多様性社会に生きるダイバーシティと多様な価値観【社会】

多様性社会に生きるダイバーシティと多様な価値観


 性別や国籍、障がい、性的マイノリティなどの差異を越えて多様性を生きるダイバーシティがクローズアップされています。背景には少子高齢化による日本の労働人口の減少や女性の社会的進出、障害者の雇用促進が挙げられます。とくに職場では様々な価値観と多様な人材を受け入れる雇用環境の整備が強く求められています。国際オリンピック委員会(IOC)では2015年に、「性別と性的指向に関する差別を禁止する」ことを明文化したオリンピック憲章が改定されました。1年後に迫った東京五輪を前に、改めてダイバーシティを考えてみましよう。

多様性社会に生きるダイバーシティと多様な価値観 - ダイバーシティとは多様性を活かすこと -
 ダイバーシティとは直訳すれば「多様性」ということで、「幅広く性質の異なる者が存在する」という意味です。組織でのダイバーシティとは、「様々な違いや価値観を尊重して受け入れ、多様な人材を活かしてそれぞれが持てる能力を最大限発揮できるようにする」ということになります。
 様々な違い(差異)が存在するダイバーシティは、第1属性(内側の輪)と第2属性(外側の輪)の2つのタイプからなっています。第1属性には年齢、性別、国籍、人種、障がい、LGBTなどの性的マイノリティが挙げられます。
 また第2属性には雇用形態や婚姻、嗜好、収入、出身地、学歴、趣味や価値観といった他者との「違い」があり、その数は無限です。
 ダイバーシティの意識の高まりとともに、近年大きな関心を集めているのがLGBT(性的少数者)の社会的認知の問題です。

- 性同一性障害特例法で戸籍上の性別変更を認める -
 LGBTというのは、レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った略称です。いわゆる性的マイノリティですが、LGBTの四者を一律に論ずることは必ずしも適切ではありません。
 日本では2004年に性同一性障害特例法が施行(08年改正)され、複数の医師の診断など一定の条件を満たせば、戸籍上の性別を変更することが認められています。民法上も変更後の性別が適用されます。
 しかしこの場合の性同一性障害とは、心と体の性別が一致しない疾患名のことで、LGBTのなかのトランスジェンダーの一部として解釈されています。
 博報堂DYグループのLGBT総合研究所が、2016年に実施した全国の20歳から59歳までの10万人(有効回答数8万9366人)を対象にした調査によりますと、LGBTに該当する人は約5・9%、性的指向を持たない無性愛者などその他の性的マイノリティに該当する人が約2・1%でした。

- 東京都が性的指向の差別を禁じる人権尊重条例施行へ -
 東京都はオリンピック憲章にうたわれた人権尊重の理念の実現を目指して、LGBTなど性的マイノリティへの差別禁止を盛り込んだ人権尊重条例を今年4月から施行します。
 都道府県の条例としては初めてで、オリンピック憲章の「いかなる種類の差別も受けてはならない」という根本原則に合わせて、2020年の東京五輪開催地である東京都が条例制定で対応したことになります。
 また産業界の日本経済団体連合会も、17年5月に企業に対して、「LGBTへの理解を促進し、多様な人材の存在を前提とした環境・制度の整備を進めることが求められる」と提言しています。
 東京都の人権尊重条例の施行を機に、今後各企業でも性的マイノリティへの理解が広がり、職場のダイバーシティが加速すると見られます。

- お茶の水女子大がトランスジェンダー受け入れへ -
 大学でも昨年夏お茶の水女子大が、戸籍上は男性でも性別が女性と認識しているトランスジェンダーの学生を、2020年4月から受け入れると発表して話題を呼びました。
 これまで「女子」と規定していた入試の出願資格を、「戸籍または性自認が女子」に改められることになりました。編入は22年度からの予定で、奈良女子大や京都女子大などでも検討を始めています。また、筑波大学では21年度にも国内で初めてダイバーシティ(人材の多様性)に関連した修士号を設ける方針です。
 障害、ジェンダー、多文化、世代格差の4つのテーマを柱にカリキュラムを作成し、ダイバーシティの観点から経営学や社会学、生物学など幅広い学問を横断的に学ぶ課程を設けます。多様性の時代にダイバーシティに精通した人材の養成を目指します。
多様性社会に生きるダイバーシティと多様な価値観 - 人口減社会でダイバーシティの推進は欠かせない -
 少子高齢社会の進展で労働人口は減少し、女性の活躍やシニア世代、障害者の雇用促進が注目される中で、優れた外国人材の受け入れを含めたダイバーシティにふさわしいLGBTへの対応が急がれます。
 現在、採用試験で性別欄を削除する自治体が増えています。LGBTのカップルに対して「結婚に準じる関係」として認める同性パートナーシップ宣誓証明制度が、東京都の渋谷区、世田谷区、中野区をはじめ、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市、大阪市などの自治体に広がっています。
 大阪市では昨年11月から市営住宅に同性カップルの入居が始まりましたが、福岡市、伊賀市、那覇市でも認められています。
 多様な価値観、様々な差異を越えて多様性を活かしたダイバーシティが今始まろうとしています。
バナー
デジタル新聞

企画特集

注目の職業特集

  • 歯科技工士
    歯科技工士 歯科技工士はこんな人 歯の治療に使う義歯などを作ったり加工や修理な
  • 歯科衛生士
    歯科衛生士 歯科衛生士はこんな人 歯科医師の診療の補助や歯科保険指導をする仕事
  • 診療放射線技師
    診療放射線技師 診療放射線技師はこんな人 治療やレントゲン撮影など医療目的の放射線
  • 臨床工学技士
    臨床工学技士 臨床工学技士はこんな人 病院で使われる高度な医療機器の操作や点検・

[PR] イチオシ情報

媒体資料・広告掲載について