後発医薬品(ジェネリック)とは【医療】

後発医薬品(ジェネリック)とは


【40兆円を超える国民医療費 医療費削減の切り札になるか?】
医療機関で処方される医療用医薬品には、先発医薬品(新薬)と後発医薬品(ジェネリック医薬品)の2種類があります。新薬の開発には、10~17年という長い年月と数100億円から数1000億円といった莫大な投資が行われ、このコストが薬の値段に反映されています。
 ジェネリック医薬品とは、新薬の特許が切れた後に作られて販売される医薬品のことで、有効性や安全性などについて新薬で確認されている医薬品のことです。このため、開発期間や開発コストが大幅に抑えられ、結果として薬の値段を新薬に比べて4~5割程度も安く設定できます。このため、政府は医療費削減の切り札として、現在約50%の普及率を2020年度末には8割以上にすることを目標に掲げています。達成すれば年間1兆3000億円もの医療費削減が見込まれています。

後発医薬品(ジェネリック)とは 【期待を集めるジェネリック医薬品】
- ジェネリック医薬品とは? -
 医薬品には、一般の薬局や薬店で販売されている一般用医薬品と、医療機関で診察を受けた後に医師から処方される医療用医薬品があります。この医療用医薬品には、新しく開発・販売された新薬と、特許が切れた後に製造・販売された後発医薬品があります。この後発医薬品をジェネリック医薬品と呼んでいます。  ジェネリック医薬品の「ジェネリック:generic」とは、英語で「一般的な」という意味を持つ言葉です。ジェネリック医薬品が普及している欧米では、医師が薬を処方する時に、日本のように商品名(ブランド名)ではなく、有効成分を示す一般名(generic name)を記載することが多く、後発医薬品をジェネリック医薬品と呼んでいます。それが、世界共通の呼称となり、日本でもジェネリック医薬品と呼ぶようになったのです。
後発医薬品(ジェネリック)とは - 長い年月と莫大な研究開発費 -
 新薬を開発するには、長い年月と莫大な研究費用が必要です。新薬を開発するには、植物や微生物、化学物質などの中から将来薬となる可能性がある新しい物質を発見したり、化学的に作り出すことから研究が始まります。この基礎研究に2~3年かかります。
 薬となる可能性のある物質などを発見すると、動物や培養細胞を用いて2~5年かけて非臨床試験を行い有効性や安全性を調べます。非臨床試験にパスした薬は、実際に人間に使っても安全で有効性があるかを調べる臨床試験が行われます。
 治験と呼ばれる臨床試験は、参加者の同意を得たうえで3段階に分かれて行われます。まず少数の健常者を対象に、副作用や安全性についての確認。次いで少数の患者を対象に、有効性や安全性、使用量や試用期間などの確認。さらに多数の患者を対象に、有効性や安全性とともに既存薬との比較という3段階の治験です。
 製薬メーカーは、治験で安全性や有効性が確認された治験薬を、厚生労働省に製造承認の申請を行います。そして、1~2年かけて数段階の審査を受け、承認・認可されると初めて薬として販売されます。このように、新薬が開発されるまでには、8~17年もの長い年月を必要とします。ちなみに、基礎研究の段階で新薬の候補とされた物質のうち、薬として患者の手に渡るのは1万分の1程度だということです。
 また、新薬開発に必要なコストは、薬の種類によって異なりますが、100億円から中には数1000億円にも達するものもあるようです。この莫大な投資費用が、コストとして薬の値段に反映されています。
後発医薬品(ジェネリック)とは - 特許で守られる新薬の開発 -
 新薬の開発には、長い年月と莫大な費用を必要とします。このため、新薬を開発した製薬メーカーは特許を出願し、認められれば出願した日から20~25年の特許期間が与えられ、その期間は新薬を独占的に販売できます。つまり、法律で類似品などが作られないように保護されるのです。
 特許期間が終了すると、新薬に使われた有効成分や製法などは国民の共有財産になります。そして、厚生労働大臣の承認を得られれば、他の製薬メーカーもジェネリック医薬品として製造・販売することが出来ます。現在、多数の医薬品メーカーがジェネリック医薬品を製造・販売しており、薬の種類も多岐に及んでいます。高血圧降下薬など需要の多い生活習慣病治療薬はもちろん、循環器系及び呼吸器用薬、抗生物質及び化学治療剤、ホルモン剤、ビタミン剤、さらに抗がん剤など多くの病気に対応したジェネリック医薬品が揃っています。

