ヨーロッパの今
ヨーロッパを復権させたユーロが今、ぐらついている。借金問題がいっこうに解決しないギリシャに端を発し、多くの国が債務(借金)を返せなくなるのではないかと不安視されるようになった。ヨーロッパの国同士で助けようとすると、借金の少ない国も経済が悪くなるかもしれないと嫌われて、じわじわと傷口が広がっているようだ。
ヨーロッパで借金が多いポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの5カ国は、その頭文字をとってPIIGSと称される。すべての国で2011年に政権が交代した。かつてない危機の中で、それぞれの新政権は財政再建という重い課題を背負っている。行方が注目される3カ国を見てみよう。
財政の3分の1を借金でまかない、労働者の5人に1人が公務員と言われる。2009年に赤字隠しが発覚し、深刻な危機を救済してもらった。国民はすでに増税、給与や年金は減らされているため、不満も強い。2012年5月に総選挙が行われたが、いずれの政党も連立政権樹立に至らなかったため、6月に再選挙が行われる。
ユーロ圏でドイツ、フランスに続く経済大国。1年ごとにみると赤字は小さいが、積もり積もった借金が多い。ギリシャみたいになってしまうと困るからと、国債がどんどん売られてしまった。ベルルスコーニ前首相は財政について楽観的な発言をしたことから、「これでは再建が進まない」と市場に見放された。
ギリシャ、イタリアほど借金は多くないものの、失業率が高い。銀行が多額のこげついた借金も抱えている。ユーロ加盟後の恩恵で、低い金利のローンが組めたことから住宅をどんどん建てて売っていたが、2008年に世界的な大不況になり、売れ残った住宅は数十万棟とも言われている。
得をしているのがドイツ。比較的、財政が健全なため、ドイツ国債を買う人が増えている。また、ユーロの価値が下がって輸出に有利な状態も続いている。ドイツは、ともに経済力のあるフランスとリーダーシップを発揮して解決策をまとめるよう期待されている。2011年12月、両国の首脳会談ではユーロ各国の財政が健全になるよう監視する新たな条約をつくることを決めたが、市場の反応は今ひとつだった。
- 「国債」って?
- 借金をする代わりに発行するのが債券で、国が発行する債券が国債。債券は発行後も売買される。借金を返す能力が低いと思われると人気がなくなるため、安くなる。借金が返せなくなることをデフォルト(債務不履行)といい、2001年にアルゼンチンがデフォルトを宣言した。
- 「市場」って?
- 商品を売買する場所。ここでいう「市場」が扱うのは、株式、国債や外国のお金といった金融商品。金融とは、お金が余っている人が足りない人に融通する貸し借りのこと。市場に影響するのが格付け。専門の会社が、債券発行者の信用をいろんな基準で分析し、わかりやすい記号で表す。
- 「信用不安」「金融危機」って?
- IMFは国際通貨基金のこと。国連の専門機関で、財政(お金のやりくり)がうまくいかなくなっている国にお金を貸したり、支援する国際協力体制をリードしたりする。その代わり支援国の財政を監視する。ECBはヨーロッパ中央銀行。ユーロの発行を管理し、共通の通貨政策を取る。
- 「IMF」「ECB」って?
- 商品を売買する場所。ここでいう「市場」が扱うのは、株式、国債や外国のお金といった金融商品。金融とは、お金が余っている人が足りない人に融通する貸し借りのこと。市場に影響するのが格付け。専門の会社が、債券発行者の信用をいろんな基準で分析し、わかりやすい記号で表す。