CO2排出量の削減は人類共通の緊急課題【環境】

CO2排出量の削減は人類共通の緊急課題


【地球温暖化と気候変動を考える】
 現在の地球は過去1300年で最も暖かくなっているといわれます。
地球温暖化はさまざまな気候変動を招き、水や食糧、生態系、健康などに深刻な影響をおよぼします。
地球温暖化の要因となるCO2など温室効果ガスの排出をできるだけ少なくし、地球温暖化の進行を抑えることが人類に課せられた21世紀の課題だといえます。

CO2排出量の削減は人類共通の緊急課題 - 豪雨、竜巻、巨大台風など頻発する異常気象 -
 昨年の夏、日本各地は気象観測が始まって以来という異常な猛暑が続きました。ヨーロッパや中国、東南アジアでは激しい集中豪雨に見舞われ、大洪水が発生して産業や農業に大きな被害が出ました。
 米国では再三にわたって巨大な竜巻やハリケーンが襲い、11月にはフィリピン中部を季節外れの猛烈な巨大台風が駆け抜けました。
 上陸時点での中心気圧が895hPa、最大風速65m(最大瞬間風速90m)という観測史上例を見ない台風といわれ、5000人以上の死者を出すなどの大災害となりました。


- 異常気象を引き起こす地球温暖化の95%が人為的要因 -
 気候変動の研究を行っている国連の政府間パネル(IPCC)は、昨年9月に6年ぶりに評価報告書(第5次)を発表しました。
その中で、頻発する熱波や豪雨、竜巻などの極端な異常気象は、95%が人為的な要因による地球温暖化によるものだと述べています。
 つまり地球温暖化は、主として急激な工業化や暖房、自動車など人間活動による大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇によるもので、これによって引き起こされた気候変動が世界の異常気象を招いているというのです。

- 産業革命以降、人類は化石燃料を大量に消費 -
 19世紀半ばから始まった産業革命を契機に、人類は石炭や石油など化石燃料の大量消費を始めました。
 この結果、温室効果ガス世界資料センター (WDCGG)の解析では、産業革命以前に278PPM(1PPMは100万分の1)だった大気中の平均CO2濃度は、2012年には41%増加して393.1PPMとなっています。
 昨年5月には、ハワイ島で1958年の観測を始めて以来、初めて400PPMを超える高いCO2濃度を記録して注目されました。
 小笠原諸島の南鳥島や沖縄の与那国島、またアラスカやアイスランド、ノルウェーでも400PPMを超える高い数値が観測されています。

CO2排出量の削減は人類共通の緊急課題 - 海面が65㎝上昇すれば海浜の82%が消える -
 世界195カ国の科学者が参加するIPCCの第5次評価報告書によると、1880年から2012年までに世界の平均気温は0.85℃上昇しました。
また20世紀の100年間で世界の海面の水位は18㎝上昇しました。
 今後もCO2の排出増が続くと、21世紀末には地球の平均気温は産業革命前に比べて最大4・8℃、海面の水位は同82㎝上昇すると予測しています。
 環境省によると海面が65㎝上昇すると、日本の海浜の82%が失われるといいます。

- 温室効果ガスは地表を適温に保つ -
 温暖化の要因となる温室効果ガスには、CO2をはじめメタン、亜酸化窒素、フロンガスなどがあります。
 温室効果ガスは、地球の表面から地球の外に向かって放出される熱を大気中に蓄積し、再び地球の表面に戻す性質(温室効果)があります。
これによって地表の平均気温を生物の生存に適した約14℃に保っています。
 太陽からの放射熱を地表から逃がさないように毛布のように保温の働きをするのが温室効果ガスで、もし温室効果ガスがなければ、地表の平均気温はマイナス19℃に低下すると推定されています。

- 90年代の10年間で大気中に年平均32億トンのCO2を貯蔵 -
 世界の人口は1960年の約30億人から50年余りの間に約70億人と2.3倍になり、世界の工業開発、モータリゼションは加速度的に増大してCO2を猛烈に排出してきました。
 2000年から2005年で化石燃料によるCO2の排出量は炭素換算で年平均72億トン。
海洋や森林などに吸収された量を差し引くと、大気中に41億トンのCO2が貯蔵されていると考えられています。
 1990年代の10年間には年平均32億トンのCO2が貯蔵されたと推定されており、大気中のCO2の量はその後も年々増え続けています。

- 1.5~2.5℃上がると動植物の20~30%が絶滅の危機に -
 地球温暖化というのは、大気中の温室効果ガス濃度が急激に増加して、大気の温室効果が強まって海や陸地の平均温度が上昇していることです。
 20世紀の100年間に地球の平均気温は0.74℃上昇し、現在のペースで温室効果ガスが増え続けると、2100年には地球全体の平均気温が約2℃上昇するといわれます。
 IPCCは、地球の平均気温が1.5~2.5℃を超えて上昇すると、動植物の絶滅リスクが約20~30%高まると警告しています。
 また、地球規模で気温が上昇すると極地の氷河が融けて海面が上昇し、気候メカニズムの変化(気候変動)によって異常気象が頻発する危険性が高まっていきます。

