クールジャパンを牽引する日本のアニメ【文化】

クールジャパンを牽引する日本のアニメ


【世界の若者が共鳴するアニメ文化を考える】
 クールジャパンを牽引する日本のアニメは、日本国内のみならず世界各国で若い世代を中心に人気を集めています。アニメ作品のモデルとなった土地や建物を訪れるアニメツーリズムが、「聖地巡礼」と呼ばれて海外からのインバウンド誘致に貢献しています。
 日本のアニメはポップカルチャーの代表選手として世界の多くの若者に慕われ、一段と存在感を高めています。京都アニメーションの放火殺人事件から間もなく1年を迎えますが、改めて日本のアニメ文化の魅力と今後を展望してみました。

クールジャパンを牽引する日本のアニメ - 京都アニメーション放火事件から間もなく1年 -
 昨年7月18日に京都市伏見区の京都アニメーション(京アニ)第1スタジオが放火され、社員69人が被害に遭い、うち36人が亡くなりました。
 「涼宮ハルヒの憂鬱」や「らき☆すた」、「けいおん」、「ツルネ=風舞高校弓道部」などの人気アニメで知られる京アニは、世界的なアニメーターを育み日本が誇るアニメ文化の一翼を担ってきました。
 米国アップル社のティム・クック最高経営責任者(CEO)は、「京都アニメーションは世界で最も才能のあるアニメーターやドリーマーの本拠地」とし、「京アニのアーチストたちは傑作を通して世代を超えて世界中に喜びを広めてきた」とツイートして京アニの犠牲者を悼みました。また、国内外から33億円を超える義援金が寄せられました。

- 初のTVアニメは1963年の「鉄腕アトム」 -
 日本にアニメ映画の技術が渡ってきたのは、今から120年以上前の1896年(明治29年)といわれます。そして漫画家の下川凹天が日本初の国産アニメ作品を公開し、同じく漫画家の幸内純一がアニメ「なまくら刀」(フィルムが現存している)を公開した1917年を日本アニメ誕生の年としています。
 戦後東映が1958年に、日本初のカラー長編アニメ映画「白蛇伝」を製作しました。61年に手塚治虫が「虫プロダクション」を設立し、63年に日本で最初の連続テレビアニメ「鉄腕アトム」を製作しました。翌64年には長編アニメ映画「鉄腕アトム 宇宙の勇者」を制作しています。
 当時高校生だったジブリの創始者、宮崎駿氏は東映の「白蛇伝」に感銘を受けてアニメーターを志したといわれます。

- 「千と千尋の神隠し」が米アカデミー賞長編アニメ賞受賞 -
 宮崎駿氏は東映のアニメーターを経て1985年に独立し、東京都武蔵野市にスタジオジブリを設立しました。以後、スタジオジブリ第1作の「天空の城ラピュタ」(1986年)を皮切りに、「となりのトトロ」(88年)、「魔女の宅急便」(89年)、「紅の豚」(92年)の監督を務めます。
 1997年には大ヒット作「もののけ姫」を制作。2001年の「千と千尋の神隠し」は興行収入308億円を記録。この映画で03年に米国アカデミー賞長編アニメ賞を受賞しました。
 続いて04年に「ハウルの動く城」、08年に「崖の上のポニョ」、13年の「風立ちぬ」と続きます。
 クールジャパンの代表的なコンテンツである日本のアニメは、魅力的なキャラクターとストーリー、美しい映像、独特の世界観などが海外の人々から絶賛を浴びています。
 プロサッカー選手だったジダンは、ヨーロッパでも放映された「キャプテン翼」見て、サッカー選手を志したといわれます。
クールジャパンを牽引する日本のアニメ - 日本のアニメ市場規模は2兆円を超える -
 日本のアニメが海外で注目を集めるようになったのは、日本の「鉄腕アトム」が1964年に全米で「アストロボーイ」として公開されたのがきっかけだといわれます。
 アメリカの動画配信会社、ネットフリックスなどの配信サービスが牽引役となって、昨年は日本アニメの存在感が世界で一段と高まった年となりました。
 ネットフリックスは日本のアニメ制作会社のアニマなどと提携し、今春から「攻殻機動隊SAC-2045」の配信を開始しました。このほか、AT&T傘下のワーナーメディアが「となりのトトロ」など21のスタジオジブリ作品を米国内で配信します。
 国内では社会現象を引き起こした「君の名は。」を手掛けた新海誠監督の新作アニメ「天気の子」が、140億円を超える興行収入を記録しました。
 国内外で日本のアニメの存在感が高まる中で、産業としてのアニメ市場も拡大していきました。日本動画協会によると、日本のアニメーション市場規模は、2017年に前年比8%増の2兆1527億円となり、初めて2兆円を超えました。

- 現代マンガの源流は「浮世絵」の庶民性 -
 日本が世界をリードする「マンガ・アニメ文化」を育んできた土壌には、日本絵画の特質と伝統が深く関わっているようです。
 日本では平安時代に、線描と色彩を巧みに組み合わせた「大和絵」が発達し、それが時間を追って物語の絵を連想させる「巻絵」となりました。
 やがて「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵巻」「源氏物語絵巻」の三大絵巻が源流となって、後の「鳥獣戯画」や「北斎漫画」といわれる漫画的技法が形作られました。
 さらに、江戸時代の「浮世絵」が現代マンガの源流を成しています。西洋の教会画や宮廷画とは異なり、「役者絵」や「美人画」「風景画」など庶民的、大衆的なテーマを扱っています。
 しかも浮世絵はプリント(版画)のため量産が効きます。そこには近代の市民社会を超えた現代の大衆社会のイメージが感じられ、日本の漫画文化はこれを基盤にしているといわれます。