- ジェネリック医薬品と安全性 -
 ジェネリック医薬品は、「医薬品医療機器法」に定められた基準のもとで開発・製造・販売されています。ジェネリック医薬品の開発段階では、新薬と同じ効き目を確かめるため、さまざまな試験の実施が義務付けられています。ジェネリック医薬品と新薬を同一人物に同じ条件で服用してもらい、血中薬物濃度が同じように推移するかを確かめる「生物学的同等性試験」を始め、有効期間内での品質の安定を確かめる「安定性試験」、溶け方を比べる「溶出試験」などの試験をクリアした後、国の承認を受けて製造・販売が許可されます。
 ジェネリック医薬品は、新薬と同じ有効成分を同じ量だけ含有しているため、有効性や安全性に違いはありません。ただ、製剤技術の向上に伴って、飲みやすさや扱いやすさなどが考慮され、色や形、味や香りなどの添加剤が異なる場合があります。また、カプセル・錠剤・点眼剤などさまざまな形状のものが用意されています。
 国の承認を受けたジェネリック医薬品は、「医療用医薬品品質情報集(表紙がオレンジ色のためオレンジブックと呼ばれています)」にすべて掲載されています。


【2020年までにシェア80%を目指して】
- 最大の魅力は新薬に比べて安価 -
 巨額を投じ、しかも8~17年もかけて開発される新薬に対してジェネリック医薬品は、開発期間は約3~5年、費用は約1億円程度で収まります。この原価の差が販売価格に反映され、薬価は低く設定されています。
 薬の値段(薬価)は国によって決められます。ジェネリック医薬品は、最初に販売した時は原則として新薬の70%の価格で売り出されました。2014年からは60%に引き下げられ、現在さらに50%にまで引き下げようと検討が進められています。薬の公定価格である薬価の2年ごとの見直しで、ジェネリック医薬品の大半はさらに安くなります。新薬の50%以下、中には20%程度というジェネリック医薬品も珍しくありません。
後発医薬品(ジェネリック)とは - 40兆円を突破した国民医療費 -
 高齢化社会を迎え、医療費の高騰が社会問題になっています。国民医療費は、2013年度に40兆610億円と初めて40兆円を突破しました。65歳以上の高齢者の国民医療費は23兆1112億円となり、全体の57%を占めています。一人当たりでは72万4500円、これに対し65歳未満では17万7700円にとどまり、約4倍の開きがあります。
 厚生労働省は、国民医療費の高騰に対処するため、ジェネリック医薬品の普及促進に力を注いでいます。2015年9月現在、日本でのジェネリック医薬品の普及率は約56%になっています。欧米では広く普及し、アメリカでは90%以上、ヨーロッパでは60~80%と日本を大きく上回っています。
 厚生労働省では、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、2017年度半ばに70%以上に引き上げるとともに、2018年から2020年度末までに80%以上を目標に掲げています。

- ジェネリック医薬品を使用するために -
 ジェネリック医薬品を使用するには、医師や薬剤師にジェネリック医薬品を希望すると伝えることが必要です。医師が発行する処方箋に、新薬の名前が記載されていても、「変更不可」の欄にチェックがなければ、薬剤師と相談の上、患者自身がジェネリック医薬品を選ぶことが出来ます。処方箋に医薬品の商品名ではなく、成分名が記載されている場合も同様に可能です。
 しかし、すべての医薬品にジェネリック医薬品があるとは限りません。また、ジェネリック医薬品は新薬と有効成分や効果は変わりませんが、使用されている添加剤が異なる場合があります。アレルギーがある場合などは、医師や薬剤師に相談しながら慎重に選択する必要があります。
後発医薬品(ジェネリック)とは - 国民の理解がシェア拡大に -
 ジェネリック医薬品のシェアを80%に高めるには、医療関係者はもとより国民すべての理解が不可欠です。
 日本では新薬の特許消滅とともに、ジェネリック医薬品がゾロゾロ出てきて、「ゾロ品」と呼ばれた時代がありました。そのため、医師など医療関係者の間で、「安かろう悪かろう」と否定的に捉える人もいたようです。
 しかし、1980年ごろを境にジェネリック医薬品に対する各種試験が厳しくなり、1997年にはすでに出回っていたジェネリック医薬品について再評価し、合格したものだけを認めることになりました。以降、ジェネリック医薬品の承認申請の基準は年を経るごとに厳しくなってきました。
 現在、新薬の半分以上をジェネリック医薬品が占め、しかも複数の会社で製造されているものも数多くあります。医師や薬剤師は、その多さから選択に迷うことや、安定供給に不安を抱く場合もあるようです。ジェネリック医薬品のシェア拡大のためには、医療関係者はもとより国民すべての理解が求められています。
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