微小粒子状物質(PM2.5)の正体は?【環境】

微小粒子状物質(PM2.5)の正体は?


【PM2.5から身を守るために】
 大気中にはさまざまな物質が浮遊していますが、その中で最近問題になっているのがPM2.5(Particulate Matter)と呼ばれる物質です。PM2.5とは、直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質のことで、人間の身体の中に入るとさまざまな健康被害を引き起こします。このPM2.5はどのように発生するのでしょう。身を守るにはどうすべきか考えてみました。

微小粒子状物質(PM2.5)の正体は? -髪の毛の太さの30分の1-
 PM2.5は、大気中に浮遊する粒子状物質の中でも特に粒子の小さな物質です。PM2.5の粒径は2.5マイクロメートル(1マイクロメートル=千分の1ミリ)以下。髪の毛の太さの30分の1程度しかないため、微小粒子状物質とも呼ばれます。
 PM2.5は微小粒子のため、肺の奥深くまで入りやすく、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器疾患への影響のほか、肺がんにかかるリスクを高め、循環器系への影響も懸念されています。
微小粒子状物質(PM2.5)の正体は? -PM2.5の発生の仕組み-
 PM2.5には、物の燃焼などによって直接排出されるもの(一次生成)と、大気中での化学反応によって生成されたもの(二次生成)があります。
 一次生成粒子の発生源としては、焼却炉やボイラーなどのばい煙を発生する施設、コークス炉や鉱物堆積場などの粉じんを発生する施設、自動車や飛行機などの排ガス、さらに火山の噴火による火山灰といった自然由来のものもあります。また、家庭内での喫煙や調理、ストーブなどからも発生します。
 二次生成粒子は、発電所や工場、自動車や飛行機、家庭などの燃料燃焼によって排出される硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、溶剤・塗料の使用時や石油取扱施設から排出される揮発性有機化合物(VOC)などのガス状の物質が、大気中で光やオゾンと反応して生成されます。

-健康に影響が出る濃度とは?-
 日本では、2009年にPM2.5の環境基準(人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準)を「1立方メートルの中に1年平均で15マイクログラム以下、1日平均で35マイクログラム以下」としました。しかし、2010年以降、多くの地域で年平均値15マイクログラムを上回っているのが現状です。
 環境省は、昨年2月に設置した「PM2.5に関する専門家会合」で、健康への影響が予測される濃度基準として、注意喚起のための暫定的な指針となる値を1日平均で70マイクログラムと定めました。しかし、呼吸器系や循環器系の疾患のある人、小児や高齢者などでは個人差が大きいと考えられ、これより低い濃度でも健康への影響が心配されています。このため、この暫定的な指針となる値については、今後新たな知見やデータを踏まえて、必要に応じて見直していく予定です。

-中国の大気汚染による日本への影響-
 中国ではPM2.5などによる大気汚染が深刻になっています。まだ多く残る石炭火力発電所からの排ガス、自動車の排ガスや工場からのばい煙などが原因とされています。
 昨年1月には、北京市を中心に大規模な大気汚染が発生し、高速道路の閉鎖や航空機の欠航など、交通機関にも大きな影響を及ぼしました。当時、日本でも福岡市など西日本各地で瞬間的に高い数値を記録しました。中国から飛来した大気汚染物質と日本の都市汚染物質とが組み合わさって高い数値を記録したとみられています。観測されたPM2.5などの大気汚染のうち、どの程度が中国から飛来したかは分かっていません。
 日本と中国の間には、越境する大気汚染物質を規制する取り決めがないため、PM2.5などの大気汚染物質の削減対策を求める強制力はありません。このため、国内に向けて注意を呼びかけるしかないのが現状です。

-PM2.5から身を守るために-
 PM2.5の濃度が暫定的な指針となる値を超えた場合、屋外での長時間の作業や運動は避けることが重要です。窓の開閉や換気は必要最低限にし、外気の室内への侵入を少なくしなければなりません。マスクの着用や空気清浄機などは、フィルターなどの性能によって異なりますが一定の効果が認められます。
 現在のPM2.5濃度に関する情報は、大気汚染防止法によって国や地方自治体が全国645か所でPM2.5の常時監視を行っています。身を守るためにもPM2.5を始めとする大気汚染物質の状況を常に把握しておきたいものです。

大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」
微小粒子状物質(PM2.5)の正体は?
 環境省の大気汚染物質広域監視システムの愛称が「そらまめ君」。全国の大気汚染状況について、24時間ウエブサイトで情報提供しています。愛称は空をマメに監視することから名付けられ、キャラクターは一般公募で選ばれました。
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