生態系に悪影響を及ぼす外来生物【環境】

生態系に悪影響を及ぼす外来生物


 外来生物とは、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物のことです。外来生物の中には、農作物の育成や畜産業、また生活を潤してくれるペットのように私達の暮らしに欠かせないものもあります。しかし、中には移動先の生態系や人の生命、農林水産業に被害を及ぼす外来生物もいます。いま、この外来生物による被害が各方面で数多く報告され社会問題となっています。

生態系に悪影響を及ぼす外来生物 - 外来生物とはどんな生物 -
 日本の野外に生息する外国起源の生物は、分かっているだけでも約2000種にも及びます。外来生物の多くは明治以降、人の移動や物流が活発化するのに伴って、食用や農林水産用、また研究用やペットとして飼育することを目的に輸入されました。また、荷物や人間の衣服などに紛れ込んで持ち込まれたものもあります。
これらの外来生物は、環境が異なる日本で何らかの形で自然界に逃げ出すと、多くの場合は子孫を残すことなく絶滅していきました。しかし、中には日本の環境に適応し、日本に定着した生物も数多くいます。例えば、四つ葉のクローバーで知られるシロツメクサは、牧草として外国からやってきました。アメリカザリガニや水槽の水草でよく知られているホテイアオイも外国起源の生物です。このように外来生物は身近なところで沢山生息しています。
ただ、渡り鳥や海流に乗って移動する植物の種や魚などは、自然の力で移動するために外来種ではありません。現在、日本で問題になっているのは意図的、あるいは非意図的に外国から持ち込まれた生物が日本に定住し、日本の生態系に悪影響を及ぼしている生物が増えていることです。

- 侵略的な外来生物とは -
 外来生物の中で、地域の自然環境に多大な影響を与え、生物多様性を脅かす恐れのあるものを「侵略的外来生物」といいます。
「侵略的外来生物」というと、何か恐ろしい生物を連想するかもしれません。しかし、本来の生息地では普通の生き物として生息しているため、その生物自体が恐ろしいわけではありません。たまたま移動先の環境や自然条件が、悪影響を引き起こす要因を持っていたに過ぎません。例えば、日本では普通に生息する鯉や土手などに生えているクズといった植物は、アメリカでは本来生息していなかったために「侵略的外来生物」とされています。
自然の生態系は、長い期間をかけて微妙なバランスの下に成立しています。ここに他から予期しない生物が侵入してくると、生態系はもちろん人間の営みや農林水産業など幅広い分野に悪影響を及ぼします。中には非常に大きな影響を及ぼすものもあり、侵略的外来生物として社会問題化しているのです。
生態系に悪影響を及ぼす外来生物 - 侵略的外来生物の問題点 -
 侵略的外来生物が侵入し子孫を残すには、餌を取ったり住処を確保しなければなりません。このため、在来の生物との間で激しい争いが起こり、これまでの生態系を乱してしまいます。
沖縄県や鹿児島県の奄美大島では、ハブ退治のために意図的にマングースを導入しました。しかし、マングースは昼行性のために夜行性のハブを退治出来ず、国の天然記念物のヤンバルクイナやトゲネズミ、アマミノクロウサギ、キノボリトカゲなどといった貴重な在来種を捕食し、これら在来種の絶滅が心配されています。世界遺産に登録された小笠原諸島では、昆虫などを主食にするグリーンアノールが入り込み、小笠原固有の昆虫が食べられて絶滅の危機に瀕しています。
さらに都市部を中心に、北米からペットとして持ち込まれたアライグマが野生化し、屋根裏などに住みついています。アライグマは気性が荒く、鋭い爪と牙を持ち、攻撃されると大けがを負う恐れもあります。さらに、アライグマ由来の感染症が人に転移することも心配されています。
侵略的外来生物が定着に必要な場所を見つけ、定住し始めると個体数は爆発的に増えていきます。そして、外来生物が在来種を圧倒するようになると、駆除して元の生態系を取り戻すことは不可能といわれています。
生態系に悪影響を及ぼす外来生物 - 「外来生物法」で侵入種を阻止 -
 生物多様性の保全のためには、侵略的外来生物の蔓延を防ぐ必要があります。このため2005年6月に「外来生物法」が施行されました。外来生物法とは、日本に輸入されている生物が、日本の在来種にどのような影響を与えているかを評価し、悪影響を与える可能性が高い生物を水際で防ぐというものです。そして、悪影響を及ぼすと指定された「特定外来生物」は輸入、販売、飼育、さらに野外に逃がすことも禁じられています。行政には野外にいる特定外来生物の駆除を求めています。
第一次の「特定外来生物」として37種類が指定されました。この「特定外来生物」は第二次、第三次と選定作業が続き、2015年10月現在では、110種の生物が特定外来生物に指定されています。 
その内訳は、哺乳類ではアライグマ、ヌートリアなど25種、鳥類はガビチョウなど5種、爬虫類はカミツキガメ、グリーンアノールなど16種、両生類はウシガエルなど11種、魚類はオオクチバス、ブルーギルなど14種、クモ、サソリ類ではセアカゴケグモなど7種、甲殻類はウチダザリガニなど5種、昆虫はツマアカスズメバチなど9種、軟体動物はカワヒバリガイなど5種、そして植物類はナルトサワギクやオオフサモなど13種となっています。特定外来生物の指定はその後も増え続けています。特定外来生物による生態系への被害を防止するには、特定外来種を入れない、捨てない、拡げないという三原則を徹底することに尽きるようです。
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