女性が輝き活躍する社会【社会】

女性が輝き活躍する社会


 日本は本格的な少子高齢社会を迎えました。このまま放置すれば日本経済は遠からず衰退すると心配されています。人口減少を抑え、働き手を増やすことが大きな課題となっていますが、そこで期待されるのが女性の力です。政府は「働き方改革」で同一労働同一賃金の実現、長時間労働の是正を打ち出していますが、同時に女性が安心して働ける環境整備を目指しています。女性が輝き、能力を存分に発揮できる社会の実現を考えてみました。

女性が輝き活躍する社会 - 進む人口減少と深刻化する労働力不足 -
 厚生労働省の推計によりますと、昨年1年間の出生数は98万1000人で、1899年(明治32年)の統計開始以来初めて100万人を割り込みました。
 国立社会保障・人口問題研究所の予測では、今後も年間の出生数は減少を続け、40年後には50万人を切り、総人口は昨年12月の1億2699万5000人から2030年には約1億1600万人に、60年には8700万人にまで減少する見通しです。
 また総務省の労働力調査によりますと、2010年に8000万人以上いた働き手となる生産年齢人口(15歳~64歳)は、16年に7671万人となり、30年には6700万人程度に減少すると予測しています。
 一方で高齢者人口が増加し、2010年には働き手約2.8人が1人の高齢者を扶養していたのに対し、30年には約1.8人で1人を扶養する計算になり、今後日本の労働力不足はますます深刻になることが予想されます。

- 期待される働き手としての女性の活躍 -
 出生数の減少によって将来を担う人材の育成や確保が難しくなっていきます。さまざまな分野で絶対的な人手不足が生じ、社会が正常に機能しなくなる恐れが出てきました。。
 政府や産業界の一部では外国人労働者を導入して人手不足をカバーしようとする動きがありますが、欧米の混乱ぶりをみると問題が多いようです。また、人工知能(AI)やロボット開発に期待が集まっていますが、いまだ本格的な実用化には至っていません。
 高齢者の定義を65歳から70歳、あるいはそれ以上に引き上げて労働人口を増やすことも検討されています。
 しかし何より期待されるのは女性の力です。これまで出産や育児、あるいは介護などで離職を余儀なくされていた女性が、働き手として存分に活躍できる社会の形成が必要です。

- 就労女性の56%がパートなどの非正規雇用 -
 先進34カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)が2016年7月にまとめた25歳から54歳までの女性就労率では、日本は72・7%で加盟35カ国中23位にとどまっています。トップはアイスランドの84・1%で、スウェーデンやスイスなどの欧州諸国は軒並み80%を超えています。  
 日本は12年から15年までの間に女性の雇用は100万人増えましたが、増加分のうち正規社員はわずか2%に過ぎず、大半はパートやアルバイトなどの非正規雇用で占められています。
 女性が育児後に再就職する場合は、パートやアルバイトとなる場合が多く、2015年時点で働く女性2387万人のうち非正規雇用は1345万人で全体の56%を占めています。これは男性の非正規比率28%を大きく上回っています。

- 昨年4月に女性活躍推進法が施行 -
 人口が減少していく中で、働き手を確保して日本経済を維持していくには、女性が職場で大いに力を発揮して活躍することが不可欠です。働く意欲のある女性すべてが、安心してフルに持続的に働くことができる社会の形成が急がれます。
 2012年12月に発足した第2次安倍内閣は、「女性が働きやすい環境を整え、社会に活力を取り戻す」という目標を掲げ、16年4月に女性活躍推進法が施行されました。
 また安倍首相は、女性の活躍の一つの目標として、議員や企業の管理職など「指導的役割」に占める女性の割合を、2012年の11・1%から20年までに30%に引き上げるとしています。

- 女性の活躍に関する計画や情報を公開 -
 女性活躍推進法では、基本原則として男女の職業生活と家庭生活の円滑かつ継続的な両立(ワークライフバランス)を可能とし、女性の意志が尊重される働き方が出来る環境を整備するとしています。
 法律の主な内容は、国や自治体は女性の活躍を推進するための指針や行動計画を作成し、女性の職業選択に役立つ情報の公開や職業紹介を行う。また女性の活躍を推進する企業を優良認定し、発注先として優遇することとしています。
 一方企業は、女性の採用比率や労働時間の状況、女性管理職の比率、自社の女性の活躍に関する数値目標や行動計画を策定し、これらの情報を公表することとしています。これを国、地方自治体、従業員301人以上の企業に義務づけ、300人以下の企業は努力義務としています。
女性が輝き活躍する社会 - 男女差別を禁止する男女雇用機会均等法 -
 日本で女性の社会的進出の大きなステップとなったのが、1986年に施行された職場における男女の差別を禁止する「男女雇用機会均等法」でした。この法律によって女性が男性と同じ条件で働くことができる環境整備が始まりました。
 その後「育児・介護休業法」や「次世代育成支援対策推進法」などによって、家庭と仕事の両立支援が行われるようになりました。育児や介護など家庭の事情でパート勤務を選ぶ人もいますが、企業の中枢部分でキャリアアップを目指す女性が増えてきました。
 しかし一般的に多くの女性は、出産・育児、介護など家庭の事情で正社員としての働き方を続けることが困難となり、第一子出産を機に6割の女性が離職しています。働きたくても働けない女性が約300万人いるといわれます。

