グリーン・ニューディールは世界を救うか!? - 今、待望の新エネルギー - 【環境】

グリーン・ニューディールは世界を救うか!? - 今、待望の新エネルギー - 

100年に一度といわれる大不況から世界経済を救う切り札として今、グリーン・ニューディールへの期待が高まっています。オバマ米大統領がアメリカ再生の目玉プロジェクトとして提唱したグリーン・ニューディールですが、わが国でも麻生首相が「日本版グリーン・ニューディール」を策定。環境関連事業への投資を拡大して、今後約5年間で100兆円の市場と新たに80万人以上の雇用を生み出すことを目標に掲げています。このグリーン・ニューディールとは一体どういうものなのでしょうか。そしてそれは疲弊し切った世界経済の救世主となるのでしょうか。

グリーン・ニューディールは世界を救うか!? - 今、待望の新エネルギー -  【地球温暖化防止と経済活性化を】
- 米国再生へオバマ大統領が提唱 - 

 グリーン・ニューディールをひとことでいえば、地球温暖化防止をはじめとした、地球環境保全のためのさまざまな取組みや関係する事業に投資を集中して景気を刺激し、環境対策と経済活性化を両立させようというものです。
 一般に景気が落ち込むと、道路やダムなどの公共事業に投資を拡大して雇用の拡大、景気の浮揚を図ってきました。これに対して環境保全や地球温暖化防止事業を拡大していくことで、環境と経済の危機を同時に克服しようという「一石二鳥」の、21世紀版ニューディール政策ともいうべきものです。
グリーン・ニューディールの語源は、かつて世界恐慌に見舞われた1930年代、当時のフランクリン・ルーズベルト米大統領が打ち出した、テネシー川流域開発などの公共工事を中心とした「ニューディール(新規まき直し)政策」になぞらえたものです。(用語解説1)オバマ米大統領は、大統領選挙戦を戦っていた昨年八月に、「グリーンジョブ」というタイトルのグリーン・ニューディール政策を提唱しました。(写真1)
 これによりますと、地球温暖化防止のため新エネルギーの開発や低炭素社会(炭酸ガスの排出を抑えた社会)を構築するため、向こう10年間で1500億ドル(約14兆円)の巨費を投じて、新たに500万人の雇用を生み出す、とアピールしました。
 さらに、家庭のコンセントから充電できる「プラグイン ハイブリッド自動車」を2015年までに、全米で100万台を普及させ、これをテコに景気回復を図っていこうというものです。

【風力発電、太陽光発電が急拡大】
- 低炭素型産業構造へ転換 - 

 ところで今後グリーン・ニューディール政策では、具体的にどういった投資が行なわれるのでしょうか。
まず太陽光発電や風力発電、地熱発電など脱化石燃料(石油や天然ガスを使わない)による風力や太陽光など自然の再生可能エネルギーの開発・普及。(用語解説2)さらに間伐材や稲わら、麦わら、廃材など食用にしない植物を原料としたバイオ燃料の開発・普及が挙げられます。
 さらに、電気自動車や燃料自動車など次世代エコカーの開発・普及。広範な緑化や環境浄化、水や大気の循環利用、資源のリサイクルなどのグリーン産業の振興。
 そしてこうした環境関連ビジネスや事業で働く人達(グリーン雇用)の増大につながる資金の充実。そして究極的には地球の脱温暖化のための低炭素(炭酸ガスの排出を抑えた)産業構造への転換を図る巨大な投資が挙げられます。
 このグリーン・ニューディールは、とても一つの国単位で実施できるものではありません。世界が地球規模で同時に展開することが求められているのです。そして今、オバマ大統領が提唱して話題を集めているグリーン・ニューディールは、未曾有の大不況下にあえぐ各国政府や経済界に大きな期待をもって迎え入れられつつあります。
 わが国のマーケット調査会社の富士経済の調査によりますと、エネルギー・環境政策に重点投資を行なうオバマ米大統領のグリーン・ニューディール構想によって、世界の主要27カ国の風力発電の能力は、2008年の約1億1000万キロワットから約4.2倍の約4億7000万キロワットに拡大するだろうと予測しています。
 とくに米国では約6.1倍に拡大し、2020年には風力発電が太陽光発電などの新エネルギーマーケットの60%近くまで上昇すると見ています。風力発電は導入コストが安いため中国も約5.5倍に成長し、ベトナムやタイといった東南アジア諸国でも高い伸びを占めるだろうと観測しています。(写真2)
 また、太陽光発電も08年の約1000万キロワットから20年には約4.8倍の4800万キロワットにまで拡大。中国では約12倍もの急成長が見込まれています。その他アジアではインド、韓国で高い成長性が見込まれています。(写真3)
グリーン・ニューディールは世界を救うか!? - 今、待望の新エネルギー -  【低炭素型産業構造へ転換】
- 脱化石燃料社会の構築目指す - 

