2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ【憲法】

2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ


 【成人年齢の引き下げで何が変わる】
 日本の成人年齢は、1876年(明治9年)以来20歳とされてきました。しかし、2018年の通常国会で、18歳以上を成人とする改正民法が可決・成立し、22年4月から18歳以上が成人となります。近年、国民投票の投票権年齢や公職選挙法の選挙権年齢が相次いで18歳に引き下げられました。これらの政策は、国政上の重大な事項の判断に若者の参加を促すことが大きな目標です。今回の18歳成人についても以前から議論が進められ、世界の趨勢なども考慮しながら今回の結論に至りました。

2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ - 成人年齢が18歳に至る経緯 -
国民投票法改正がきっかけに
 日本の20歳成人は、1876年の太政官布告で、課税や兵役の基準年齢を20歳にしたことに由来しています。そして、1896年に制定された民法で「満20歳をもって成人とす」と規定されました。それ以降、20歳成人が定着して来ましたが、今回、146年振りに改正されることになりました。
 18歳成人成立のきっかけになったのは、憲法改正の是非を問う国民投票法の改正です。この国民投票法は2007年に改正され、国民投票の投票年齢が18歳に引き下げられました。同時に、選挙権年齢や民法上の成人年齢の引き下げについても議論されましたが、各政党の思惑などで国民投票権だけが切り離されて成立しました。
 ただ、附則第3条第1項で「選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成人年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と明記されました。
2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ - 選挙権年齢も18歳以上に引き下げ -
 国民投票権の引き下げに続いて、選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法が15年6月に成立し、選挙権年齢も1945年以来70年振りに引き下げられました。このため、16年7月の参議院選挙から18~19歳も投票できるようになりました。公職選挙法は、衆議院や参議院選挙、地方自治体の首長選挙や議員選挙、最高裁判所裁判官の国民審査などに適用されます。18~19歳の若者が、これまで20歳以上の人が持っていた同じ権利を持つことになり、国政に自らの意見を反映させることができるようになりました。
 選挙権年齢が引き下げられて初めて行われた16年7月の参議院選挙で、若者がどのような投票行動をとるか注目を集めました。しかし、18歳の投票率は51・28%、19歳が42・30%で、いずれも全体の54・70%を下回りました。17年10月の衆議院選挙でも、18歳が47・87%、19歳は33・25%で全体の53・68%を下回り、前年の参議院選挙より低下しました。さらに、今年7月に行われた参議院選挙では、18歳が34・68%、19歳が28・05%と全体の48・8%を大きく下回っています。
 選挙権を得た最初の選挙に行かないと、その後、棄権し続ける例が少なくないようです。このため、文部科学省による副教材の配布や、授業で取り上げる高校も増えたようですが、政治的中立の確保が難しく二の足を踏む高校も多いようです。18歳より19歳の投票率が低いのは、大学進学などで引っ越しても住民票を移さない学生が多いのではないかと見られています。大学生として生活する自治体に、住民票を移すという原則の周知が求められます。
2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ - 世界の選挙権年齢の主流は18歳以上 -
 世界の選挙権・成人年齢の主流は18歳以上です。国立国会図書館の調査では、世界の199の国・地域のうち、約9割の176の国・地域が18歳までに選挙権を認めています。G7の国はいずれも18歳であり、G20の国では韓国の19歳や直接選挙権のないサウジアラビアを除いて18歳までに選挙権を認めています。
 世界の投票権年齢の推移をみると、19世紀から20世紀初めにかけてラテンアメリカ諸国が18歳に引き下げ、欧米諸国は70年代を中心に、アジアやアフリカ、カリブの旧植民地諸国は70年代から90年代にかけて選挙権年齢を18歳に引き下げています。
 引き下げの背景として、アメリカやドイツ、フランスなどでは激しい学生運動や兵役の義務などに連動して18歳に引き下げられ、イギリスでは若年層の成熟、政治の活性化など、18歳であっても社会的責任の負担を求めました。発展途上国などでは、時の政府が民主的な政治体制を強調するために引き下げた例も見られます。ロシアなど旧共産圏諸国では、政治教育的な面から欧米諸国より早く実施しています。
 成人年齢については、社会的条件や政治的要因が関係するために国によって異なっています。しかし、現在では選挙権年齢と密接に関連することから、ともに18歳とする国・地域が増えてきています。
2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ - 成人年齢が18歳に至る経緯 -
なぜ、成人年齢を18歳に引き下げた
 憲法改正の是非を問う国民投票の投票権年齢や、公職選挙法の選挙権年齢が相次いで18歳に引き下げられ、国政上の重要な事項の判断について18歳や19歳の若者を大人として扱う政策が進められてきました。同時に、市民生活に関する基本法である民法においても18歳以上を成人として扱い、政治参加や社会参加を促すことで、自らの行動に責任を持つ若者の育成を図ろうという議論が盛んに行われてきました。一方、社会経験が未熟な若者を成人とするのは時期尚早という意見や、未成人には政治や社会問題は馴染まないという反対する意見もありました。
 しかし、世界的に成人年齢を18歳とすることが主流となり、さらに若者の自己決定権の尊重は重要で、積極的な社会参加を促すことになるという認識から引き下げられることになりました。今回の成人年齢の引き下げで、07年から始まった「大人」への基準変更は終着点に到達しました。
2022年4月から、成人年齢を18歳に引き下げ - 民法自体の改正に伴って関連法も改正 -
 改正民法では、民法自体の改正と年齢要件に関連する22の法律が改正されました。
 民法自体の改正の要点は、成人年齢を18歳に引き下げる、婚姻が可能になる年齢を男女とも18歳にする、養子を迎えることができる養親年齢を、成年に達した者から20歳に達した者に改正するという三点です。具体的には、以下の通りです。
 民法が定める成人年齢とは、一人で契約できる年齢という意味と、父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。このため18歳になると、携帯電話を契約する、一人暮らしのために部屋を借りる、クレジットカードを作る、ローンを組んで高額商品の購入などが、親の同意なくできるようになります。現在の民法では、未成年者が親の同意なく行った契約は、後から取り消すことができる規定がありました。しかし、成人年齢の引き下げ以降は18歳~19歳には適用されません。このためローンによる多重債務や、悪質商法の被害の増加が心配されています。
 これまで婚姻適齢を男性18歳以上、女性16歳以上と異なる年齢を設定していましたが、改正法で男女の区別をなくして18歳以上に統一しました。昔は女性の結婚年齢が早かったためにこのような規定になっており、現在では不合理な規定であることは間違いありません。
 また、養親となる要件として、成人に達した者と規定していますが、このままでは成人年齢の引き下げで自動的に18歳から養親になってしまいます。養親になることの責任の重大さや、諸外国の傾向などを考慮して20歳の要件を維持しています。

