再生可能エネルギーの可能性【環境】

再生可能エネルギーの可能性


 東日本大震災で福島第一原子力発電所の事故が起き、国内にある50基の商業用原発すべての稼働が停止しました。この結果、おもに電力という形で利用しているエネルギー問題に今後どう対処していくかが問われています。
 こうした中、注目を集めているのが再生可能エネルギー。自然界に存在する太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどをエネルギー源として利用しようというものです。再生可能エネルギーは資源を枯渇させず、二酸化炭素などの温室効果ガスをほとんど排出しない優れたエネルギーです。しかし、普及するにはまだまだ克服すべき課題が横たわっています。再生可能エネルギーの種類や特徴、克服すべき課題や将来の可能性について考えてみましょう。


再生可能エネルギーの可能性 - 再生可能エネルギーとは?
 再生可能エネルギーとは、自然界の営みから永続的に継続して利用できるエネルギーのことです。いずれ枯渇する化石燃料と異なり、自然界の活動でエネルギー源が絶えず供給・再生され、しかも地球環境に大きな負担をかけることがありません。この素晴らしい再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱など、わたしたちの身の周りにある自然から生み出されます。このため、自然エネルギーと呼ぶこともあります。
 再生可能エネルギーは、発電、熱利用、燃料化の三つに分類されます。発電には太陽光発電、水力発電、地熱発電などがあり、熱利用としては発電のほか高温蒸気・熱水の再利用などがあります。また、さまざまな植物からアルコールなどを作るバイオマスの燃料化、いわゆる「バイオ燃料」の実用化が進んでいます。

-再生可能エネルギーの根源は太陽-
 これら再生可能エネルギーの根源を探ると太陽に行き着きます。地球は太陽系の惑星として、誕生当時から太陽が発する光や熱をエネルギーとして利用してきました。太陽からのエネルギーを得て生命が誕生し、死んだ後も地中に化石燃料を残しました。現在も、太陽は生命維持に欠かせない多彩な食物を育み、植物は光合成を行いながら成長し、酸素を供給しています。
 再生可能エネルギーも、太陽から注がれるエネルギーによって生まれます。太陽のエネルギーで地球に温度差や気圧差が生じ、気象の変化が起こります。光、風、水、波や潮流などは、気象状況の変化によって起こるため、広義にいえばその源は太陽エネルギーだといえるかも知れません。

-なぜ再生可能エネルギーなのか-
 18世紀の産業革命以降、世界のエネルギーを担ってきたのは石炭・石油・天然ガスといった化石燃料でした。しかし、これらは限りがあり、数十年から数百年の間に枯渇するといわれています。20世紀に登場した原子力も、その原料であるウランはあと数十年で枯渇すると予測されています。
 再生可能エネルギーの魅力は、太陽や地球のエネルギーを利用するため、資源が枯渇する心配がありません。また、化石燃料の利用に伴って発生する温室効果ガスの削減も期待できます。
 日本におけるエネルギー供給のうち、化石燃料が8割以上を占め、そのほとんどを海外に依存しています。近年、新興国の経済発展などによって世界的にエネルギーの需要が急増し、化石燃料の価格が乱高下するなどエネルギー市場は不安定化しています。その大半を海外に依存する日本にとって、エネルギーを安定的かつ適切に確保していくためには、再生可能エネルギーの導入は至上の課題になっています。(表1)
 さらに、再生可能エネルギーの導入による環境関連産業などの創出・育成で、新規雇用の拡大など経済対策にも好影響がもたらされると期待されています。

再生可能エネルギーの可能性 -再生可能エネルギーの利用状況-
 魅力たっぷりの再生可能エネルギーですが、表2に見られるように実用化への道のりは程遠いのが現状です。再生可能エネルギーから水力を除いた新エネルギーでの発電は、全体の1・2%に過ぎません。これでも、再生可能エネルギーによる発電量は毎年増加し、震災によって原発が稼働停止した2011年以降、再生可能エネルギーの担う役割は一層大きくなると見られています。
 再生可能エネルギーによる発電のうち、出力1万kW以下の小水力が46・6%を占めて一番多く、次いでバイオマスの30・7%、そして風力、地熱、太陽光と続きます。なかでも、最近バイオマスによる発電が大きく伸びてきているのが注目されます。(表3)

