日本人名のローマ字表記が「姓→名」の順へ【文化】
【東京五輪に向け、表記の統一は浸透するか】
政府は今年1月から、公文書に日本人の氏名をローマ表記する際、特別な事情がない限り「姓→名」の順とすることを決めました。また姓を明確に区別させる場合は、姓をすべて大文字で表記するとしています。
東京五輪を控え、電光掲示板やテレビ放送などで日本人名の表記を統一して、世界にアピールしたいという思いがあります。これまで、名前のローマ字表記は、名刺やクレジットカードなどは「名→姓」の順が一般的で、対応はばらばらでした。名前のローマ字表記の統一は浸透するのでしょうか。
- パスポートはすべて大文字で「姓→名」の順 -
皆さんは自分の名前をローマ字で書く場合、多くは「名→姓」の順とするのではないでしょうか。ビジネスの世界で使われる名刺のローマ字表記やクレジットカードの印字などでも「名→姓」の順が一般的です。
一方、パスポートはすべて大文字で「姓→名」の順に表記されているなど、ローマ字表記への対応はバラバラです。
日本人名のローマ字表記をこれまでの主流だった西洋式の「名→姓」から、日本名本来の「姓→名」の順に変更する政府の考えは、2000年に文部科学大臣の諮問機関である国語審議会答申で明らかにされました。
皆さんは自分の名前をローマ字で書く場合、多くは「名→姓」の順とするのではないでしょうか。ビジネスの世界で使われる名刺のローマ字表記やクレジットカードの印字などでも「名→姓」の順が一般的です。
一方、パスポートはすべて大文字で「姓→名」の順に表記されているなど、ローマ字表記への対応はバラバラです。
日本人名のローマ字表記をこれまでの主流だった西洋式の「名→姓」から、日本名本来の「姓→名」の順に変更する政府の考えは、2000年に文部科学大臣の諮問機関である国語審議会答申で明らかにされました。
- 昨年10月、「姓→名」の順で表記を中央省庁で申し合わせ -
2000年12月の第22期国語審議会がまとめた「国際社会に対応する日本語の在り方」(案)では、言語や文化の多様性を人類全体が意識し、生かしていくべきであるとの立場から、一般的には各々の人名固有の形式が生きる形で紹介・記述することが望ましいと述べています。そして日本人のローマ字による名前の表記は、「姓→名」の順が望ましいとしています。
これを受けて当時文化庁が、政府機関や都道府県、大学、新聞・放送・出版業界に対応を求め、2014年頃から中学校の英語教科書は「姓→名」順の表記になりました。それでも名前のローマ字表記は「名→姓」の順が一般的で、「姓→名」の順は実際にはほとんど浸透しませんでした。
東京五輪開催を控えて政府は昨年10月、改めてローマ字による「姓→名」順の表記を中央省庁で申し合わせ、民間にも呼び掛けています。
- 「名→姓」順のローマ字表記は鹿鳴館時代から -
人名表記に国際基準はありませんが、現在世界196カ国の中でほとんどの国は「名→姓」の順で表記しています。
中国や韓国は日本と同じく通常名前は「姓→名」と記し、ローマ字表記も「姓→名」の順が一般的です。アジアの国ではヴェトナムが一般的に「姓→ミドルネーム→名」の順で表記しています。このほか東欧のハンガリーが「姓→名」の順で表記しています。
漢字文化圏である日本がローマ字表記で西洋式の「名→姓」の順となったのは、明治時代の欧化主義の名残だといわれています。
国内で最も古い英語表記の公的文書とされるのは、幕末の日米和親条約(1854年)で、日本人通訳名がローマ字で「姓→名」で記されました。しかし、明治以降に欧化主義が始まった鹿鳴館時代(1883〜90年)から、「名→姓」が急速に浸透していったといわれます。
「名→姓」順のローマ字表記は、1900年代前後に英語教科書にも採用され、公教育を通じて日本社会に定着していきました。そこには、『西洋への憧れ』という文化的な長い歴史が息づいているといえます。
- 「姓→名」の表記では姓を大文字にして相手に配慮 -
名前は個人のアイデンティティー(自己認識)の問題で、どう名乗るかは個人の自由ですが、おおよその指針は必要だと思われます。
名前をローマ字表記してアピールする対象は主として外国人です。したがってローマ字表記では、相手の文化や社会事情などに配慮する必要があります。
欧米をはじめ国際社会の多くは自分の氏名を「名→姓」の順で表記しています。日本人もこれまで多くが「名→姓」の順でローマ字表記してきたので、表記の変更には相手への配慮も必要でしょう。
今回、姓をすべて大文字にすることで、これまでの「名→姓」から「姓→名」に表記が変わっても、相手が誤解することのないように考慮しています。
【ローマ字の種類】
- ヘボン式と訓令式の違い -
