各政党の当選者数が決まり、得票の多い候補者から順に当選が決まっていきます。このため、非拘束名簿式比例代表制とも呼ばれています。

【参議院選挙に初めての一票を】
 今年7月に第24回参議院選挙が実施されます。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、18歳~19歳の約240万人が新たに投票に加わることになります。選挙権年齢が引き下げられた意味、その背景などを十分に考慮して投票に臨んで欲しいと願っています。
 とりわけ高校生の有権者は、これまで学校の授業や部活などに追われ、政治には縁遠い生活を過ごしてきたかもしれません。しかし、本文で紹介したように若い皆さんに直接かかわる大きな問題が横たわっています。政治問題を自らの問題として考え、その想いを初めての一票に込めてみてはいかがですか。
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