日本の伝統芸、 匠(たくみ)の技を極める 人間国宝とは?【文化】

日本の伝統芸、 匠(たくみ)の技を極める 人間国宝とは?


後継者がいなくて失われていく伝統の芸や技(わざ)を守ろうと、無形文化財の保護が叫ばれています。国が指定する重要無形文化財を、文字通り体を張ってその保持に努めているのが人間国宝です。長い歴史と伝統にはぐくまれてきた無形の文化財を考えてみましょう。

日本の伝統芸、 匠(たくみ)の技を極める 人間国宝とは? - 重要無形文化財を保持している人間国宝 -
 歴史的な建造物や貴重な工芸品などで国宝と呼ばれる作品をよく見聞きしますが、人間の国宝というのはどういうことでしょうか。
 古い寺院や仏像など、目に見える価値ある文化財を有形文化財といいます。これに対して伝統の芸や、工芸品を生み出す技術のような、目に見えず形のない文化財を無形文化財といいます。
 無形文化財の中でも、国がとくに貴重な文化財と指定したものを重要無形文化財といい、この芸や技術を保持している個人を人間国宝と呼んでいます。
日本の伝統芸、 匠(たくみ)の技を極める 人間国宝とは? - 1950年に文化財保護法制定、75年に大きく改正 -
 そもそも文化財というのはどういうものでしょうか。
 1950年に文化財保護法が制定されて、「歴史上、学術上(芸術上、鑑賞上)価値の高い文化」を文化財と呼ぶようになりました。
 そして、1975年に文化財保護法が大きく改正され、「文化財」は有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物などに分類されました。
 有形文化財は建造物や絵画、古文書、工芸品などで、無形文化財は演劇や音楽、工芸技術などです。民俗文化財は各地の衣食住や信仰、年中行事などで、記念物というのは古墳やお城、庭園や動植物など鑑賞上、学術的に価値あるものをさします。
 このほか、地域の風土によって形成された貴重な景観や暮らしの文化的景観。周囲の環境と一体をなしている価値ある伝統的な建造物群の伝統的建造物群があります。

- 国宝建造物は217件、国宝美術工芸品は868件 -
 文化財保護法では、とくに重要な文化財を、重要文化財、重要無形文化財、重要有形(無形)民俗文化財に。また、記念物の中で重要なものを史跡・名勝・天然記念物に指定して保存(保護)に努めています。
 そして、国が指定した重要文化財の中で、国民の宝であると国が指定したものが国宝です。2012年現在、建造物が217件(265棟)、美術工芸品が868件が国宝に指定されています。

- 昨年7月、新たに4人の人間国宝が選ばれた -
 無形文化財は芸能分野と工芸技術分野に分かれます。このうち芸能分野では、雅楽、能楽、文楽、歌舞伎、組踊り、音楽、舞踊、演芸の8つの種別に分かれます。
 工芸技術の分野では、陶芸、染織、漆芸、金工、刀剣、木竹工、人形、手すき和紙、截金などがあります。
 国が指定した貴重な無形文化財である重要無形文化財の対象は、あくまで無形の「わざ」そのものです。
 伝統芸能や工芸技術が重要無形文化財に指定されると、その「わざ」を高度に体得している個人や団体を保持者、保持団体として認定します。個人で認定(各個認定といいます)された人が人間国宝なのです。
 昨年7月に歌舞伎女形の坂東玉三郎、狂言の4世山本東次郎、木工芸の灰外達夫、竹工芸の藤沼昇の4人が新たに人間国宝に選ばれました。2013年2月1日現在、人間国宝は113人で平均年齢は78歳です。亡くなった人を含めると累計で336人となります。

- 歌舞伎の起源は1603年の出雲阿国の「念仏踊り」 -
 新しく人間国宝となった5代目坂東玉三郎は、有名な歌舞伎の女形ですが、歌舞伎そのものは江戸時代初期に生まれた民衆演劇です。
 起源は1603年ごろ、京都の四条河原で出雲阿国が踊った「念仏踊り」だといわれています。その後、先行する芸能を吸収して独自の舞台芸術として発展を遂げました。
 江戸幕府の時、風紀が乱れるとの理由で女性が舞台に上がることを禁じたため、姫や老婆の役も男が演じる「野郎歌舞伎」の様式が現在まで続いています。

- 能が幽玄美の歌舞・悲劇なのに対し、狂言は庶民の科白・喜劇 -
 狂言で人間国宝に認定された山本東次郎さんは、品格を重んじる大蔵流山本家の芸風を守っています。
 狂言は能との関係が深く、能・狂言を併せて「能楽」といいます。起源は奈良時代に唐から渡来した散楽で、平安時代には猿楽と呼ばれ、鎌倉時代に真面目な歌舞劇の能と、滑稽な科白(せりふ)の狂言に分化しました。
 室町時代に、世阿弥らによって猿楽の能がほぼ現在に近い形で整備され、狂言も猿楽の一座に組み込まれて演劇としての形態を整えていきました。

- 茶の湯とともに発展した竹工芸、渡来人によって発達した木工芸 -
 同じく人間国宝に認定された藤沼昇さんの竹工芸は、日本では豊富な素材に恵まれて早くから発達しました。奈良時代に唐の技法が導入され、中世には茶の湯の流行とともにわが国独特の作風を生み出していきました。
 さらに、人間国宝に認定された灰外達夫さんの木工芸は、日本では弥生時代の鉄製工具の普及や、古墳時代以降の大陸からの技術者の渡来などによって急速に発展しました。

- 貴重な芸や技を保持する人間国宝はこうして決まる -
 人間国宝というのは通称で、正式には「重要無形文化財保持者」といい、後世に受け継がれていくべき貴重な伝統芸や技を持つ人が優先して選ばれます。
 文部科学省の学識経験者で構成する文化審議会で、年に1~2回それぞれの分野で国宝にふさわしい人物を話し合って決め、文部科学大臣に答申します。
 よく知られる人間国宝では、1996年に上方落語で初めて桂米朝さんが認定されました。落語界では柳家小さんさんに続く人間国宝です。
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