- 世界から高く評価されるジブリスタジオ作品 -
 1960年代前半に「鉄腕アトム」が全米でTV放映されて日本のアニメが海外で注目されましたが、その後スタジオジブリが生み出した数々のアニメ映画によって、日本のアニメ文化は世界で高く評価されるようになりました。
 海外で人気を集める日本のアニメですが、ランキングで上位に並ぶのは忍者が主人公の「NARUTO」、ハガレンの愛称で親しまれる「鋼の錬金術師」、「ドラゴンボール」、SFアニメの「新世紀エヴァンゲリオン」や「AKIRA」などです。
 今や一つの原作からマンガ、アニメ、ゲーム、キャラクター商品などメディアミックス戦略でさまざまなジャンルに拡大し、子供から大人まで世代を超えた世界的な知的財産となっています。

- アニメ聖地を巡るアニメツーリズムが人気 -
 日本のアニメや漫画文化のファンが、作品の舞台となった場所を巡る聖地巡礼(アニメツーリズム)も盛んに行われています。
 聖地巡礼を中心としたアニメツーリズムが外国人観光客に人気を集め、インバウンド(訪日観光客)誘致の重要な要素となっています。
 2008年に聖地巡礼の火付け役となった「らき☆すた」は、埼玉県久喜市や市内の鷺宮神社などに多くの観光客や参拝客が訪れました。また、「スラムダンク」のオープニングのロケ地となった江ノ電の「鎌倉高校前駅」周辺は、中華圏の観光客を中心に人気を集めました。
 「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」の埼玉県秩父や、世界125以上の国や地域で上映されたアニメ映画「君の名は。」の飛騨高山は、世界各国から多くの観光客が訪れて地域振興に貢献しました。
クールジャパンを牽引する日本のアニメ - 「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を選定 -
 2016年に自治体や出版会社、旅行会社、運輸会社など約50の団体が集まってアニメツーリズム協会が設立され、翌年の17年から毎年「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を選定して発表しています。
 昨年9月に発表された「アニメ聖地88」の2020年版では、「ラブライブ!サンシャイン!!」(函館市)、「色づく世界の明日から」(長崎市)などが新たに加わっています。
 聖地巡礼に訪れる外国人観光客はアニメグッズ、ファングッズを大量に購入する傾向があります。またアニメキャラクターの衣装を着てファン交流や写真撮影を楽しむコスプレイベントも、世界のアニメファンが日本を訪れる理由の一つになっています。

【日本アニメの今後】
- 動画配信で世界中が同時に人気アニメを楽しめる -
 100年以上の歴史を持つ日本のアニメですが、制作現場ではさまざまな課題が指摘されています。制作本数の増加に伴うアニメーターの厳しい労働環境や低賃金の問題などです。アニメ業界はスタジオや作り手が東京に集中し、多くの部分で外注会社やフリーランスのアニメーターに依存しています。
 アニメーターの正社員化や育成、賃金水準の向上、雇用環境の改善など、質の高いアニメ作品の制作に向けた働き方改革が急がれます。この点、スタジオが放火された「京アニ」は地方に拠点を構え、スタッフは全て自社で雇用してアニメーターの待遇を改善し、安定した働きに支えられた作品が高い評価を得ています。
 また、これまでのTVアニメはTV局や広告代理店、スポンサー、アニメ制作会社が共同で番組を企画するか、あるいはアニメ制作会社の企画を採用する形で進められていました。これに対し、1995年にTV放映された「新世紀エヴァンゲリオン」のヒットを機に、制作委員会方式が急速に普及しました。これは、TV局、広告代理店、おもちゃメーカーなど著作権ビジネスを目的とした企業が一つの作品制作に共同出資する方式です。従来アニメ制作会社に帰属していた作品の著作権は、出資者による共同保有となります。
 インターネットが普及した今日、動画配信サービスの拡大によって世界中のアニメファンが、ほぼ同時に人気アニメを楽しめるようになりました。そしてキャラクターグッズや各種イベント、アニメツーリズムなどマルチにアニメ文化を堪能できるようになりました。
クールジャパンを牽引する日本のアニメ 【日本のポップカルチャー】
- 日本の魅力を諸外国に発信する重要なツール -
 アニメやマンガをはじめとする日本のポップカルチャーは、国内だけでなく海外でも若い世代を中心に人気を集めています。ポップカルチャーは大衆向けの文化全般を表しますが、現在では「訴求力が高く、等身大の現代日本を伝える文化」と認識されています。
 日本には着物や華道、茶道、歌舞伎、武道など世界に誇る伝統文化が数多くあります。こうした伝統文化だけでなくより現代的な日本文化にも注目が集まり、若い世代の圧倒的な支持を得ているのが日本の「ポップカルチャー」です。
 具体的にはマンガ、アニメ、映画、ゲーム、ライトノベル、ポピュラー音楽などを指し、世界各国で日本のポップカルチャーの魅力を発信するさまざまなイベントが行われています。2007年に国際漫画賞が創設され、世界コスプレサミット(WCS)が2003年から名古屋で開かれています。19年のWCSでは世界40カ国からコスプレーヤーが集まりました。
 世界各地の在外公館などが主催するポップカルチャーによる文化事業の一つに「アニメ文化大使」があります。08年にアニメ作品「ドラえもん」がアニメ文化大使に就任し、ドラえもん映画の上映やアニメ関係者による講演会などのイベントを開催しています。
 外務省は日本のポップカルチャーを、「日本と日本の文化・言語に対する関心につながる入り口、日本の魅力を諸外国に発信する重要なツール」と位置付けています。
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