- 引き下げられる法律、20歳を維持する法律 -
 民法以外にも「成人」「未成人」といった年齢要件を記した法律も数多くあり、これらの法律は条文の表現は変えずに適用年齢を20歳から18歳に変更されます。例として旅券法の改正で、10年パスポートの取得年齢が18歳以上に引き下げられます。また国籍法の改正で、帰化申請の年齢要件が18歳以上に引き下げられます。この他、性同一障害特例法の改正で性別変更の申請が18歳から可能になるなど、成人年齢の引き下げで多くの法律が改正されます。
 一方、競馬や競輪、競艇、オートレースといった公営ギャンブルは、現行法では未成年者の購入を禁止していますが、改正後も「20歳未満の者」と現行の規制を維持しています。飲酒や喫煙については、現行法で「20歳」を年齢要件にしているので、自動的に引き下げの対象になりません。

- 18歳引き下げで成人式はどうなる -
 成人式の時期や在り方などについては、法律による定めはなく各自治体の判断で実施されています。多くの自治体では1月の成人の日前後に、20歳を対象に実施されています。成人年齢が18歳に引き下げられると、受験シーズンと重なり成人式どころではないという人もいるでしょう。また、成人式のあとの祝賀会や同窓会での飲酒は禁止になります。
 法務省では、関係各省庁と分科会を作って関係者の意見や各自治体の検討状況を取りまとめ、各自治体に成人式の在り方についての情報を発信していく方針です。こうした情報を受けて居住する自治体がどのように判断するか見守っていきましょう。いずれにしても若者が参加しやすく、意義ある成人式でありたいものです。

- 少年法の適用年齢はどうなる -
 現在、少年法の適用年齢を成人年齢の引き下げに合わせて、18歳未満に引き下げるかどうか、法曹三者(弁護士・検察官・裁判官)や学者で作る法制審議会で議論されています。
 少年が起こした事件は家庭裁判所に送られ、少年審判で少年の立ち直りの手助けすることを目的に少年院への送致や、保護観察処分で指導・監督できる制度を整えています。これに対して成人は検察庁に送られ、起訴されると刑事裁判を受け、実刑ならば刑務所で刑に服します。しかし、大人が起こした事件のすべてが起訴されて裁判を受けるわけではなく、軽い事件を中心に半分以上が起訴猶予や不起訴になっています。
 もし、少年法の適用が18歳以上になると、事件を起こした若者のうち半数以上が起訴されずに社会に戻されます。日本弁護士連合会などは、少年が20歳以上と同じ刑事裁判を受けると、立ち直りに必要な教育を受ける機会を失うとして、少年法の引き下げに反対しています。
 社会生活を営む上で地域の安全は絶対条件です。このため、法律上の統一という形式論を優先するのではなく、実態を踏まえて個別に柔軟な対応が求められています。
バナー
デジタル新聞

企画特集

注目の職業特集

  • 歯科技工士
    歯科技工士 歯科技工士はこんな人 歯の治療に使う義歯などを作ったり加工や修理な
  • 歯科衛生士
    歯科衛生士 歯科衛生士はこんな人 歯科医師の診療の補助や歯科保険指導をする仕事
  • 診療放射線技師
    診療放射線技師 診療放射線技師はこんな人 治療やレントゲン撮影など医療目的の放射線
  • 臨床工学技士
    臨床工学技士 臨床工学技士はこんな人 病院で使われる高度な医療機器の操作や点検・

[PR] イチオシ情報

媒体資料・広告掲載について