知っておきたい「裁判の仕組み」【憲法】

知っておきたい「裁判の仕組み」


【保障されている裁判を受ける権利】
 日本の政治は、日本国憲法で示されているように三権分立を国の基本としています。三権分立とは、法律を作る立法権(国会)、国会で決まった法律や予算に基づいて政策を実施する行政権(内閣)、法律に違反していないかを判断する司法権(裁判所)を独立した機関とし、互いに監視させることで権力の集中を防ごうとするものです。
 三権分立の一翼を担う「司法権」については縁遠く思っている人もいるかも知れません。しかし、複雑化する社会の中でトラブルは頻発し、司法の果たすべき役割は大きくなっています。憲法第32条で「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」とし、国民の裁判を受ける権利を保障しています。日本の裁判の仕組みを考えてみましょう。

知っておきたい「裁判の仕組み」 【裁判には2種類がある】
- 民事裁判と刑事裁判 -
 裁判とは、社会で起こった様々な揉め事を法律の下で解決するために、裁判官や検察官、弁護士など法律の専門家が解決に向けて行うものです。
 裁判には民事裁判と刑事裁判の二種類があります。民事裁判では、日常生活で起こる様々なトラブルを法律で解決していきます。刑事裁判は、法律に違反した人をどのように罰するのかを検討し、刑罰の重さを決めて行きます。刑事事件は社会に与える影響が大きく、メディアによく取り上げられて注目されますが、実際は民事裁判の件数の方が多くなっています。

- 生活上の争いを扱う民事裁判 -
 民事裁判とは、お金の貸し借り、土地建物を巡るトラブル、家賃の滞納、遺産相続、交通事故の損害賠償、離婚など、当事者同士では解決できない時に起こされる裁判です。この他、国や地方自治体を相手取って起こす行政裁判があります。行政裁判では、薬害エイズ患者やハンセン病患者などが国を訴えた裁判としてよく知られています。何れも民事裁判ですが、裁判を進める手続を決めている法律が異なり、一般には民事訴訟法、行政裁判は行政事件訴訟法などが適用されます。
 民事裁判は、裁判を起こす人(原告)が相手(被告)を決めて、裁判所に訴状を提出することから始まります。民事裁判では、原告と被告が主張した事実関係について法律を適用して裁判所が判断します。簡易裁判所で扱われる少額の民事訴訟などでは、弁護士をたてずに自分で対応する本人訴訟が多くみられます。 しかし、多額の訴訟や財産上の問題以外の争いでは、原告や被告が自らの主張を述べ、主張を裏付ける証拠なども提出します。その内容が裁判に影響するため、個人での対応が難しい場合が多く、通常は弁護士に依頼します。弁護士に依頼すると、代理人として全権を委任することになるので、本人が裁判所に足を運ばなくてもよくなります。

- 犯罪者を罰する刑事裁判 -
 刑事裁判は、犯罪者に国が罰則を科す裁判です。民事裁判では、当事者の話し合いで「和解」という解決方法があるのに対し、刑事裁判では法によって犯罪者を裁くという大きな違いがあります。
 刑事裁判の流れを簡単に紹介しましょう。警察は、殺人や傷害、窃盗などの犯罪が起こると捜査に入ります。容疑者から犯人を特定すると、裁判所に逮捕状を請求して逮捕します。  逮捕後は警察が取り調べ、犯人に間違いないと判断すると、検察庁に身柄を引き渡します。検察庁の検事は被疑者を再度取調べ、間違いなく犯罪を起こしたと判断すると裁判所に訴えます。これを起訴といいます。起訴されると裁判官が裁判を行い、被告人を有罪か無罪かを判断し、有罪の場合は刑罰が言い渡されます。
 民事裁判では、訴えを起こした人を「原告」、訴えを起こされた人を「被告」と呼びます。これに対して刑事事件では、起訴された人を「被告人」と呼びます。間違わないようにしたいものです。
知っておきたい「裁判の仕組み」 - 5種類ある裁判所の役割 -
《高等裁判所》 高等裁判所は、最高裁判所のすぐ下に位置する裁判所で、日本の8か所の大都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)に置かれています。東京高等裁判所には、知的財産高等裁判所が設けられています。
 高等裁判所の裁判は、原則として3人の裁判官からなる合議体で審理されます。高等裁判所では、主に地方裁判所で行われた民事、刑事の訴訟(第1審)の判決に対する控訴事件を扱います。
《地方裁判所》地方裁判所は、全国の都府県に1か所と北海道の4か所の計50か所に設けられ、支部も含めると総数は203になります。
 地方裁判所では、主に訴訟の第1審を行います。また、簡易裁判所の民事の判決に対する控訴審(第2審)についての裁判権を持っています。地方裁判所では、単独裁判官または3人の裁判官による合議体のどちらかで行われます。
《家庭裁判所》家庭裁判所とその支部は、地方裁判所と同じところにあります。特に必要性の高い所には、家庭裁判所出張所が設けられています。家庭裁判所では、家庭内のトラブルなど比較的身近な問題の審理や調停、少年審判などが行われます。

