レッドリスト5年ぶりの見直し終了【環境】

レッドリスト5年ぶりの見直し終了


【日本カワウソなど8種が新たに絶滅種に、クニマスは絶滅から野生絶滅種に】
 環境省は、2008年からレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)の見直し作業を進めてきました。昨年8月に公表された哺乳類や昆虫類など9分類群に加え、今年2月には汽水・淡水魚類の見直しを終え、全10分類群の見直し作業が終了しました。
 作業の結果は、新たなレッドリスト(第4次レッドリスト)として公表され、来年にはレッドリスト掲載種について詳しく解説したレッドデータブックが発行されます。

レッドリスト5年ぶりの見直し終了 - 国際自然保護連合が初めて作成 -
 レッドリストとは、1966年に国際自然保護連合(IUCN)が初めて作成した、世界規模で絶滅のおそれのある野生生物種のリストです。その表紙が赤色だったことから「レッドリスト」と呼ばれるようになりました。その後、各国政府や学術団体なども独自にレッドリストの作成に取り組むようになりました。
 日本では、環境省が1991年に初めて作成しました。環境省版レッドリストは、日本に生息・生育する野生生物について、専門家で構成される検討会で生物学的観点から個々の種の絶滅の危険度を科学的・客観的に評価していきます。その結果をリストにまとめたもので、ほぼ5年ごとに見直されます。
 レッドリストに掲載されたからといって、直ちに捕獲規制など法的問題につながるものではありません。しかし、レッドリストの情報を広く周知させることで、環境破壊が進む社会への警鐘となり、環境保護政策を推進する上で大きな役割を果たします。

- 環境省のレッドリストの分類 -
 環境省のレッドリストでは、日本に生息・生育する野生生物を「絶滅」「野生絶滅」「絶滅危惧」など、7つのカテゴリーに分けて分類しています。
 第4次レッドリストに掲載された全種数は、5643種で前回の4777種を上回っています。このうち、絶滅は113種、飼育や栽培下でのみ存続する野生絶滅は15種で、日本由来の128種もの生物が野生の姿を消しました。
 絶滅のおそれのある野生生物の種、つまり「絶滅危惧Ⅰ類」「絶滅危惧Ⅱ類」に分類されたのは3597種で、前回の第3次レッドリストの3155種を大きく上回っています。このまま放置しておくと、ごく近い将来には野生の姿が見られなくなる可能性が極めて高い生物、または絶滅の危機が増大している種となっています。
レッドリスト5年ぶりの見直し終了 - ニホンカワウソなど8種が絶滅種に -
 今回の改訂で、ニホンカワウソやミヤココキクガシラコウモリ、猛禽類のダイトウノスリ、昆虫のスジゲンゴロウなど8種が新たに絶滅種に指定され、絶滅種は全部で113種になりました。
 日本中に広く生息し、1964年には天然記念物にも指定されたニホンカワウソは、19
79年に高知県須崎市で目撃されたのを最後に姿を消しました。護岸工事や毛皮を狙った乱獲などが原因とみられています。1991年のレッドリストでは、絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧Ⅰ類」になっていましたが、それ以降30年以上も目撃情報がないため、今回「絶滅」に切り替えられました。
 また、同じ「絶滅危惧Ⅰ類」に指定されていたダイトウノスリも、長期にわたって確認されていないことから「絶滅」に指定されました。

- トノサマガエルなど身近な生物も指定 -
 食卓になじみ深いハマグリは、今回新たに「絶滅危惧Ⅱ類」選定されました。スーパーなどで売られ、食卓に並ぶのは中国や韓国からの外来種で、もとから日本にいたハマグリはほとんど姿を消しているのです。日本ウナギは、これまで生態に不明なことが多いため「情報不足」となっていました。しかし、最近になって生態について明らかになってきたことから、漁獲量のデータに基づいて「絶滅危惧Ⅰ類」になりました。
 この他、身近な生物もレッドリストのカテゴリーに登録されています。ゲンゴロウは「準絶滅危惧」から「絶滅危惧Ⅱ類」へと深刻さを増し、トノサマガエルは新たに「準絶滅危惧」に指定されました。江戸時代から「銭亀」として親しまれてきたニホンイシガメは、「情報不足」から「準絶滅危惧」にランクを上げています。
 
- 生息が確認されたクニマスは「野生絶滅」に -
 すでに「絶滅」と考えられていたクニマスは、2010年に山梨県の西湖で生息していることが確認されました。本来の生息地である秋田県田沢湖では絶滅し、本来の生息地以外の移植地で再発見されたため、今回の見直しでは「野生絶滅」と認定されています。このように、予期せぬ発見や新知見でレッドリストの評価が良い方向に見直されることもあります。
 近年、地球上で種の絶滅が急速に進み、生物多様性が脅かされています。この原因は、開発による環境破壊や厳しい食料事情に対応するための乱獲で、生物の生息地が減少していることです。こうした現状をレッドリストやレッドデータブックをもとにしっかり把握し、私たちに何ができるか考えてみたいものです。
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