日本はなぜ女性の管理職が少ない?【社会】

日本はなぜ女性の管理職が少ない?


 日本の女性の就業率は欧米に比べて低く、管理職に占める割合も1割程度で、欧米の3〜4割を大幅に下回っています。安倍内閣は成長戦略の柱の一つに女性の活躍推進を掲げ、2020年に女性の管理職比率30%をめざしています。女性が指導的な地位に積極的に登用され、男性と肩を並べて活躍できる社会を考えて見ましょう。

日本はなぜ女性の管理職が少ない? - 管理職に占める女性の比率は11・9%、国会議員の女性比率は7・9% -
 内閣府が世界12カ国を対象に行った2011年の管理職に占める女性比率の調査によると、日本は民間企業の課長職以上が7・2%。公務員を含めても11・9%で、12カ国のうち韓国の9・4%に次いで2番目に低い水準となっています。
 1位はフィリピンの52・7%、米国43%、フランス38・7%、イギリス35・7%で、日本の女性管理職の比率が非常に低いことが分かります。
 国会議員の女性比率はさらに低くなっています。列国議会同盟(IPU)が調べた2012年の世界の国会議員の女性比率は平均で20・3%です。
 これに対して日本の衆議院議員の女性比率は7・9%で、世界190カ国の中で163位です。
日本はなぜ女性の管理職が少ない? - 女性の就業率は69・2%。ただし、その57・5%が非正規社員 -
 日本で女性管理職の割合が少ないのは、まず女性の就業率が男性に比べて非常に低いためです。
 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、2012年の日本の25歳から54歳までの女性の平均就業率は69・2%で、加盟34カ国中24位でした。しかも、日本の女性就業者の57・5%がパートやアルバイトなどの非正規社員で占められています。ちなみに男性は91・5%で、スイスの92・7%に次いで2位となっています。
 女性の就業率が最も高いのはスウェーデンで82・5%。次いでアイスランド82・3%、ノルウェー82・1%と続き、オーストラリアやスイスなども80%を超えています。
日本はなぜ女性の管理職が少ない? - 出産、子育て、親の介護が既婚女性を職場から引き離す -
 女性の管理職比率が低い理由に、出産や子育てのために仕事を辞めざるを得ない女性が多いことが挙げられます。
 既婚女性が長期間働こうとする場合、最大のネックとなるのが出産と育児、親の介護などです。女性一人で家事を切り盛りしているのも大きな負担です。
 厚生労働省の最近の調査では、総合職で入社した女性の65%が10年後には会社を辞めています。男性の29%よりもはるかに多いのですが、理由の大半は育児や親の介護で、仕事との両立が難しいためです。
 男性が仕事優先で会社に縛られていて、妻と子育てを分担できていない家庭が大半です。男性の育児休暇の取得率は約2・5%にとどまっており、男性は仕事をつづけ女性は家庭へ戻るという傾向が強いのです。

- 2020年までに管理職に占める女性の比率を30%に -
 政府は10年前の小泉内閣の時に、「あらゆる分野で指導的な地位に女性が占める割合を2020年までに30%にする」という『202030』を決定しましたが、その後目立った進展が見られません。このため、今年に入って安倍内閣は成長戦略の柱の一つに女性の活用を打ち出し、改めて『202030』の実現を強調しています。
 女性の就業率を高め、出産後も離職することなく安心して育児に専念できる環境の整備や、女性の役員、管理職の登用を促進するなど、女性の活躍を推進するための施策を打ち出しています。

- 安心して子育てできる環境整備で、女性の離職を抑制する -
 具体的には、2017年までに第1子の出産をきっかけに離職する女性の割合を現在の6割から5割に減らすとともに、男性の家事や育児への参画時間を現在の2倍の週2時間以上に増やすとしています。
 また、これまで1年間が一般的だった育児休暇を、3年間に延長する「3年間抱っこし放題」という育児支援策を打ち出しています。

