海の国境、領海と排他的経済水域【社会】

海の国境、領海と排他的経済水域


 【日本の海洋面積は世界第6位】
 日本は四方を海で囲まれ、面積は世界で62位の約38万㎢という小さな島国です。しかし、領海や排他的経済水域(EEZ)を含めた海洋面積は約447万㎢にも達する世界6位の海洋王国です。日本は天然資源に乏しい国ですが、周辺の海域には黒潮や親潮など四つの海流が流れ込む世界有数の漁場となっています。さらに、広大な領海やEEZ内の海底には、これまでの調査で天然ガスや石油、メタンハイドレートなど大量のエネルギー資源が眠っていることが分かっています。このため、海底の地下資源をめぐって周辺諸国と対立するようになってきました。海の国境はどのように決められているのでしょう。

海の国境、領海と排他的経済水域 - 領海が12海里に決まるまで -
 1982年の国連海洋法条約で、領海が12海里(約22㎞)に決まるまで、領海の幅について明確な規定は存在しませんでした。
 1702年にオランダのバインケルスフークが、沿岸から大砲の届く距離を領海の範囲とするという説を唱えました。18世紀末には、当時、大砲の射程距離の極限値とされていた3海里を領海の幅にしようという説が主張され、アメリカやイギリスなどが支持しました。以降、大砲の射程距離が3海里を超えるようになっても、慣行として多くの国で使用され続けてきました。
 しかし、次第に沿岸漁業国を中心に領海拡大要求が高まっていきました。こうした動きを受け、1973年から国連海洋法会議が始まり、82年に領海や接続水域、大陸棚やEEZなど、海洋に関する法的な秩序を定めた国連海洋法条約が採択されました。海洋に関する包括的な条約のため、海の憲法とも呼ばれています。日本は96年に批准し、現在では168か国・地域が批准しています。
海の国境、領海と排他的経済水域 - 領海、接続水域、EEZ、公海とは -
 沿岸国の主権が及ぶのは、海岸線(低潮線)から外側12海里の海域が領海で、その上空や海底も含まれます。外国船舶が領海に入るときは、沿岸国の許可が必要になります。ただ、沿岸国の秩序や安全を害しない限り、自由に航行できる無害通航権が認められています。
 さらに、領海の外側に接続水域と呼ばれる海岸線から24海里(約44㎞)以内の海域があります。接続水域では、外国船舶の不法侵入や密輸などの法令違反の防止や処罰、感染症の拡大を防ぐのに必要な規制が認められています。
 領海の海岸線からその外側200海里(約370㎞)までの海域がEEZです。EEZでは、沿岸国は漁業や鉱物資源の開発など経済活動、人工島など構造物を設置する権利を持っており、他国は無断で漁や資源開発を行うことができません。しかし、外国船の航行や飛行機の飛行、海底の電線やパイプラインの敷設などは認められています。
 大陸棚とは、大陸や島の周辺に広がる傾斜が緩やかな深さ200m程度の海底のことで、陸地の延長上にあるため石炭や石油などの地下資源が豊富です。また、水産資源の宝庫となっている場合が多く見られます。大陸棚は、原則としてEEZと同じ海域の海底を指しますが、地質や地形が国連海洋法条約の規定を満たすと、最大350海里(約648㎞)まで延長できます。
 EEZの外側がすべての国に開放される公海です。ここでは、すべての国が航行や飛行の自由、漁獲の自由、科学的調査の自由など大海原からの利益を享受できます。

- 東シナ海での領有権問題 -
 国連海洋法条約で、領海やEEZについて国際ルールが定められました。この海の憲法と呼ばれる国連海洋法条約も、大陸棚をめぐって利害が錯綜する地域では十分に機能を発揮できません。
 中国や台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、インドネシアなどに囲まれた東シナ海は、古くから海上交通の要所として多くの船舶に利用されてきました。東シナ海には大きな島はなく、無人のパラセル諸島(西沙諸島)やスプラトリー諸島(南沙諸島)が点在するだけでした。この海域に70年代後半に油田の存在が確認されて以降、中国をはじめ周辺諸国の間で領有権をめぐる対立が激化しています。
 国連海洋法条約で、海岸線から200海里をEEZと定めていますが、多くの島々の領有権が不確実な南シナ海ではEEZの策定が困難です。中国はパラセル諸島やスプラトリー諸島の領有権を主張し、すでにスプラトリー諸島の暗礁を埋め立てて人工島を建設しています。2016年にハーグ仲裁裁判所は、中国の主張に歴史的権利はないと裁定しましたが、膠着状態は依然として続いています。
海の国境、領海と排他的経済水域 - 日本の領土問題 -
 本紙で日本の領土問題を取り上げ、ロシアが実効支配する北方四島について詳しく紹介しています。日本は北方四島のほか、韓国の警備隊が駐留する竹島、中国が領有権を主張する尖閣諸島問題を抱えています。
 日本政府は、歴史的に日本への帰属が明らかな領土保全のために毅然と対応すると度々表明してきました。日本固有の領土を守ることは、領土とともに周辺の広大な海域から得られる多くの利益を守ることにつながります。
 日本最南端に位置する沖ノ鳥島は、面積7・86㎡、標高約1mというサンゴ礁からなる小さな島です。中国などは島ではなく岩だと主張しています。岩だとEEZを設定できないため、政府は浸食や風化で島の消失を防ぐ護岸工事を進めています。日本がちっぽけな沖ノ鳥島を守り続ける意味は非常に大きいのです。
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