究極のエコカー「燃料電池車」【環境】

【1月15日に首相官邸に初納車】
トヨタ自動車が昨年12月に販売を始めた燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)「MIRAI」が、1月15日に首相官邸や経済産業省などに初めて納車されました。燃料電池車(FCV)は水素と酸素を反応させて電気を作り、モーターを回して走ります。このため、CO2を全く排出しないことから「究極のエコカー」とも呼ばれています。

自動車の燃料はガソリンが主流で、ガソリンでエンジンを動かして走行してきました。しかし、燃焼時に出るCO2や排ガスが環境汚染の原因の一つだと指摘され続けてきました。さらに、石油は限られた資源であることから、資源の枯渇といった問題もありました。
日本は環境先進国として、世界に先駆けてエコカーの研究開発を積極的に進めてきました。2009年から始まった「エコカー減税」によって、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の開発、販売に拍車がかかりました。また、研究中の燃料電池車(FCV)にも大きな期待が寄せられました。
現在、次世代自動車と呼ばれるハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などの開発をめぐって、国内はもとより世界中の自動車メーカーがしのぎを削っています。
- 次世代自動車の課題 -
ハイブリッドとは、複合とか、組み合わさったという意味です。ハイブリッド車は、ガソリンで動くエンジンで走行しながら発電機を回し、発電された電気で動くモーターも動力として利用しているのでこのように呼ばれています。エンジンとモーターを上手く組み合わせることでガソリンの消費、CO2や排ガスの削減の両立を図っています。
電気自動車は、文字通り電気でモーターを回して動く自動車です。ガソリンを全く使用しないため、環境に悪影響を及ぼす排ガスやCO2を出しません。また、騒音の心配もなく、自宅の電源から充電できるエコカーとなっています。
このように、ハイブリッド車や電気自動車は優れた特性を持っていますが、克服すべき課題も残っています。ハイブリッド車では、減少したとはいえ依然としてガソリンを使用することでCO2などを発生させます。電気自動車は、排ガス問題をほぼクリアしましたが、搭載する蓄電池の容量が限られているため、長距離の運行に問題があります。さらに、戸外での充電スタンドの整備が不十分なことや、充電に時間がかかるという問題を抱えています。
こうした両者の問題を克服して登場したのが、究極のエコカーとも呼ばれる燃料電池車です。

燃料電池車は、電気自動車と同様に電気でモーターを回して走ります。しかし、決定的に違うのは、電気自動車が車に搭載した蓄電池に蓄えられた電力で走るのに対し、燃料電池車は搭載した燃料電池で電気を作り、その電力でモーターを回していることです。
燃料電池とは、水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作る装置で、そこで得られた電気でモーターを回す仕組みになっています。このため、燃料電池車から排出されるのは、発電時に出る水と排熱だけで、環境汚染物質は全く排出しません。
その他にも、ガソリン車には及ばないものの電気自動車の3倍近い約500㎞もの走行が可能です。燃料電池で発電するために充電の必要がなく、発電時に騒音を出すこともなく静かに走ります。また、燃料となる水素は石油やガス、バイオマスなどさまざまなものから作ることができるなど多くのメリットがあります。
ただ、実用化に向けて克服すべき課題として、燃料電池の低コスト化、水素の貯蔵や搬送のコスト低減、さらに水素を補給する水素ステーションの整備などがあります。
- 政府も燃料電池車の普及を支援 -
燃料電池車は、トヨタが2014年6月にいち早く市販モデルを発表し、12月15日から予約販売しています。市販の燃料電池車としては、首相官邸などに納車
されたトヨタのFCV「MIRAI」が世界で初めてとなります。ホンダも2015年度中に、日産も2017年までにそれぞれ燃料電池車の販売を行う予定です。
以前から燃料電池車は、他の次世代自動車を上回る究極のエコカーであると認識されていました。しかし、燃料電池に使う貴金属の白金が高価で、当時は1台作るのに1億円もかかり普及は難しいと考えられてきました。その後、研究開発が進むにつれて価格が下がり、
今回納車されたFCV「MIRAI」は、高級車並みの約700万円となっています。しかし、受注台数は発売から1か月間で、予想を4倍近く上回る約1500台にも達しているそうです。
政府は、燃料電池車の利用促進は、政府が掲げる成長戦略に叶うものとして、1台あたり200万円以上の補助金を出して販売を支援しています。国あげての支援を受ける燃料電池車が、将来どのように推移していくのか注目されています。