ラグビーW杯2019日本大会を楽しむために【スポーツ】

ラグビーW杯2019日本大会を楽しむために


【全国12都市で9月20日~11月2日まで開催】
 ラグビーW杯とは、4年に1度行われるラグビーの世界王者決定戦です。今年、日本で初めて開催される第9回ラグビーW杯日本大会では、予選を勝ち抜いた世界20か国が9月20日から44日間にわたって全国12都市で熱戦を繰り広げます。ラグビーW杯はオリンピック、サッカーW杯と並ぶ世界三大スポーツイベントです。しかし、世界中のラグビーファンを熱狂させる大会でありながら、日本での認知度は野球やサッカーなどに比べて決して高いとはいえません。そこで、より多くの人々に興味を持っていただけるように、ラグビーの歴史を振り返りながらその魅力を紹介していきたいと思います。

ラグビーW杯2019日本大会を楽しむために - ラグビーの歴史は紀元前にまで遡る -
 ラグビーやサッカーなど、ボールを蹴って遊ぶといった行為は、人類の歴史が始まった当時から行われていたようです。古代ギリシャやエジプト、ローマの遺跡からボールを蹴る人の壁画が発見されていますし、中南米で栄えたインディオ文明の遺跡からも様々なボールが発見されています。
 中国では、紀元前から鞠を蹴って遊ぶ「蹴鞠(しゅうきく)」という競技が行われ、これがサッカーの起源とされています。中国の蹴鞠は、大和朝廷の時代に日本に伝わりました。日本に伝わってからは、競技ではなく足で鞠を蹴り上げる蹴鞠(けまり)として独自の発展を遂げていきました。平安時代以降、宮中や公家の間で盛んに行われ、江戸時代に入ると一般庶民も楽しむようになりました。

- スポーツとして成立したフットボール -
 中世イングランドでは、村同士のお祭りとして一つのボールを奪い合いながら相手のゴールに運ぶフットボールが盛んに行われていました。これには数千人もの人が参加し、時には死者も出るほど激しいものになり、禁止令が出されて次第に廃れていきました。
 これを近代的なスポーツとして成立させたのがイングランドのパブリックスクールです。パブリックスクールでは、学校ごとに独自のルールを作ってフットボールを行っていましたが、ボールを持って前に走ることは禁じられていました。ところが、1823年に行われたラグビー校のフットボール大会で、ウイリアム・ウエブ・エリス少年がボールを手にして走り出しました。この行為がラグビーの始まりとされ、ラグビーW杯優勝トロフィーがエリス杯と呼ばれるのはこれに由来しています。

- フットボールからラグビーとサッカーに -
 学校ごとのルールを大別すると、イートン校のように「手の使用を禁止」したものと、ラグビー校を中心とした「手の使用を認める」という二大勢力が拮抗していました。これでは他校と試合をする時にルールの調整が必要になり不便でなりません。
 こうした対立を解消するため1863年10月、ロンドンでルールの統一を目指した協議が行われました。ところがラグビー校は、協議でまとめられた統一案に同意できず、フットボールはサッカーとラグビーという二つの競技に分かれて独自の道を歩んでいきました。
 しかし、フットボールという名称は消えることなく、世界各国の母国語の中で外来語として扱われています。日本やアメリカなどでは「サッカー」と呼ぶことで、他の多くのボールゲームと区別しています。日本サッカー協会の英語表記は、Japan Football Associationと世界標準に準じていますし、ラグビーを管轄するのは日本ラグビーフットボール協会となっています。
ラグビーW杯2019日本大会を楽しむために - 日本のラグビーのルーツは慶応大学 -
 日本にラグビーが伝わったのは、1899年に慶応大学の田中銀之助がイギリスのエドワード・クラークとともにイギリスから持ち帰り、慶応の学生に伝えたのが最初だと伝えられています。以降、早稲田大学、明治大学、同志社大学などが戦前から定期戦を行うようになりました。現在では、こうした伝統校のほか、新興勢力が台頭してリーグ戦や対抗戦を盛り上げています。
 社会人ラグビーは、1949年に第1回社会人大会が開催されました。60年に日本選手権の前身となるNHK杯が誕生し、社会人と大学のトップが日本一を競いました。63年に日本選手権と改められ、しばらくの間は社会人と大学生が優勝を分け合いました。しかし、徐々に社会人が力をつけ、新日鉄釜石や神戸製鋼の7連覇にみられるように社会人がトップに立つようになりました。
 なかでも、新日鉄釜石の活躍で地元釜石は沸き返り、地方都市に勇気を与えました。今回、W杯のために新設された釜石鵜住宅復興スタジアムは、東日本大震災からの復興をアピールしていますが、地元の根強いラグビーファンの後押しも忘れるわけにはいきません。

- ラグビーは紳士のスポーツです -
 ラグビー発祥の地イギリスでは、中流階級以上の階層の人々に人気があり、英才教育にも利用されることから「紳士のスポーツ」と呼ばれることもあります。
 ラグビーは走る、投げる、蹴る、さらに激しい接触プレイなど、スポーツの要素すべて兼ね備えたスポーツです。しかし、ノーサイドの笛とともに敵味方が無くなり、互いに讃えあう「ノーサイドの精神」、試合後に行われる「アフターマッチファンクション」と呼ばれる交換会、さらに15人という多くのチームメイトが互いに支え合う「オール・フォー・ワン、ワン・フォー・オール」といったラグビー精神が高く評価されています。

