マラソンブームがもたらす影響【スポーツ】

マラソンブームがもたらす影響

 現在、日本は空前のマラソンブームです。市民マラソンの火付け役となった東京マラソンを筆頭に、昨年は関西で大型大会が開催されるなど、全国各地で市民マラソンの開催が相次いでいます。大型マラソンへのエントリー数が軒並み増加する一方で、町おこしを掲げて開催を続けてきた、地域のマラソン大会への影響も心配されています。近年のマラソンブームの歴史と背景、その影響について考えて見ましょう。
 現在、日本は空前のマラソンブームです。市民マラソンの火付け役となった東京マラソンを筆頭に、昨年は関西で大型大会が開催されるなど、全国各地で市民マラソンの開催が相次いでいます。大型マラソンへのエントリー数が軒並み増加する一方で、町おこしを掲げて開催を続けてきた、地域のマラソン大会への影響も心配されています。近年のマラソンブームの歴史と背景、その影響について考えて見ましょう。

マラソンブームがもたらす影響 - マラソンの起源は古代ギリシャ -
 マラソンの起源は、紀元前490年にギリシアで起こった「マラトンの戦い」での出来事です。マラトンに上陸したペルシャ軍をアテナイ軍が破り、勝報を伝えようと、マラトンから現在のアテネにあたるアテナイまで、約40㎞を走った一人の兵士がいました。マラソンの名前は、この故事にちなんで名付けられた説が有力です。
 競技マラソンとしての歴史は、1986年に開かれた初めての近代オリンピックとなる「第一回アテネオリンピック」に始まります。女子マラソンはその88年後、1984年に開かれたロサンゼルス大会から正式種目となりました。 オリンピックでは日本人選手も多数奮闘を見せており、近年では女性ランナーの活躍が目立っています。2000年のシドニーオリンピックで高橋尚子選手が、2004年のアテネオリンピックで野口みずき選手がそれぞれ金メダルを獲得しています。

- 「42・195㎞」の数字はどこからやってきた? -
マラソンの距離が正式に42・195㎞となったのは、1921年に開催された国際陸上競技連盟の会議でのことです。そこで、1908年の第4回ロンドンオリンピック時の距離を採用することが決定されました。こんな中途半端な距離になったのは、マラソンに興味を持ったイギリスのアレキサンドラ王女が「スタートを自分の部屋の前に変えて欲しい」と申し立て、42㎞で設定していた距離を急きょ195m延ばしたためとされています。
 マラソンは、コースや気候などにより条件が多様であることから、記録は長い間「世界最高記録」として扱われていました。しかしその後、記録公認諸条件の整備が進み、2004年に「世界記録」と称されるようになったのです。
 このためマラソンは、通常記録が出やすい平坦な土地での開催が主流ですが、アドベンチャーマラソンと呼ばれる砂漠や南極といった過酷な自然環境を、数日に渡って駆け抜けるレースも行われています。

- 「ボストンマラソン」に始まる市民マラソンの歴史 -
 市民マラソンは、1897年に開催されたボストンマラソンが世界最古といわれています。後半30㎞以降、心臓破りの丘が現れる難コースをもつボストンマラソンは、世界中のランナーが一度は挑戦してみたい大会として有名です。記録を競う競技型マラソンに対して、市民参加型のマラソンは記録に関係なく出場が可能であるものが多く、誰でも気軽に参加しやすいのが特徴です。市民マラソンは世界中で開かれており、知名度のある大会の参加者は数万人規模に及びます。
 日本で初めて行われたマラソンは、1909年3月21日に神戸で開催された「マラソン大競走」に遡ります。距離は約32㎞で、スタートは神戸・湊川の埋立地。現在の淀川大橋をゴールとして、本大会はわずか20名で行われました。今では全国各地でさまざまな大会が開かれており、その数は約1500に上ります。42・195㎞を走るフルマラソンのほか、ハーフマラソンや10㎞程度のもの、また車いすマラソンなど、大会によってコースや種類もさまざまです。
 こうした市民マラソンブームの背景には、近年の健康ブームや節約志向を受けての、ランニングやジョギング人口の増加があります。平成18年度の調査では、ランニングやジョギングの愛好者は883万人に上り、約4割が50代以上とされています。散歩やウォーキングと同様に、誰でも気軽に始めやすいスポーツであることや、大手スポーツメーカーなどが、シャワールームや更衣室といった「走環境」を提供しだしたことも、ブームを作った一因と考えられています。
マラソンブームがもたらす影響 - 日本で巻き起こる大都市型マラソンブーム -
 日本のマラソンブームの火付け役は、2007年にスタートしたアジア最大規模を誇る東京マラソンです。もともと世界トップレベルの選手のみが参加できるエリートマラソンが生まれ変わったもので、初の日本陸上競技連盟公認の大会として市民ランナーに門戸が開放されました。
 2011年度の第5回大会の応募者総数は33万5147人と、倍率は9・6倍に達しました。出場者のうち4割がフルマラソン未経験と初級ランナーが多いことから、マラソンの裾野を広げている大会としても知られています。また、世界の主要マラソンにならって、世界新記録が出た場合の賞金総額が1億840万円に上る大型賞金レースでもあります。
 東京マラソンは、2008年にスタートした、IAAF(国際陸上競技連盟)による世界のロードレースの格付け制度において、2010年にゴールドラベルを受賞。これは、4万3687人の規模を誇るニューヨークシティマラソンなどに並び、市民参加型レース最高位の証でもあります。このような東京マラソンの盛り上がりを受け、全国各地でも大都市型マラソンブームが巻き起こっていきました。

- 市民主役のマラソンが支える「地域振興」 -
 昨年は、10月に大阪マラソン、11月には神戸マラソンが開催されるなど、関西を中心に大型大会が幕を開けた一年でした。共に楽しめるお祭りのようなイベントを目指した大阪マラソンは、定員3万人に対して17万人の応募が殺到。阪神大震災の復興支援への感謝と友情をテーマにした神戸マラソンには、定員2万人に対して7万7千人の応募がありました。今年3月には京都マラソンも予定されており、関西3都完走者には完走賞を贈るといった取り組みも検討されています。
 一方で、こうした大型マラソンの盛況ぶりが、地方が観光資源として育て上げてきたマラソン大会にじわじわと波紋を呼んでいます。地方の市民マラソン大会は、地方自治体が中心となって運営しており、都会にはない地元住民とのふれあいなどアットホームな手作り感が魅力のイベントとして、各地で人気を博していました。県外から訪れるランナーによる経済効果や地域活性化の効果は高く、町おこしとしての重要な役割を担ってきたのです。ところが、近年の大型大会の乱立によって定員割れが見られる大会も増え、「大都市のブランド力には勝てない」といった声が多く聞かれるようになりました。地方大会は淘汰の時代に入りつつあります。

- 地域振興に繋がる市民が主役の大会づくりを -
 全国における大型のマラソン大会は、そのほとんどが行政主導によるものです。行政が主導である場合、マンネリ化の心配や、大会理念が浸透しにくいのが問題です。こうした中、2010年6月に、東京都と日本陸上競技連盟が「一般財団法人東京マラソン財団」を設立し、民間が主体の大会運営を進めています。しかし、大規模なマラソン大会を行政以外で運営するためには、公道の使用による交通規制や人員の確保、参加人数の制限といった問題も数多く、乗り越えなければならないハードルが山のように存在します。
 マラソンへの関心が一過性のブームとして終わることなく、健康づくりの意識として定着し、さらに地域振興への関心へと繋がったとき、本当の意味での「市民」が主役の大会が実現できるのかも知れません。
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