【その種類と特徴、克服すべき問題点】
-再生可能エネルギー導入への課題-
 再生可能エネルギーが普及してこなかった大きな理由はコストです。風力や太陽光は多大な設備投資を必要とし、日照時間や風力の確保など自然状況に左右されます。このため出力が不安定であり、地形的にも設置場所が限られるという難点があります。日本に豊富にある地熱についても、地熱の存在をデータ的には確認できたとしても、コストをかけて実際に掘って確認するまで確実に利用できる保証はありません。
 再生可能エネルギーが大量に導入されると、休日など需要の少ない時期に余剰電力が発生したり、天候の異変によって出力が変動するなど安定供給に問題が起こる可能性があります。このため、本体設備とともに発電出力の抑制や蓄電池の設置などの対策が必要になり、既存エネルギーと比較すると発電コストが高くなるのです。
 このため、政府は2009年11月に家庭や事業所などで太陽光発電された電気のうち、使いきれずに余った電気の買い取りを電力会社に義務付ける「太陽光発電の余剰電力買取制度」を制定して普及に努めています。

【どのように自然エネルギーを活用する】
-太陽光発電・風力発電・地熱発電・バイオマス発電・水力発電の実際-
再生可能エネルギーの可能性 【太陽光発電】
 太陽光発電の分野では、日本はドイツとともに世界をリードしています。2009年末現在の導入実績は262・8万kWで、この10年で約8倍にも増えています。
 太陽光発電のエネルギー源は太陽光であるため、設置地域に制限があまりなく、システム的に可動部が少ないので機器のメンテナンスは容易です。このため、家庭用太陽光発電以外にも、産業用や公共施設などへの導入が進んでいます。また、送電施設のない遠隔地、災害時の非常用の電源として期待が高まっています。気象条件による出力の変化、コスト低減という問題を克服するため、さらなる技術開発が期待されています。

【風力発電】
 欧米諸国に遅れは取るものの、2000年以降の導入件数は飛躍的に伸び、2009年末で1683基、累積設備容量は219万kWまで増加しています。再生可能エネルギーの中では比較的発電コストが低く、最近では電力事業者以外にも商業目的での導入が進められています。風力エネルギーは、風車の高さやブレードによって異なるものの、風力を高効率で電気エネルギーに変換できます。また、太陽光発電と異なり、風さえあれば夜間でも発電できるというメリットがあります。
 ただ、景観の問題、台風などの気象条件に対応した風車の開発、回転時の低周波音の削減などの技術開発が今後の課題とされています。

【地熱発電】
 日本は火山帯に立地しているため、地熱利用は早くから注目されていました。本格的な地熱発電所は1966年に運転を開始し、現在は全国に展開しています。安定して発電できる地熱発電は、純国産エネルギーとして注目されています。
 地熱発電は地下の地熱エネルギーを使うため、昼夜を問わず長期間にわたって安定したエネルギーの供給が期待できます。発電に使用するだけでなく、発電後の温水は農業用ハウスや地域暖房などに再利用できます。
 しかし、立地地区が公園や温泉地といった観光地と重なるため、地域といかに調和を図るかが課題になっています。また、地下数千メートルも掘削するため、コスト問題の克服が重要課題になっています。
再生可能エネルギーの可能性 【バイオマス発電】
 バイオマスとは、動植物などから生まれた生物資源の総称です。バイオマス発電は、この生物資源を燃焼させたりガス化させることで発電します。
 技術革新の進展で、多様な生物資源が有効利用されています。市民生活から排出される廃棄物を燃料とすることで、廃棄物の再利用や減少につながり、資源循環型社会構築に大きく貢献します。また、家畜廃棄物、稲わらなど農漁村に存在するバイオマス資源の活用で、農漁村の自然循環環境機能を維持増進し、その持続的発展を図ることが可能になります。
 ただ、雑多な生物資源を原料にしているため、時には安定した熱量を得ることが難しくなります。さらに、生物資源が広い範囲に点在することで、収集・運搬・貯蔵・管理コストが高くなるという難点もあります。

【水力発電】
 日本のエネルギー源として古くから重要な役割を果たしてきたのが水力発電。豊かな水量に恵まれた日本は、地熱発電と同様の純国産エネルギーとして期待されています。既に高度に確立された技術を使うため、これまで未使用だった中小河川や農業用水路での発電も期待されています。このため、1万kW以下の小水力発電が注目され、発電量を増やしてきているのが現状です。
 問題点として、建設に伴なう環境破壊、川の流量の変化で起こる生態系への悪影響などがあげられます。さらに建設の初期コストが高いことや、ダム建設で移転が必要になる住民への負担増などの問題があります。
再生可能エネルギーの可能性 【その他】
 太陽の熱エネルギーを集め、水や空気などの熱媒体を暖めて給湯や冷暖房に活用する太陽熱利用。海面の潮汐の差を利用したり、波浪や潮流を利用した超クリーンエネルギーの開発。冬の雪氷を冷熱が必要な時に利用する雪氷熱利用、一定した地下水の温度を利用する温度差熱利用など、さまざまな再生可能エネルギーの開発、そして実用化が進められています。
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