刑事司法への市民参加では「検察審査会」は「裁判員制度」の先輩格【社会】

刑事司法への市民参加では「検察審査会」は「裁判員制度」の先輩格


- 60余年の歴史を持つ「検察審査会」 -
 全国民が注目するなか、昨年5月に「裁判員制度」がスタートしました。裁判員制度は、国民が刑事裁判に参加することで、とかく閉鎖的とされてきた裁判に民意を取り入れ、裁判を身近で分かり易いものにしようという制度です。
 昭和23年に設置された「検察審査会」も、検察官が独占する起訴の権限に国民の意見を反映させ、時には不当な不起訴処分を抑制する活動を行なってきました。このように検察審査会は戦後60余年にわたって活動を続け、刑事司法への国民参加としては「裁判員制度」の大先輩といえます。
 この検察審査会法が改正され、検察審査員の審議の結果によって強制起訴が可能になりました。兵庫県明石市での花火大会事故、尼崎JR脱線事故などで「不起訴処分」とされた元副署長やJR西日本の歴代社長が、検察審査会で「起訴議決」され、強制的に起訴されて世間を驚かせました。

刑事司法への市民参加では「検察審査会」は「裁判員制度」の先輩格 - 検察審査員・補充員はどうして選ばれる -
 検察審査員は、司法に国民の感覚を反映させるという目的を実現させるため、20歳以上の選挙権を持つ国民の中から無作為に11名が選ばれます。任期は6カ月で、そのうち半数が3カ月ごとに改選される仕組みになっています。補充員は検察審査員に欠員がでた場合、これに代わって補欠あるいは臨時で検察審査員の仕事を行ないます。選出方法や任期は検察審査員と同じです。
 しかし、義務教育を終了していない人や、1年以上の刑に処せられた人、警察・法曹関係者、国務大臣や都道府県知事・市町村長などは除外されます。また、高齢者や重病者、過去1年以内に裁判員候補者として出頭した人などは免除されます。
 検察審査員に選ばれた人は、正当な理由なく欠席することは禁止され、裁判員と同様に守秘義務を負い、違反すると罰せられます。

- 検察審査会の仕事の内容は? -
 検察審査会は、地方裁判所と主な地方裁判所支部の建物の中に、165の検察審査会が設置されています。検察審査会は11人の検察審査員で構成され、国民を代表して検察官が被疑者を裁判にかけなかったことの是非を審査します。
 昭和23年からこれまでに、50万人以上の人が検察審査員や補充員に選ばれ、15万件もの事件の審査を行なってきました。検察審査会の議決を参考に検察官が再検討の結果、起訴した事件は1400件を上回っています。
 日本では、被疑者を起訴する権限は検察官がほぼ独占しています。このため、被害者やその関係者などが被疑者を裁判にかけることを願っても、検察官の判断によって不起訴・起訴猶予になることがあります。
 検察審査会は、検察官の不起訴判断を不服とする犯罪被害者などの求めに応じ、検察官の判断の妥当性について審査を始めます。審査の申し立てや相談には費用はかかりません。また、被害者などから申し立てがなくても、検察審査会の職権で新聞記事などのニュースをきっかけに審査を始めることもあります。
刑事司法への市民参加では「検察審査会」は「裁判員制度」の先輩格 - 審査会議はどのように行われる -
 検察官の不起訴処分に納得できない被害者やその関係者からの申し立てを受け、表にあるような流れで検察審査会は審査を始めます。
 検察審査会は、11人の検察審査員全員が出席したうえで開催されます。そこで、不起訴とした検察官から必要な書類の提出や、不起訴とした理由の説明を受けることができます。また、審査会議で法律的な判断が必要になった時は、弁護士である審査補助員から助言を受けることができます。具体的には、検察審査員が担当する事件について、審査補助員から法令及びその解釈の説明、事件の法律上の問題点の整理、問題点に関する証拠の整理、事件の審査に関して法的観点からの助言などを受けることができます。
 検察審査会議は非公開で行われ、検察審査員は事件の記録や証言などをもとに国民的視点で審査します。
刑事司法への市民参加では「検察審査会」は「裁判員制度」の先輩格 - 法改正で検察審査会の機能が強化 -
 検察審査会の議決には「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」の3種類があり、その内容は次の通りです。
 「起訴相当」は、検察官は事件を起訴すべき。「不起訴不当」は、検察官はもっと詳しく調べ、起訴か不起訴か判断すべき。「不起訴相当」は、検察官の不起訴処分は納得できるという3種類の議決を行ないます。議決については、過半数の6名で決しますが、「起訴相当」は8人以上(3分の2以上)が同意しなければなりません。
 検察審査会法の改正で、検察審査会で「起訴相当」と議決した事件について、検察官が不起訴としたり、一定期間内に処分しない場合は、検察審査会は検察官の意見も聴きながら再審査を行ないます。この結果、8人以上の多数が「不起訴にしたのは正しくなく、起訴して裁判にかけるべきだ」と判断した時は、起訴すべき議決「起訴議決」を行ないます。
 起訴議決されると、裁判所が指定した指定弁護士が検察官に代わって起訴し、公判を維持することになります。このように検察審査会は、検察官の判断に関わらず「起訴議決」が可能になり、検察審査会の機能が大幅に強化されています。

- 検察審査会が審査した主な事件 -
 検察審査会に申し立てられる事件で一番多いのは、身近で起こる業務上過失致死傷(自動車運転過失致死傷)や詐欺事件です。しかし、水俣病事件、日航ジャンボ機事件、薬害エイズ事件など、社会的に注目された事件も多く含まれています。
 昨年5月の改正検察審査会法の施行後、検察審査会の「起訴議決」で強制起訴された事件は、明石市の花火大会事故、尼崎のJR脱線事故、それに沖縄県の投資会社社長の詐欺事件の3件となっています。
 国民の目線で事件に向き合った時、検察官という専門職では見えにくいものが発見できる可能性があります。司法制度改革で、国民の自然な感情を司法に取り入れたいと謳い、検察審査会と裁判員制度はその代表といえます。今後の推移に注目していきたいものです。
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