- 男性中心の長時間労働が固定化されてきた -
そして今、政府が強い経済、子育て支援、社会保障の三つの分野に横断的に関わる重要課題として推進しているのが「働き方改革」です。日本型の雇用は欧米などと違って終身雇用を原則としているため、不景気でも雇用を維持する役割を担ってきました。一方で企業への帰属意識の高さが重視され、会社本位の長時間労働が常態化していきました。
 一昨年末に電通の女性新入社員が過労自殺した事件を機に、改めて長時間勤務による過重労働問題がクローズアップされました。
 総務省の調べによりますと、昨年「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をしたのは労働者全体の8%強に当たる約450万人で、働き盛りの男性に限ると15%超を占めています。
 また正社員の場合、転勤や残業、休日出勤など、家庭生活を犠牲にした会社優先の働き方を強いられるケースが珍しくありません。こうした現実は、女性のキャリア形成や男性の家事・育児参加を阻んで少子化の大きな要因となっています。

- 同一労働同一賃金、長時間労働の是正へ -
 働き方改革の主なテーマは、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、労働生産性の向上と賃金の引き上げ、長時間労働の是正などが挙げられます。
 日本の非正規雇用の賃金水準は正社員の約6割で、欧州諸国の8割を大きく下回っています。非正規雇用は若者層にも広がり、労働者全体の4割まで増えています。同一労働同一賃金は、正規・非正規の雇用形態で賃金に差を付けない働き方改革の柱となっています。
 また、日本の正社員の労働時間は年2000時間程度で高止まりしており、週49時間以上働く人の比率は2割を超え、欧州諸国の1割を大きく上回っています。

- 国際水準で極端に少ない日本の女性議員 -
 英国のメイ首相、ドイツのメルケル首相や台湾の祭英文総統、ミャンマーのアウン・サン・スーチー国家顧問など、国際社会で女性リーダーの活躍が目立ちます。日本に女性の首相が誕生しない背景には、女性の国会議員が少ないことが挙げられます。
 現在女性の国会議員は衆議院44人、参議院50人で合わせて94人です。昨年7月の参院選挙では、女性議員は戦後最多の28人が当選しましたが、それでも女性議員比率は20・6%にすぎません。衆議院の女性議員比率は9.5%にとどまっています。
 列国議会同盟(IPU)が昨年9月に公表した下院(衆院)議員の女性比率のランキングでは、日本は193カ国中157位です。トップはルワンダの63・8%、欧州主要国ではスウェーデン43・6%、ドイツ36・5%、イタリア31%、イギリス29・6%、フランス26・2%などとなっています。
 また、女性の社会進出の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」では、日本は世界136カ国中105位という低い状況です。

- 女性枠を法的に割り当ててバランスをとる「クオータ制とパリテ制」 -
女性枠を法的に割り当ててバランスをとる
 クオータ制とは議員の選出などで、男女比率の格差を是正するため女性枠を機械的に割り当ててバランスをとる制度のことです。1988年にノルウェーで、「4人以上のすべての議会、委員会、評議会などは任命、選挙を問わず、一方の性が40%以下になってはいけない」と法で定めたのが始まりです。
 現在世界で120カ国以上がクオータ制を導入しており、先進35カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)では26カ国の政党がクオータ制を採用しています。先進国で採用していないのはニュージーランド、アメリカ、トルコと日本の4カ国だけです。
 これに対して究極の男女平等を目指して、選挙で選ばれる公職を男女同数とするのが「パリテ制」です。全人口の半分を占める女性はもともとパリテ(等価)を持っているという考えに基づいています。
 フランスが1999年に憲法を改正して「選挙で選ばれる公職に男女の平等を促す」とし、2000年にパリテ法(候補者男女同数法)を制定しました。12年には閣僚が男女同数の内閣が誕生しました。
 日本でもクオータ制の法制化に向けて超党派の議員連盟で検討していますが、クオータ制の導入が本格的な女性活躍社会実現の契機になりそうです。
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