《簡易裁判所》 簡易裁判所は、全国に438ヵ所あります。簡易裁判所は、日常生活の中で起こるわずかな被害や損害に対し、時間をかけずに処理していきます。民事事件では請求額が140万円以下の訴訟。刑事事件では、罰金以下の刑に当たる罪、窃盗や横領など比較的軽い罪の訴訟事件が対象となります。

【裁判に関わる人たちる】
- 法曹三者とは -
 裁判には多くの人が関わります。なかでも、裁判に直接的に関わるのが法曹三者と呼ばれる裁判官、検察官、弁護士です。法曹三者になるには、日本の国家試験の中で最難関ともいわれる司法試験に合格し、法律の実務を学ぶ司法研修を受け、その修了試験に合格しなければなりません。合格すれば裁判官、検察官、弁護士としての道を進んで行きます。

《裁判官》憲法第76条で、裁判官は「その良心に従い独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」と記されています。裁判官は、権力者などの圧力を受けずに公正な裁判が出来るように、その立場が憲法によって保障されているのです。
 最高裁判所の15名の裁判官は、優れた見識を持つ40歳以上の人から任命されます。高等裁判所などの裁判官は、最高裁判所が指名した者の名簿から、内閣が任命することになっています。任期は10年とされていますが、そのほとんどは任期終了後に再任されています。

《検察官》検察官は、警察が捜査した事件を受理し、容疑者を起訴するか否かを判断します。起訴した事件については、証拠をもとに具体的な犯罪事実を明らかにします。これが「冒頭陳述」です。その上で裁判所に証拠を提出し、被告人が有罪であることを証明します。さらに、検察官は犯罪に相当と考える刑罰について意見を述べます。これを「求刑」と言います。
 裁判所は、検察官と弁護人の意見を吟味し、被告人が有罪であることが証明されたと判断すると、「判決」で被告人の罪の重さに応じた「刑罰」を下します。
 検察庁は検察官の行う事務を統括するところで、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁などが設置されています。

《弁護士》弁護士として活躍するには、日本弁護士連合会の名簿に登録されなければなりません。弁護士の使命は、基本的人権の擁護と社会正義の実現です。弁護士の主な仕事は、依頼人の訴訟や不服申し立てなどに対し、代理人として紛争の解決に努めます。法廷では、被告人の弁護人としての主張や弁護を行ないます。
知っておきたい「裁判の仕組み」 【国民が裁判に参加する諸制度】
《裁判員裁判》2009年5月から、殺人や放火など重罪の刑事事件の第1審に、国民から選ばれた裁判員が参加する裁判員制度が導入されました。日本の裁判は、s法律の専門家に委ねられ、裁判に長時間かかることや多額の費用が必要など、多くの問題点が指摘されていました。裁判員裁判では、国民の視点や常識を取り入れ、開かれた裁判を目指しています。
 裁判員は国民の中から抽選で事件ごとに6人が選ばれ、裁判官3人と6名の裁判員で裁判に臨みます。一般の人が裁判に参加するため、長時間拘束することはできません。そのため、裁判が始まる前に論点を整理し、裁判が始まれば短時間での結論を目指します。
 裁判員裁判では、被告人が有罪か無罪かを判断し、有罪であれば刑罰まで決めます。裁判員裁判で、国民が裁判への参加が可能になった半面、死刑判決への不安や、評議内容の非公表など裁判員の心の負担が問題視されています。

《検察審査会》検察審査会は、地方裁判所とその主な支部に設けられています。1947年に始まり、これまでに50万人以上の人が検察審査員として参加し、17万件以上を審査して約1400件を起訴しています。
 検察審査会は、有権者の中からクジで選ばれた11人で構成されます。検察審査会では、検察官が不起訴処分とした判断が妥当だったかを市民の目で審査します。検察審査会で起訴相当と議決した場合、検察官はその事件を再捜査し、3か月以内に起訴、不起訴を判断します。
 起訴しなかった場合、検察審査会は再度調査を行い、その結果、起訴すべきと議決すると、検察官の判断にかかわらず起訴の手続きが取られます。国民の目は、検察官の判断にも向けられているのです。
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