CO2排出量の削減は人類共通の緊急課題 - 97年のCOP3で先進国の削減目標(京都議定書)を設定 -
 大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるため、国連は1992年に「気候変動に関する国際枠組条約(UNFCCC)」を採択しました。
 1997年に京都で開かれた第3回条約締約国会議(COP3)で、先進国は国ごとに温室効果ガス排出量の削減目標の設定が義務付けられました。これを京都議定書といいます。
 この京都議定書で日本は、2008年から2012年までの年平均のCO2排出量を1990年に比べて6%減らすことを約束しました。
この目標値は達成されて終了しました。

- 2020年までに05年比3・8%の削減をめざす -
 昨年11月にポーランドで第19回の気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)が開かれました。2020年からスタートする温室効果ガス削減の新しい枠組み作りに向けて、各国が自主的な削減目標や行動を2015年に提出することになりました。
 日本はCOP19で、2020年までにCO2排出量を05年比で3.8%削減する新目標を発表しました。
 この目標値は京都議定書の基準年である90年比に換算すると約3・1%増えることになり、京都議定書の削減目標(6%削減)から後退したとして各国の批判を浴びました。
 削減目標が後退したのは、福島原発の事故で原発の稼働がゼロとなり、当面はCO2を多く排出する火力発電への依存度が高まるためです。

- 高効率の火力発電や電気、水素で走る自動車の開発 -
 今後注目されるのは、世界最大のCO2排出国である中国(世界の25.5%)や第2位の米国(同16.9%)、インド(同5.6%)など、世界の温室効果ガス排出量の半分近くを占める3カ国がどれだけ削減するかということです。
 日本は〝原発ゼロ〟時代の地球温暖化対策として、①高効率でCO2排出削減型火力発電の普及②電気や水素で動く次世代エコカーの実用化③自然エネルギー多用型のビルや住宅の建設促進などを重点課題として打ち出しています。
 太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、電源構成の中でまだ1.6%の比率に過ぎません。
熱効率の向上など技術開発、コスト低減に努めてポスト原発の一翼を担う電源となることが期待されます。

CO2排出量の削減は人類共通の緊急課題 『IPCCとCOP』
- CO2排出量と世界の平均気温上昇率は比例する -
 IPCCは気候変動に関する政府間パネルの略称で、専門家や科学者が地球温暖化についての研究を行う国際的な政府間機構です。
 1988年に国連機関として設立され、数年おきに評価報告書をまとめて発表しています。
 昨年9月に6年ぶりに第5次報告書が出され、初めてCO2排出量と世界の平均気温の上昇率がほぼ比例すると指摘しました。
 氷河の融解や海面上昇、異常気象などの変化をもたらす温暖化の原因の95%以上が、人為的な活動によるものとしてCO2の排出量を減らす必要性を強調しています。
 一方のCOPは国連気候変動枠組条約締約国会議の略称で、1992年の地球環境サミットで採択された気候変動枠組条約の締約国が集まって、毎年地球温暖化対策について討議する国際会議です。
 97年に京都で開かれた第3回のCOP3で京都議定書が採択され、90年比で日本は6%、EUは8%、米国は7%の温室効果ガス排出削減が義務付けられました。
 その後、米国は離脱しましたが、昨年11月のCOP19では、京都議定書の取り決めの効力が切れる2020年以降の新しい枠組みについて話し合われました。
 しかし、中国やインドなど途上国との話し合いが難航し、新しい枠組みを決める2015年のCOP21開催までに各国が削減目標を提出することになりました。
 温暖化対策を話し合うCOPでは、IPCCの研究成果を重要な判断材料として活用しており、COPとIPCCは密接に関係して、国際的な環境政策を決定するうえで重要な役割を果たしています。
バナー
デジタル新聞

企画特集

注目の職業特集

  • 歯科技工士
    歯科技工士 歯科技工士はこんな人 歯の治療に使う義歯などを作ったり加工や修理な
  • 歯科衛生士
    歯科衛生士 歯科衛生士はこんな人 歯科医師の診療の補助や歯科保険指導をする仕事
  • 診療放射線技師
    診療放射線技師 診療放射線技師はこんな人 治療やレントゲン撮影など医療目的の放射線
  • 臨床工学技士
    臨床工学技士 臨床工学技士はこんな人 病院で使われる高度な医療機器の操作や点検・

[PR] イチオシ情報

媒体資料・広告掲載について