- プロ化でサッカーに後れを取るラグビー -
 しかし、ラグビーの国際的な広がりはサッカーに比べて遅れを取っています。ラグビーの国際統括団体であるワールドラグビーに加盟しているのは、2015年で国と地域を合わせて118協会で、国際サッカー連盟(FIFA)の国と地域211カ国に遠く及びません。W杯の初開催はサッカーが1930年ですが、ラグビーの第1回W杯は1987年とサッカーに比べて半世紀以上も遅れています。
 遅れた原因は、ワールドラグビーの前身である国際ラグビー評議会(IRB)が厳格なアマチュアリズムを守り続けていたためです。しかし、サッカーなどに見られるプロ化という時代の流れ、1987年のラグビーW杯の興行的成功などを背景に、95年にアマチュア規定を撤廃してオープン化しました。この結果、世界のラグビー競技人口は、2015年の770万人から17年には910万人と大幅に増加しました。
 アメリカでは近年、学校の授業にラグビーが採用され、ラグビーのプロリーグもスタートしています。また、7人制ラグビーや女子ラグビーの普及なども大きく関係しているようです。

- 競技人口が減少している日本ラグビー -
 日本では、1970年代に入ると大学ラグビー、全国大学ラグビー選手権大会、日本ラグビー選手権大会などでは、旧国立競技場を満員にするほど空前のラグビーブームに沸き立ちました。しかし、それ以降、ラグビー人気は低迷し、競技人口も減少傾向を示しています。
 競技人口の減少の要因として、W杯で思い知らされた世界の高い壁、プロ化への取り組みの遅れ、競技施設の不整備、怪我への不安、深刻な少子化問題などが考えられます。さらに、ルールの分かり難さが観客を試合会場から遠ざけているようです。
 日本ラグビーフットボール協会は、2019年までに競技人口を20万人にするという目標を掲げています。しかし、競技人口は2015年の11万5205人から17年には10万9312人と減少しているのが現実です。今回のW杯日本大会で、ラグビーの面白さや素晴らしさが再び広く周知され、日本ラグビーの大きな転換期になることが期待されています。
ラグビーW杯2019日本大会を楽しむために - ラグビーW杯の歴史を追って -
 ラグビーW杯は、1983年にオーストラリアとニュージーランドが、国際ラグビーフットボール評議会(現ワールドラグビー)にW杯の開催を提案したことからスタートしました。
 第1回ラグビーW杯は、1987年にニュージーランドとオーストラリアの共催で行われました。第1回W杯では選手のプロ化を認めず、予選も行わずに16か国を招待して行われたため、成功を危ぶむ声が高まりました。しかし、白熱した試合が相次ぎ、映像が世界中に配信されたことでラグビーW杯は高く評価されました。日本は招待されたものの、3戦全敗で予選リーグ敗退となりました。

- W杯で苦戦が続く日本代表に光明 -
 第2回W杯イングランド大会はIRBが主催し、地区予選を勝ち抜いた16チームによる大会となり、実質的には最初のW杯となりました。この大会で特筆されるのは、日本が初めてジンバブエに52対8で勝利したことです。しかし、日本は第1回大会から第7回大会までの間に勝利したのはこの1勝だけで、この間の戦績は1勝21敗2分けと大きく負け越し、決勝トーナメントに残ったことはありません。中でも、1995年に南アフリカで行われた第3回大会では、ニュージーランドに17対145という記録的大差で敗れ、これはW杯における最多失点記録となっています。
 厳しい戦いが続く日本代表ですが、2015年の第8回W杯イングランド大会で光明を見出しました。エディー・ジョーンズ率いる日本代表は、予選プールの初戦でW杯2度優勝経験があり、世界ランキング3位の南アフリカに34対32で勝利しました。続く2戦目のスコットランドには敗れたものの3戦目のサモア、さらに最終戦のアメリカに勝利して3勝1敗となりました。しかし、勝ち点で及ばず日本代表は8大会連続で予選プール敗退となりました。 しかし、W杯で3勝したチームが予選プール敗退となったのは史上初で、国内外から最強の敗者と高く称賛されました。
ラグビーW杯2019日本大会を楽しむために - 第9回W杯の日本大会に期待 -
 日本代表はW杯に第1回大会から8回連続出場していますが、世界の壁は高くこの間の成績は4勝22敗2分けとなっています。しかし、第8回W杯での活躍が自国開催となる第9回W杯日本大会につながることは間違いありません。
 W杯日本大会に向けて、日本は強豪国と数多くのテストマッチを行うだけでなく、ニュージーランドなどW杯優勝経験国が参加する世界最高峰の「スーパーラグビー」への参戦、さらに国内のトップリーグ公式戦のスケジュールの見直しなど、W杯日本大会に向けて万全の体制を整えて臨みます。日本の悲願は決勝トーナメントに進み、ベスト8に進出することです。日本(世界ランキング11)が入る予選プールAには、アイルランド(同2)、スコットランド(同7)、ロシア(同19)、サモア(同16)と強豪がひしめいています。決勝トーナメントに進むには、格上のアイルランドまたはスコットランドの何れかに勝たなければなりません。自国開催の利を生かし、一つでも多くの勝利を積み重ねて欲しいものです。
 W杯日本大会は、全国12都市で44日間にわたって行われます。是非、近くの会場に足を運び、日本戦だけでなく世界の強豪の試合を見ることでラグビーの面白さ素晴らしさを実感して下さい。W杯日本大会がラグビーの競技人口の回復、ラグビーファン獲得につながることを期待しています。
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