「環境白書」を読み解こう【環境】

「環境白書」を読み解こう


皆さんは、「循環型社会」と聞いて何を思い浮かべますか?あまり聞き慣れない言葉だとは思いますが、今回は、日本が進めているその循環型社会づくりに向けた取組みについて、ご紹介をしていきたいと思います。
(環境省企画調査室)

「環境白書」を読み解こう - 循環型社会とは? -
 循環型社会とはどのような社会でしょうか。図1で循環型社会の姿を示していますが、資源採取、生産、流通、消費、廃棄などの社会経済活動の全段階を通じて、ごみ等をできるだけ発生させないようにし(Reduce:リデュース)、一度使われた物はくり返し再使用し(Reuse:リユース)、発生したごみ等は資源に転換して再生利用する(Recycle:リサイクル)、いわゆる3R(スリーアール)の取組みにより、新たに採取する資源をできるだけ少なくした、環境への負荷をできる限り少なくする社会のことをいいます。
 日本は第二次世界大戦後、大きく経済発展を遂げてきましたが、その一方で、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活動を行ってきました。そうした社会では、石油などの天然資源が新たに大量に使われるため、天然資源に限りがあることを考慮すると持続可能な社会とはいえません。そのため、ごみを資源として再び利用するなどして、資源を過度に消費しないで済む持続可能な社会を構築していく必要性が指摘されるようになりました。こうした指摘を踏まえ、新たな資源を大量に使う大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会の代わりとして、できる限り資源を有効に活用していく循環型社会づくりが進められるようになりました。
「環境白書」を読み解こう - 日本の循環型社会に向けた取組み -
 日本では、循環型社会に向けてどのような取組みが進められているのでしょうか。
 日本では、食品や自動車のリサイクルに関する法律など、多くの法律を定めて循環型社会を推進しています。例えば日本では、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食べ物のごみが大量に出ており、それは1日当たりで約4200万人・日分の栄養に相当します。そうした食品のごみをできるだけ出さないようにし、またごみを家畜のえさに利用することなどを進めるため、法律を定めて国として取組みを行っています。こうした法律を通じて、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会である循環型社会を実現することを目指しています。
 また、政府において、循環型社会づくりのための計画を策定して、循環型社会のあるべき姿についてのイメージを示し、循環型社会形成のための数値目標を設定するとともに、国などの取組の方向性を示しています。現在では、平成20年に策定された「第2次循環型社会形成推進基本計画」に基づいて、政府として取組みが進められています。
 以上のように、法律や政府の定める計画などによって、循環型社会の形成が国によって進められています。
「環境白書」を読み解こう - 日本は「循環型社会」に向かっているのか? -
 これまで、法律などによって循環型社会に向けた国による取組みが進められていることを紹介しましたが、では実際に、日本は循環型社会に向かっているのでしょうか。先ほどご紹介した「第2次循環型社会形成推進基本計画」では、物の流れの「入口」、「循環」、「出口」に関する3つの指標(資源生産性、循環利用率、最終処分量)について目標を示しています。これらの指標の状況を見ることで、日本が循環型社会に向かっているかどうかが分かります。
 図2ではこれら3つの指標の推移を示していますが、これによると日本は循環型社会に向けて着実に進んでいるといえます。以下、3つの指標を一つずつ見ていきます。
 まず「入口」に関する指標として「資源生産性」という指標があります。これは、平たく言うと、どれだけ新たな資源を使わずに物を作り出すなどしてお金を稼いでいるかという指標です。従って、この数字は大きければ大きいほど良いといえます。図2の「資源生産性」のグラフを見ると、平成12年度の26.3万円/トンから平成19年度の36.1万円/トンへと改善が見られます。平成27年度における政府の目標として42万円/トンが挙げられていますが、目標に向けて着実に進んでいることが分かります。
 次に「循環」に関する指標として「循環利用率」があります。これは、物などを作る際に使われる資源のうち、どれだけリユース・リサイクルでまかなっているかを表しています。従って、この数字は大きければ大きいほど良いといえます。図2の「循環利用率」のグラフを見ると、平成12年度の10.0%から平成19年度の13.5%へと改善していることが分かります。平成27年度における政府の目標として14~15%が挙げられており、それへ向けて順調に推移していることが分かります。
 最後に「出口」に関する指標として「最終処分量」があります。これは、ごみの埋立量を表しています。最終的に捨てて埋め立ててしまうごみの量は少なければ少ないほど良いので、この数字は、小さければ小さいほど良いと言えます。図2の「最終処分量」のグラフを見てみると、平成12年度の5700万トンから平成19年度の2700万トンと減少傾向にあることが分かります。平成27年度における政府の目標値は2300万トンですが、この目標に向かって、着実に改善が図られてきていることが分かります。
 以上見てきたように、政府が策定した計画において目標が定められている3つの指標によると、日本はこれまで概ね順調に循環型社会の実現に向けて進んできているといえます。しかしながら、同計画に定められた平成27年度における目標を未だ達成したわけではないため、引き続き目標の達成に向け努力をしていくことが求められます。
「環境白書」を読み解こう - 日本と海外との比較 -
 それでは、循環型社会について、日本と海外とを比較してみるとどのようなことがいえるのでしょうか。平成22年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」では、図2で見た資源生産性について主要な国との比較を行っていますので、それに基づいて見ていきたいと思います。
 日本の資源生産性は、環境省の試算では諸外国と比較して優れていることが分かります。図3は各国別に資源生産性を比較したグラフです。資源生産性を比較する際には、それぞれの国がどのような産業で成り立っているかなども考慮する必要がありますが、日本、アメリカ、ドイツなどの主要な先進7か国(G7)との間で比較すると、日本の資源生産性が最も高いことが分かります。また、図3からは近年経済成長が著しい中国などを含むBRICs諸国や、アジアの国々は先進国と比べて資源生産性が低いことが分かります。このように、世界と比較して見ても、日本の循環型社会の実現が進んでいるといえます。
 こうした中、日本では、循環型社会の実現には欠かせない廃棄物処理や3R(リデュース、リユース、リサイクル)などの事業を、アジアなどの他の国々に広め、日本の環境技術で世界に貢献していくこととしています。

- まとめ -
 今回は、「循環型社会」について見てみました。日本では、法律や計画などを作りながら、目標を定めて循環型社会に向けた取組みを進めており、現在のところ順調に目標に向かって進んでいます。しかしながら、未だ政府の目標を達成したわけではないので、引き続き努力が必要です。また、世界と比較した場合、日本の循環型社会の状況は進んでおり、日本の技術を海外に広げていく取組みも進められています。こうした循環型社会に向けた取組みを、国内外において推し進めることで、環境に負荷をかけずに持続可能な社会を世界規模で構築していくことが日本には求められています。
(梅原義裕)
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