 わが国でも、麻生首相の日本版グリーン・ニューディール構想では、省エネ家電や電気自動車、燃料電池自動車などの次世代エコカーの開発・普及をはじめ、太陽光発電や風力発電などの新エネルギーの有効活用へ集中投資することを打ち出しています。(表1)
 環境省の「日本版グリーン・ニューディール構想」によりますと、5年後の日本の環境ビジネス市場を、2006年の70兆円から40%以上増加した100億円に拡大していく方針です。これによってこれらの環境関連事業で働く従業員の数を約140万人規模から、60%近く増やして220万人以上に増やしていくとしています。
 大切なことは、このグリーン・ニューディールは、一国の政府による単なる景気浮揚策や、産業界、経済界による環境関連ビジネスの市場戦略といったようなものではありません。それは地球の温暖化をストップし、人類が今後長期にわたって生き残るために、脱化石燃料社会を構築し、低炭素型産業への構造転換を図るというという壮大な改革プランなのです。(写真4)
 すでに世界各国では、オバマ大統領の登場以前の早くから、グリーン(地球環境保全)投資の拡大を着々と進めてきてきました。オバマ大統領の誕生を機に、一気にグリーン・ニューディール旋風が捲き起こったといえるでしょう。
 国連環境計画(UNEP)の報告書によると、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの投資額は、1998年の100億ドルから2007年には6.6倍の660億円へ増大しました。これが20年に3400億ドルを超え、30年には6300億ドルへ膨れ上ると予測しています。
【クリーンな車社会の実現目指す】
- エネルギーは石油から水素へ - 

 事実、グリーン投資(環境関連事業への資金の投入)は、確かに新たな雇用を生みだしてきました。UNEPの報告書では、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの産業分野に限っても、ここ数年で世界で230万人が職にありつくことができたといわれます。また、太陽光発電の普及が著しいドイツでは、一国で新たに26万人が環境ビジネスの職についています。
 グリーン投資の促進は、低炭素産業への構造変革を促していきます。とくに、日本の環境・エネルギー技術の水準は世界のトップレベルにあり、「脱炭素」にかかわる技術開発は、新たなビジネスチャンスを生み出すタネとして産業界の注目を集めています。
 例えば、自動車業界では電気自動車や水素をエネルギー源とする燃料電池自動車が間もなく本格実用期に入ろうとしています。
 こうした次世代エコカーを実用ベースで走らせるには、全国津々浦々をカバーする充電設備や水素スタンドといった大規模な社会的インフラ条件が整備されなければなりません。
 経済産業省が描いている燃料電池自動車(FCV)と、その燃料である水素エネルギー普及のロードマップ(展開予想図)によりますと、2010年に燃料電池自動車は5万台、水素ステーションは500ヶ所。2030年には1500万台、水素ステーション約8500ヶ所の普及を目論んでいます。
 このロードマップが実現すると、この時点でわが国の車社会は、化石燃料に別れを告げて水素によるクリーンな車社会が到来することになります。(表2)
【植物資源でバイオマス社会へ】
- 今こそクリーンエネルギー革命 - 

 また、植物を原料とした再生可能資源 - バイオマス燃料が、脱石油社会の一翼を担うことになります。世界的な食糧不足と穀物高騰を背景に、わが国では稲わらや間伐材を利用する技術開発を加速させ、耕作を放棄した遊休地を活用した食糧に転用できる燃料用作物の生産計画が、農水省を中心に進行しています。
 バイオマス燃料の一部は、エタノールとしてすでにガソリンの使用量を削減したクリーンエネルギーとして自動車用燃料に実用化されていますが、バイオマス発電としても期待が寄せられています。
 政府は地球温暖化防止策の一環として、バイオマス燃料の生産可能量を2030年ごろに600万キロリットル(原油換算約360万キロリットル)に拡大する方針です。このうち稲わらや麦わらなどで180万から200万キロリットル。間伐材や耕作を放棄した土地を活用して成育させた植物によって、それぞれ200万から220万キロリットルのバイオマス燃料を生産する計画です。
 グリーン・ニューディールは21世紀の、地球の生き残りをかけた壮大なクリーンエネルギー・地球環境革命の要素を秘めていることが見て取れます。
 オバマ米大統領が提唱したグリーン・ニューディールが世界の経済と地球を救うことができるのか。それは私たち一人ひとりに「何ができるか」が問われる厳粛な、未来への宿題でもあるのです。
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