新燃岳が52年振りに爆発的噴火【環境】

新燃岳が52年振りに爆発的噴火


 地球は10数枚のプレートで覆われ、日本列島は北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートと呼ばれる4つのプレートが押し合う所に位置しています。つまり、地球の活動を直接反映する地点にあるため、日本には世界の活火山の約7%にあたる108もの活火山があり、マグニチュード6以上の地震の約20%がこの狭い日本に集中しています。
 新燃岳がある霧島連山は、九州南部の宮崎県と鹿児島県の県境に位置しています。この新燃岳が1月26日に52年ぶりに爆発的噴火を起こし、現在(3月末)も終息することなく噴火を繰り返し、周辺の人々は不安な日々を過ごしています。
 日本列島は火山列島・地震列島とも呼ばれ、そこに住む私たちは何時こうした自然災害に遭遇するかも知れません。そのため、火山の噴火や地震などの自然災害について正確な知識を持って冷静に対処しなければなりません。

新燃岳が52年振りに爆発的噴火 【新燃岳が52年ぶりに爆発的噴火】
- 断続的に続く新燃岳の噴火 -
 新燃岳では、1月19日に水蒸気爆発と思われる小規模な噴火が起こり、22日にも同様の噴火を記録しました。そして、26日に本格的なマグマ噴火が起こり、噴煙は1500m上空にまで達しました。翌27日には、中規模の爆発的噴火が発生し、噴石をともなう噴煙は火口から上空2500mにまで上がり、宮崎市や都城市でも火山灰が降り積もりました。
 東京大学地震研究所が28日に行なった上空からの観測で、火口内に直径数10mの溶岩を見つけ、火砕流が500?600m流れたことを確認しました。30日には、気象庁と防災科学研究所が衛星画像を分析し、火口内に蓄積された溶岩が直径500mにまで成長していることが判明しました。
 さらに、2月1日に発生した爆発的噴火で、気象庁機動調査班が火口から3・2㎞離れた所で長径70㎝、短径50㎝という大きな噴石が飛ばされているのを発見し、噴火警戒レベルを3に引き上げました。これ以降も新燃岳の噴火は断続的に続き、まだ終息の気配を見せていません。

- 新燃岳の噴火の歴史 -
 新燃岳の噴火の歴史を振り返ってみましょう。新燃岳は霧島火山群に属し、2万5000年?1万5000年前に形成されました。記録に残されている大きな噴火として、1716年(正徳6年)から1717年に(享保元年)かけて起こった享保噴火があります。噴火は約1年半も断続的に続き、多くの死傷者を出すとともに牛馬などの家畜の焼死、神社仏閣を始めとする家屋の焼失、田畑は厚さ数10㎝もの火山灰に覆われ多大な農業被害を受けました。当時、薩摩藩主だった島津吉貴は、住民の間で広がる噴火に関する流言飛語を禁止しました。当時の人々が、噴火を恐れ慌てふためく様子を伺うことができます。
 1771年(明和8年)にも明和噴火を起こし、1822年(文政4年)の文政噴火では火砕流や土石流が発生し、周辺地域に大きな被害を及ぼしました。
 昭和に入ると、1959年(昭和23年)に噴火を起こし、山頂付近のミヤマキリシマ群落や農作物に大きな被害を与えました。今回の噴火は、この昭和噴火に続く52年ぶりの噴火となったのです。
新燃岳が52年振りに爆発的噴火 - 噴火の噴出物で、噴火様式を左右 -
 火山の噴火とは、地下にあるマグマなどの噴出物を火山から噴き出すことです。噴き出される噴出物の性質によって噴火の規模や様式が変わってきます。
 今回の新燃岳の噴火を、「爆発的噴火」と報道されています。火山の噴火の様式は、爆発時のマグマの流動性や揮発性成分の量に大きく影響されます。マグマの流動性が低く揮発成分が逃げられない場合、噴火時に爆発的な噴火を起こします。浅間山や桜島、そして今回の新燃岳がこうした噴火に相当し「爆発的噴火」と呼ばれています。
 一方、ハワイのキラウエア火山は、火口から日常的に溶岩流を流し続け、ハワイ式噴火ともいわれています。マグマの流動性が低いため揮発性成分が逃げてしまい、大きな爆発を起こすことなく静かに溶岩流を流し続けています。
 国の特別天然記念物に指定され、2007年には有珠山とともに日本の地質百選にも選定されたのが昭和新山。昭和新山は1943年から1945年にかけて活発な火山活動を行ないましたが、マグマの流動性が低く揮発性成分も低いものでした。このため、大きな噴火や溶岩の流失はなく溶岩ドームが盛り上がる形で標高398mの昭和新山が形成されました。

