税金のしくみ見直しへ【財政】

税金のしくみ見直しへ


【ついに税収を上回った国の借金】
 国に集まった税金の総額(税収)は、1990年度の約60兆円を頂点に減り続けている。2009年度の税収は、世界的な経済危機の影響で36兆9000億円にまで落ち込んだ。政府は、国債発行による借金で穴埋めすることを続けており、09年度ついに国債で集めたお金が税収を上回った。09年度の国債は過去最高の53兆5000億円で、税収を上回るのは第二次世界大戦直後の1946年度の後は一度もなかった。

税金のしくみ見直しへ - 減税と不況で所得税が減った - 
 国の一般的な予算では、税収で所得税と法人税が占める割合は半分以上だ。1994年度以降、所得税が目立って減り続けている。大きな原因が減税政策だ。
 1994~96年に景気が落ち込んだため、所得税額を20~15%減らす政策(定率減税)を行い、99年以降も続けた。また、98年には家族を養っている人に対し、税金を減らす「扶養控除」策がさらに拡大した。
 また不況の影響を受け、経営状態が悪い会社が増え、個人が受け取る給料も減る傾向にある。
税金のしくみ見直しへ - 消費税、増税するのしないの? - 
 消費税は1989年4月からスタート。それまではぜいたく品に対して個別に物品税がかけられていた。これをやめ、すべての物やサービスを
対象にした。はじめ3%だった税率は、97年には5%に引き上げられた。
 所得税、法人税とならんで国の主な歳入源になっており、所得税額や法人税額が下がる一方、消費税額は少しずつ伸びており安定している。
 行政サービスにかかる費用が、税収などでまかなえているかどうかを判断するための指標「プライマリーバランス(PB)」がある。
 自民党政権の時代には政府方針として、2011年度までに国と地方を合わせたPBについて、新たな借金を抱えないで税収でまかなう黒字の状態になるよう、目標を設定した。この目標を実現するため、歳出を2007年から5年かけて社会保障費などを最大計14.3兆円減らすことを計画。それでも黒字にならない場合には、消費税を増税することで国の財政を安定させることが話し合われてきた。
 民主党に政権交代後も消費税の増税についてさまざまな意見が出ている。

【苦しい国の台所。税金への考え方改め】
 民主党を中心とする政権が昨年生まれ、歳入の柱である税金への考え方を改めようとしている。高齢化社会が進み、年金や医療など社会保障費用がふくらんでいる。みんなの暮らしが豊かになるよう、互いが税金を出し合って支え合うという考えが求められている。民主党政権は、必要なお金をととのえるためには増税もやむなしと考えている。

- まずは減税政策を見直し - 
 本来支払うべき税金の額を例外的に増やしたり減らしたりする「租税特別措置」。この制度の対象は、国税で310種類、地方税で338種類あるが、ほとんどが減税措置になっている。これによる減税額は年間計5兆9060億円にものぼり、消費税の2%分に匹敵する。特定の業界に関係する減税制度も多く、民主党は「特定の業界に対する隠れ補助金」だと批判している。今後は内容についてチェックし、一から制度を見直す。
税金のしくみ見直しへ - 道路特定財源「むだ遣いの温床」の指摘で廃止 - 
 ガソリン税の「暫定税率」は、1974年の石油危機を背景に始まった制度。ガソリンは、本来のガソリン代金に1リットル約25円分を上乗せして売られている。上乗せ分を暫定税率という。
 ガソリン税が集められて組み込まれていた予算枠は「道路特定財源」という。地方の道路整備に使わ
れるが、この予算で不必要な工事を行ったり、カラオケなど道路と直接関係のない物を購入したりしていたという事実が指摘されていた。2009年、道路特定財源制度は「むだ遣いの温床」として廃止となっている。
税金のしくみ見直しへ ▼道路特定財源
第二次世界大戦後、道路の整備費を自動車の利用者が負担するという考えで作られた予算の枠。財源はガソリン、軽油、自動車、石油ガスにかかる税金。

【4年ぶりに増税9800億円増】
 政府の税金の大枠についてまとめた2010年度「税制改正大綱」が09年12月に発表された。民主党がマニフェスト(政権公約)にかかげた政策にかかる財源の確保を優先。ガソリン税の暫定税率を事実上そのまま続けることにした。さらに扶養控除などは一部取りやめた。その結果、地方税約4800億円、国税約5000億円の総額9800億円分が浮いた。1兆円も税金を減らした09年度から一転、4年ぶりの増税となった。

- たばこ税10月から引き上げ - 
 たばこ税が2010年10月から、1本あたり3.5円分引き上げられる。さらに販売が落ちこむと予想される葉タバコ農家などをサポートするための費用に1.5円も加わり1本あたり計5円が値上がりする。その結果、紙巻きたばこ1箱(20本入り)が今の300円から400円に値上がりする。たばこ税としては過去最大の増税。

- 地球を守る環境税実現めざす - 
 環境税は地球温暖化対策税とも呼ばれ、二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて化石燃料に幅広く税金をかけるもの。2011年度に実現できるよう、準備が進められている。CO2排出量を5~6%減らす効果が期待されるという。
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