「ふるさと納税」が静かなブーム【財政】

「ふるさと納税」が静かなブーム


【過度な返礼品競争に批判も】
 自分の故郷や応援したい自治体などに寄附する「ふるさと納税」制度が、2008年にスタートしました。開始以来、ふるさと納税の利用者数や、寄附金額が増加しています。いま、静かなブームになっているふるさと納税の仕組みはどうなっているのでしょう。ふるさと納税ブームが起こっている背景などを探ってみました。

「ふるさと納税」が静かなブーム - 都市部と地方の格差是正 -
 北海道の夕張市が2007年、財政再建団体となって事実上破綻しました。これを機に、都市部と地方の税収格差の是正が活発に議論されるようになりました。これを受け、総務省は故郷を離れても、生まれ育った故郷に貢献できる方法として「ふるさと納税」制度を提唱しました。
 国民の多くは地方で生まれ、その地で教育を受け、大切に育てられます。成長すると、地方の人の多くは進学や就職で都市に向かい、その地で働き、居住する都市に税金を納めます。納められた税金は、いま住んでいる都市のために使われ、自分を育んでくれた地方で使われることはありません。これでは都市と地方の格差は広がるばかりです。
 そこで、今は都市に住んでいても、自分が生まれ育った地方に、自分の意思で納税できる仕組みが必要だということで、2008年に「ふるさと納税」がスタートしました。

- 「ふるさと納税」の仕組み -
 現在、私たちは住民票のある地域に税金を納めています。サラリーマンであるなら、給与から自動的に天引きされています。
 ふるさと納税とは、新たに税金を納めるものではなく、自分の生まれ育ったふるさとや応援したい地方自治体に対する寄附金のことです。ふるさと納税をすると、寄附金のうち2000円を超える部分について、一定の限度額(家族構成や年収などで決まる)まで、原則として所得税・個人
住民税から全額が控除されます。例えば、都市部にあるA市に住む人が、B市という地方自治体にふるさと納税として寄附すると、A市の住民税は税額控除によって減額され、地方自治体のB市に納めた形になります。つまり、本来納めるはずの自治体から、応援したい自治体に住民税を納めたことになります。
 ふるさと納税は、応援したい地方自治体への寄附金であるにも拘らず「納税」という名前が付いているのはこのためです。
「ふるさと納税」が静かなブーム - 増加する利用者や寄附金 -
 ふるさと納税が導入されて以降、しばらくの間は利用者数や納税額は横ばい状態が続きましたが、制度の浸透や2011年の東日本大震災を機に急増しました。
 政府は、ふるさと納税による地方創生の促進をめざして、2015年度の税制改正でふるさと納税制度の拡充を行いました。税制改正では、寄附金に対しての控除額が約2倍に増額されました。また、手続きの簡素化を図るため、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を設けました。これまで、確定申告が不要な給与所得者などは、ふるさと納税として寄附した自治体から送られる「寄附金の受領書」を用いて確定申告しないと、寄附金控除を受けることが出来ませんでした。ワンストップ特例制度の導入で、給与所得者などにとって大きなハードルだった確定申告が不要になりました。
 このため、より多くの人が気軽にふるさと納税を活用でき、利用者数や寄附金の増加につながると期待されています。

- 寄附金の用途を選べる -
 税金を納めることは国民の義務です。しかし、納めた税金が何に幾ら使われているかよく分かりません。ふるさと納税は、生まれ育ったふるさとや応援したい自治体に寄附することで、町の発展に寄与するというのが基本的な考え方です。
 各自治体は、ふるさと納税を呼びかけるホームページを開設し、その中で寄附金の使用目的などを明示しています。このため、寄附者は自分のふるさとはもとより、各自治体が打ち出している施策を見極めて寄附金を納めることが出来ます。寄附を受けた自治体は、寄附した人の期待に応えるために、各々が掲げた施策の実現をめざします。地方が抱える問題は、地方の力で解決することが一番大切であり、これこそが地方自治の在り方です。ふるさと納税は、各自治体の取り組みを支援することに他なりません。
「ふるさと納税」が静かなブーム - 制度の趣旨と返礼品競争の間で -
 ふるさと納税という寄附金を納めてくれた人に、殆どの自治体は返礼品などを送って謝意を示しています。地元の特産品を返礼品として贈ることで、地元産業の振興にもつながります。
 しかし、各自治体は多くの寄附を得ようと、高還元率の産品を用意するなど、返礼品競争が過熱しています。ふるさと納税に関するポータルサイトも登場し、各自治体が掲げる政策とともに返礼品が紹介されているほどです。総務省からも「寄附金控除の趣旨を踏まえた良識ある対応を」と注意勧告がなされています。
 各自治体は、それぞれの地域の特徴を生かした施策を打ち出し、魅力ある町づくりを目指していく。こうした取り組みを、ふるさと納税という形でお金を寄附して支援するのが本来の目的です。各自治体は、このふるさと納税という制度を生かすために、創意工夫を凝らして魅力ある施策を競い合って欲しいものです。
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