- 新燃岳の爆発的噴火で被害が心配 -
 新燃岳の爆発的噴火で、従来の噴火警戒レベル2からレベル3に引き上げられました。爆発的噴火で、高温に熱せられた火砕流と弾道を描いて飛散する噴石による被害が心配されます。このため、火口から3㎞の範囲は噴火による火砕流の警戒が必要であり、噴石の被害を食い止めるため、火口から4㎞の範囲が立ち入り禁止となっています。1991年の長崎県の雲仙普賢岳の爆発では、火砕流によって取材にあたっていた報道関係者や火山学者、警察官や住民など死者行方不明者43名という大惨事を引き起こしました。新燃岳が52年ぶりに爆発的噴火火山の噴火はどのようにして起こる?
 空振による被害も心配です。空振とは火山の噴火によって急激な気圧変化が起こり、これが衝撃波となって空気中を伝わります。この空振が通過する時、建物の壁や窓ガラスなどを破損する被害を発生させます。新燃岳の噴火では、学校や病院、一般家屋のガラスなどが割れケガ人も出ています。
 そして、爆発後も降雨にともなう土石流や泥流による被害も心配です。新燃岳の爆発的噴火で、火山灰が広範囲にわたって降り積もっています。その火山灰の量は、数㎝から多いところでは数10㎝となっており、少しの降雨でも一気に流れ出し、居住地域を襲うことが考えられています。
新燃岳が52年振りに爆発的噴火 【火山の噴火はどのようにして起こる?】
- 地下にあるマグマが上昇して噴火 -
 新燃岳の爆発的噴火について見てきましたが、火山列島と呼ばれる日本に住んでいる私たちは、新燃岳の噴火を決して他人事として見過ごすわけにはいきません。火山の仕組みを理解し、いつ起こるとも限らない噴火に備えることが大切です。
 地球の内部は、図にあるように表面を覆う地殻、その下にあるマントル、外核、内核によって構成されています。マントルは「玄武岩」や「かんらん岩」を主成分とする岩石からなっています。このマントルがプレートの下で、年間数㎝というゆっくりとしたスピードで移動しています。これが「マントル対流」というもので、マントルの上に乗るプレート同士がぶつかり合う時にその境界で「きしみ」、つまり地震が起こります。日本は4つのプレートがひしめく所に位置し、地震が多発しているのはこのためです。
 火山のマグマは、マントルの一部がさまざまな物理的、化学的要因によって溶けだしてマグマを形成し、上昇してマグマ溜まりに蓄えられます。そして、何らかの要因でマグマがプレートの裂け目や、プレートを貫いて地表に噴出した現象を火山の噴火と呼んでいるのです。

- 地球のどんな所に火山ができる? -
 火山は地球のどこにでも出来るわけではありません。ある条件をクリアした時、マグマが発生して地表に到達して火山となります。火山ができやすい場所は、大きく分けて以下の3種類が考えられています。
 ①地球上で最も火山活動が活発な場所は、マントルも含めたプレートが裂けて横に広がった場所です。このような場所は、地下に熱いマグマが生まれやすく、マグマの通路も確保しやすくなっています。多くは長く続く谷地形になっているので、リフトバレーと呼ばれています。
 昨年4月、アイスランドで起きた大噴火で、航空業界に多大な被害を引き起こしたアイスランドの噴火がよく知られています。
 ②日本列島に代表されるように、プレートが沈み込んでいる場所で活発に火山活動が起きています。プレートが他のプレートとぶつかり、マントル付近まで沈み込んで消滅していきます。沈んでいく時、地表近くの大量の水を地下深くまで運んでいきます。その水分で岩石の融点が下がり、マグマが発生すると考えられています。マグマは発生した場所から真上に上昇して火山を作ります。このため、プレートが沈み込んだ場所に沿って火山の列を作ります。
 日本列島と4つのプレートの境界、さらに火山の噴火と地震の発生場所をじっくり眺めるとこの関係がよく分かります。環太平洋地域にある火山はこのタイプで、地中海のギリシアやイタリアにある火山も同様です。
 ③地球上にはプレートとは関係なく、地球深部のマントルから大量のマグマが継続的に上昇している場所があります。マグマの上昇流の幅が細ければ、地表に火山がスポット状に生まれます。「ホットスポット」と呼ばれ、ハワイにある火山がこの代表です。
 アイスランドの火山は、リフトバレーとホットスポットが重なっているため、火山活動が非常に活発に行なわれています。