ローマ字には大きくヘボン式と訓令式があります。ヘボン式というのは、1867年に米国出身の宣教師ジェームス・カーチス・ヘボンによって考案されたもので、海外の人が日本語に近い発音をするために作られました。パスポートではヘボン式で表記するよう定められています。
一方の訓令式は、皆さんの多くが小学校で習ったローマ字で、1937年に文部省令で制定されました。日本人が日本語の並びに近くなるように作られたもので、主にJRの駅名表記等に使われています。
「た・ち・つ・て・と」をヘボン式で表すと、「TA・CHI・TSU・TE・TO」となり、訓令式だと、「TA・TI・TU・TE・TO」となります。
名前の読み方が海外の人に正しく発音してもらうには、訓令式ではなくヘボン式で作成した方がいいでしょう。なお、ヘボン式でも訓令式でもないローマ字というのも存在します。マツダ自動車のMazdaや、保険会社ニッセイのNissay、東レのTORAYなどは、ヘボン式にも訓令式にもあてはまりません。
2000年12月の第22期国語審議会がまとめた「国際社会に対応する日本語の在り方」(案)では、言語や文化の多様性を人類全体が意識し、生かしていくべきであるとの立場から、一般的には各々の人名固有の形式が生きる形で紹介・記述することが望ましいと述べています。そして日本人のローマ字による名前の表記は、「姓→名」の順が望ましいとしています。
これを受けて当時文化庁が、政府機関や都道府県、大学、新聞・放送・出版業界に対応を求め、2014年頃から中学校の英語教科書は「姓→名」順の表記になりました。それでも名前のローマ字表記は「名→姓」の順が一般的で、「姓→名」の順は実際にはほとんど浸透しませんでした。
東京五輪開催を控えて政府は昨年10月、改めてローマ字による「姓→名」順の表記を中央省庁で申し合わせ、民間にも呼び掛けています。
- 「名→姓」順のローマ字表記は鹿鳴館時代から -
人名表記に国際基準はありませんが、現在世界196カ国の中でほとんどの国は「名→姓」の順で表記しています。
中国や韓国は日本と同じく通常名前は「姓→名」と記し、ローマ字表記も「姓→名」の順が一般的です。アジアの国ではヴェトナムが一般的に「姓→ミドルネーム→名」の順で表記しています。このほか東欧のハンガリーが「姓→名」の順で表記しています。
漢字文化圏である日本がローマ字表記で西洋式の「名→姓」の順となったのは、明治時代の欧化主義の名残だといわれています。
国内で最も古い英語表記の公的文書とされるのは、幕末の日米和親条約(1854年)で、日本人通訳名がローマ字で「姓→名」で記されました。しかし、明治以降に欧化主義が始まった鹿鳴館時代(1883〜90年)から、「名→姓」が急速に浸透していったといわれます。
「名→姓」順のローマ字表記は、1900年代前後に英語教科書にも採用され、公教育を通じて日本社会に定着していきました。そこには、『西洋への憧れ』という文化的な長い歴史が息づいているといえます。
- 「姓→名」の表記では姓を大文字にして相手に配慮 -
名前は個人のアイデンティティー(自己認識)の問題で、どう名乗るかは個人の自由ですが、おおよその指針は必要だと思われます。
名前をローマ字表記してアピールする対象は主として外国人です。したがってローマ字表記では、相手の文化や社会事情などに配慮する必要があります。
欧米をはじめ国際社会の多くは自分の氏名を「名→姓」の順で表記しています。日本人もこれまで多くが「名→姓」の順でローマ字表記してきたので、表記の変更には相手への配慮も必要でしょう。
今回、姓をすべて大文字にすることで、これまでの「名→姓」から「姓→名」に表記が変わっても、相手が誤解することのないように考慮しています。
【ローマ字の種類】
- ヘボン式と訓令式の違い -
ローマ字には大きくヘボン式と訓令式があります。ヘボン式というのは、1867年に米国出身の宣教師ジェームス・カーチス・ヘボンによって考案されたもので、海外の人が日本語に近い発音をするために作られました。パスポートではヘボン式で表記するよう定められています。
一方の訓令式は、皆さんの多くが小学校で習ったローマ字で、1937年に文部省令で制定されました。日本人が日本語の並びに近くなるように作られたもので、主にJRの駅名表記等に使われています。
「た・ち・つ・て・と」をヘボン式で表すと、「TA・CHI・TSU・TE・TO」となり、訓令式だと、「TA・TI・TU・TE・TO」となります。
名前の読み方が海外の人に正しく発音してもらうには、訓令式ではなくヘボン式で作成した方がいいでしょう。なお、ヘボン式でも訓令式でもないローマ字というのも存在します。マツダ自動車のMazdaや、保険会社ニッセイのNissay、東レのTORAYなどは、ヘボン式にも訓令式にもあてはまりません。