- 既婚女性には難しい深夜勤務や頻繁な転勤、単身赴任など -
 女性が男性と同じように長期間の就労が難しいのは、深夜に及ぶ長時間労働や頻繁な転勤を女性総合職にも求める、企業の画一的な人事システムなどに原因があります。学童期の子供や要介護の高齢者を残しての単身赴任は、既婚女性とくに子育て世代の女性にとって非常に難しいのが現実です。
 キャリアとして折角入社しても、6割以上の女性が会社を去って行かざるを得ないのは、家事や育児は女性が中心になって行うものという意識の改革が、家庭でも企業でも遅れているためだといえます。

- 急がれる意識改革と職場復帰する女性の受け入れ体制 -
 子育てや介護が一段落して、職場復帰する女性に対する雇用環境はなかなか厳しいようです。育児休業制度はようやく一般企業の間で広がり始めましたが、再就職する女性の大半がパートや非正規社員というのが現実です。
 政府は、民間企業の役員のうち最低1人は女性を入れること、課長以上の管理職の3割は女性を登用することを産業界に要請しています。

- 政府が女性の長期雇用を支援。2020年に女性の就業率を73%へ -
 少子高齢化の影響で、日本の総人口に占める生産活動に従事できる15歳から64歳までの人口(生産年齢人口といいます)の割合は、2012年の62・9%から2055年には51・2%に減少し、深刻な労働力不足が予想されます。
 安倍内閣が打ち出した成長戦略では、女性の長期雇用の支援を強調しています。具体的には子育てなどで職場から離れがちな25歳から44歳までの女性の就業率を、2020年には2012年比で5%アップの73%に引き上げるとしています。

- 保育サービス施設の拡充で待機児童ゼロへ -
 子育て女性が安心して働くために、さしあたって問題となっているのは子供を預ける託児所などの施設が少ないことです。
 国の設置基準を満たす保育所に入所を待ついわゆる「待機児童」の数は、ここ数年毎年2万5000人前後となっています。
 政府は今年度から小規模の保育サービスを拡充したり、人手不足の保育士の養成に力を入れて、2017年までに40万人分の施設を整備する待機児童対策を打ち出しています。
 また、子育て経験や知識が豊富な高齢者を「子育て援助者」として、約20万人を養成する計画です。

- 女性の躍進によって日本経済が大きく飛躍する可能性が -
 2013年版男女共同参画白書では、働く女性の躍進によって、経済的に次の三つが期待できると指摘しています。
 まず一つは女性の就労が拡大することによって、多様な価値観が商品やサービスに反映されて新しい市場が生まれます。
 二つ目は少子高齢化による生産労働人口の減少を、働く女性が増えることで食い止めることができます。
 三つ目は、女性が男性と同じように生涯にわたって働くことで、育児、介護などの家事が巨大な新ビジネスとして誕生する可能性があるといわれます。

【女性の活躍を〝見える化〟】
- 女性の管理職途用を外から分かる形で情報開示 -
 今、日本の大手企業の間で女性役員の数や管理職の男女比率などを公開する「見える化」によって、女性の活躍を促す動きが出ています。
 いくら企業が「男女差別はありません」、「女性を積極的に登用しています」といっても、外部からその実態は分かりにくいものです。そこで、企業の取り組みを第三者にも分かるように「見える化」することで、女性の活用を促進しようというものです。
 東京証券取引所は今年4月に、上場企業が提出するコーポレートガバナンス(企業統治)報告書に、役員の男女比率や女性の登用の取り組みなどを記載するよう奨励しています。
 厚生労働省は企業支援の一環として、各企業が従業員の男女比や勤続年数、女性のトップの役職、活用への取り組みなどを書き込む「ポジティブ・アクション応援サイト」を設けて、「見える化」を進めています。
 少子高齢化の進展で、近い将来深刻な労働力不足が心配されています。日本ではようやく、官民挙げて女性の就業率の向上と管理職への途用に向けた本格的な取り組みが始まりました。
 今、女性一人ひとりのやる気と能力に大きな期待が集まっています。
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