- 火山にはどんな種類がある -
 火山の分類は、以前は火山の地形から分類していました。しかし、火山の形成過程が異なるにも拘らず、長年にわたる浸食などで同じ形になってしまうという例が次々と見つかりました。このため、こうした分類では不都合な点が多く、今ではほとんど使用されていません。現在は、火山の形成過程や火山の内部構造によって分類されています。
 まず、火山の寿命で分類すると、ほぼ同一個所で噴火を繰り返す寿命の長い「複成火山」と、1回の噴火だけで火山を形成する「単成火山」に分けることができます。複成火山としては、今回爆発した新燃岳や阿蘇山、普賢岳、富士山、岩手山などがよく知られている有名な火山が含まれます。
 単成火山は1回の噴火だけで形成されますが、複成火山の一部である場合もあります。北海道の昭和新山はあまりにも有名です。

- 火山の構造や形状で分類すると!! -
 火山の爆発で、火口からマグマが噴出します。しかし、火山ごとに噴出するマグマの成分や爆発の仕方が異なり、山の形も大きく変わってきます。このように火山の形成過程で分類すると以下のように分けることができます。
 成層火山:同一個所の火口で噴火を繰り返し、溶岩や火山灰、火山礫などが積み重なって円錐形に近い形の火山です。富士山や岩手山、開聞岳など日本の火山に多く見られます。
 楯状火山:粘り気が少ない玄武岩質のマグマが積み重なった、傾斜の緩い形状をした火山です。ハワイ島のマウナロア、キラウエアなどが有名です。
 カルデラ:火山の爆発やその後の陥没、浸食などによって形成された大規模な円形の窪地。通常、2㎞以上のものを指します。阿蘇山、十和田湖、摩周湖、洞爺湖などが該当します。
 マール:水が大量にある場所で爆発的な噴火が起こり、円形の火口に水が溜まっていることが特徴です。秋田県男鹿半島の目潟や伊豆大島の波浮港などがこれにあたります。
 溶岩円頂丘:マグマの粘性が高く、しかもガスの含有が低いため、爆発的な噴火を起こさないまま火口から溶岩が押し出されたもの。溶岩ドームとも言われています。昭和新山や妙高山、雲仙平成新山などが知られています。

- アイスランドの噴火で欧州の空は大混乱 -
私たちに恩恵も与えてくれる火山地帯
 昨年4月、アイスランド南部のエイヤフィヤトラヨ―クトル氷河で大規模な火山噴火が起こりました。噴出した火山灰は、ヨーロッパ各地に広がり空港閉鎖や航空便の欠航が相次ぎ、約1週間にわたって大混乱に陥りました。
 氷河周辺の住民は、速やかに避難したため人的被害はなかったものの、経済的打撃は2001年に起こった米同時多発テロを上回ったと伝えられています。この混乱で、ポーランドのカチンスキー大統領の国葬に米仏独の首脳らが出席を取りやめました。また、ジュネーブ軍縮会議やEU農漁業相理事会も中止になりました。
 飛行機が運航を中止したのは、火山灰で視界がさえぎられるだけでなく、エンジンが吸い込むと、停止する恐れがあるためです。この間、計10万便が欠航し、その損害額は25億ユーロにも達したと推測されています。
 しかし、火山は恐ろしい反面、私たちに多くの恩恵を与えてくれます。火山が立地する周辺地域は、素晴らしい景観を生み出し、観光地として多くの旅行者が訪れます。また、地下から大量の温水が沸き出す温泉地帯ともなっています。さらに、肥沃な大地は農業や畜産業に適し、鉱物資源にも恵まれています。
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