大学入試改革で問われる 読解力、表現力【社会】

大学入試改革で問われる 読解力、表現力



【知識・技能中心から問題解決能力重視へ】
 2020年度から現在の大学入試センター試験が廃止され、新しいテスト(大学入学希望者学力評価テスト)が導入されます。4択方式による知識の暗記・記憶・再生に重点を置いた入試から、記述式を加えて思考力や表現力が重視されるようになります。教育目標が知識・技能の習得中心から課題解決能力の育成に重点が置かれるようになり、実社会・実生活で生きる読解力、表現力の向上が強く求められます。

大学入試改革で問われる 読解力、表現力 - 若い人たちの読解力が低下傾向に -
 先進34カ国が加盟するOECD(経済開発協力機構)は昨年12月、世界72カ国・地域の15歳約54万人を対象に実施した2015年の学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。
 それによりますと、日本の平均点は「科学的応用力」が前回12年の4位から2位、「数学的応用力」は7位から5位と順位を上げましたが、「読解力」は4位から8位に順位を落としています。
 SNSの普及などで長文を読んだり書いたりする機会が減って、若い人たちの読解力が低下傾向にあるといわれます。このため文部科学省では語彙(ごい)力の強化や文章を読む学習の充実を掲げ、20年度から実施する新しい学習指導要領にも反映させる方針です。
大学入試改革で問われる 読解力、表現力 - 2020年度から新しい共通テストが開始 -
 現在の大学入試センター試験に代わる新しい共通テストとなる「大学入学希望者学力テスト」は、今の中学3年生が高校3年になる3年後の2020年度から実施されます。文部科学省ではこれまでの「知識・技能」に加えて、「思考力・判断力・表現力」の育成を教育目標の重点に置き、その成果を図る評価の一つとして大学入試を位置づけようとしています。
 私立大学では一般入試の比率が低下し、半分以上が推薦入試やAO入試(高校時代の活動や成績、面接や小論文など多様な方法で入学者を選抜する)で入学しています。
 国立大学でも近い将来3割程度まで推薦やOA入試を増やす計画で、平成28年度から東大が推薦入試を、また京大が推薦・OA入試を導入しています。

- 求められる自分の頭で考え表現する力 -
 新しい大学入学希望者学力テストでは記述式問題の導入が予定されています。国立大学協会でも理系を含めた国立大学の受験生に、各大学が実施する個別入試で「高度な記述式試験」を導入する方針を打ち出しています。
 これほど大学入試で記述式試験がクローズアップされるのはどうしてでしょうか。今後あらゆる場面でのグローバル化が進み、国際社会というフィールドで協調性、多様性、主体性が問われ、コミュニケーション能力、問題解決能力、想像力、実行力が強く求められるようになります。
 文部科学省が昨年3月に出した「高大接続システム改革会議」の最終報告によりますと、自ら主体的に課題に取り組み、自分の頭で考え、文章やプレゼンテーションで表現していく能力が大学教育だけでなく、卒業後の職場生活、社会生活に不可欠だとしています。

- 国語と数学に記述問題が導入される -
 知識や技能は今後コンピューターやAI(人工知能)に取って代わられ、これからの大学生に求められるのは判断力、読解力、表現力、コミュニケーション力だといわれます。このため新大学入試学力テストでは、当面国語と数学を対象に記述問題を導入する方針です。  
 このほか、英語ではリスニングとリーディングに加えてライティングやスピーキングも評価する予定です。またTOEFLやIELTS、TEAPといった外部検定の利用も検討されています。
 ただ一度に50万人以上が受験する共通テストで記述式試験を公平に採点するのは、採点に要する期間や評定基準などクリアすべき課題も多いようです。

- 「大学共通入試の変遷」 -
1・2期校受験から共通1次、センター試験
 大学入試の共通テストの始まりは、1979年1月から89年1月までの11年間、全ての国公立大学と産業医科大学の入学志望者を対象に全国一斉に実施された「大学共通第1次学力試験(共通1次)」でした。
 それまで国立大学は個別に入試を行っていましたが、入学試験は1949年から1期校(3月上旬)、2期校(3月下旬)に分かれていました。1期校は東大、京大など旧帝大や都市部の大学が中心で、2期校は主として外国語大や教育大など専門性の高い大学や地方の大学などでした。
 大学入試では第1志望が1期校に集中し、2期校は1期校のすべり止めといった性格を帯びていました。これを是正するため1978年に1期、2期の区分をなくし、79年から大学共通1次試験がスタートしました。
 共通1次試験は、86年1月までの前半8年間の試験科目は国語、英語、理科、社会、数学の5教科7科目(理科・社会は科目選択)で合計1000点満点。受験生は共通1次の結果を基に、全国の国公立大学から1校を志願して2次試験(本試験)を1回受験しました。後半の87年1月からの3年間は、試験科目が5教科5科目(理科・社会は科目選択)で合計800点満点となり、受験生は2次試験を3校志願して3回受験できました。
 現行の大学入試センター試験は90年1月から実施され、私立大学も活用できるようになりました。その後高校教育の多様化に適応して試験科目は拡大し、現在は6教科30科目で構成され、受験生は志望大学が指定する教科・科目を選択して受験します。
 そして、2020年度から記述式を取り入れた、思考力重視の新たな大学入学希望者学力評価テストが実施されることになります。
バナー
デジタル新聞

企画特集

注目の職業特集

  • 歯科技工士
    歯科技工士 歯科技工士はこんな人 歯の治療に使う義歯などを作ったり加工や修理な
  • 歯科衛生士
    歯科衛生士 歯科衛生士はこんな人 歯科医師の診療の補助や歯科保険指導をする仕事
  • 診療放射線技師
    診療放射線技師 診療放射線技師はこんな人 治療やレントゲン撮影など医療目的の放射線
  • 臨床工学技士
    臨床工学技士 臨床工学技士はこんな人 病院で使われる高度な医療機器の操作や点検・

[PR] イチオシ情報

媒体資料・広告掲載について