地球上のあらゆるトラブルを一手に引き受ける「国連」とは?【国際】

地球上のあらゆるトラブルを一手に引き受ける「国連」とは?


 テレビや新聞のニュースで、毎日のように国連の活動が報道されます。国際紛争の調停や監視。環境問題、飢餓や食料問題。エイズ撲滅から初等教育の普及や貧困との闘い、戦災や自然災害の復旧、被災者の救援活動、テロ対策など、今世界で最も忙しく働いているのが国連です。一体国連はどんな仕事をしているのでしょうか?国連の機能と役割、問題点などを学んでいきましょう。

地球上のあらゆるトラブルを一手に引き受ける「国連」とは? - 国連の最も大きな仕事は、戦争を未然に防ぐ平和維持活動 -
 みなさんは、新聞やテレビのニュースなどで、ブルーのヘルメットの国連平和維持部隊の活躍を見たことがあると思います。日本の自衛隊もカンボジアやイラクなどで、国連の平和維持活動を行なってきました。
 平和維持活動は、国連(国際連合)の最も重要な仕事です。具体的には、世界の各地で発生するゲリラやテロ組織などによる流血事件や、国と国との国境紛争、民族や宗教をめぐる武力紛争を調停したり、全面戦争への拡大を防ぐための監視活動です。
 このほかの国連の活動では、大地震や津波、台風や豪雨による洪水、土石流など自然災害による救援活動や復旧支援などが重要です。
 また、干ばつによる食料飢饉や水不足による被災地域の救援や医療支援。エイズの撲滅や衛生環境が悪くて死亡率の高い途上国の乳幼児の救援、学校教育の普及活動といったさまざまな活動があります。
 まだまだあります。核兵器開発の国際査察・監視から、地球温暖化防止の国際的な取り決め、生物多様性のため動植物の保護、森林や海洋資源の保全など、実にさまざまな地球上のすべてのトラブル、問題解決に奮闘しているのです。
 この国連事務局のリーダーが国連事務総長で、任期は5年です。今は8代目で韓国の潘基文(バンギブン)氏が就任して、世界で最も忙しい人となっています。

- 二度と戦争はごめんだ!という決意で国際連合と国際連盟が生まれた -
 現在、国連には世界のほとんどの192カ国が加盟しています。
 そもそも国連は、第二次世界大戦で疲れきった各国の首脳が、「もう二度と戦争はこりごりだ」と、戦後世界の平和と発展を目指して、51の独立国が集まってできました。
 今から66年前の、第二次大戦が終了して間もない1945年10月24日のことです。
 実は国連が設立されるまで、世界には「国際連盟」という国際機関がありました。設立の動機は国連と同じでした。
 第一次世界大戦で疲れた国々の代表が集まって「もう戦争は止めよう」と、アメリカの呼びかけで、世界の平和を維持する国際機関としての「国際連盟」が1919年に設立されました。本部はスイスのジュネーブです。
 にもかかわらず、20年後には第二次世界大戦が、地球上のほとんどの地域を巻き込んで発生し、人類史上空前の被害と犠牲者を出しました。
 どうしてこういうことになったのでしょうか。国際連盟はなぜ機能しなかったのでしょうか?

- 米国が不参加。脱退相次いで機能不全に陥った国際連盟 -
 国際連盟は最初42カ国の参加でスタートし、1934年にソ連などが加わって加盟国は60カ国になりました。しかし、提唱者である肝心の大国アメリカが参加せず、地域紛争の調停がこじれて25年にコスタリカ、26年にブラジル、33年には日本とドイツ、37年にイタリアなどが相次いで脱退しました。
 39年にはフィンランドを侵略したソ連を除名したりして、理事会、総会ともに活動を休止し、第二次大戦を控えて国際連盟は機能しなくなったのです。
 大きな理由は、最高の議決機関であった総会決議が満場一致を採用していたため、議事がなかなか決定できなかったことが挙げられます。
 さらに、国際連盟は軍を組織して国際紛争の調停や解決に向けて、実行力のある制裁活動が出来なかったのです。

- 連総会議決は多数決。軍隊を派遣して平和維持活動 -
 こうした国際連盟の反省を踏まえて、第二次大戦後設立された国連は、総会決議に満場一致ではなく多数決原理を採用しました。
 また、軍を組織して紛争が発生している現地に送り、戦争の拡大を実力で阻止したり調停したりします。国連平和維持軍や国連監視団と呼ばれる国連の平和維持活動がそれです。
 国連は軍隊を常備していませんが、加盟国が軍隊や武器を国連の安全保障理事会(安保理)に提供します。国連は安保理の決議に基づいて多国籍の部隊を率いて平和維持活動を行います。
 このため国連への信頼度は増し、51カ国でスタートした国連の加盟国は、独立新興国が相次ぎ加盟して192カ国に増えました。この間、国連を脱退した国はひとつもありません。
 ところで国連(国際連合)は、英文で「United Nations(UN)」と表記します。国連という名の語源は、第二次世界大戦でドイツ、イタリア、日本の枢軸国と戦った、イギリス、アメリカ、ソ連、フランス、中国などの連合国(United Nations)からきています。
 つまり国連とは、第二次大戦の戦勝国(連合国)によって生まれた戦後世界の新しい秩序を守り、維持するための国際機関という性格が強いのです。
地球上のあらゆるトラブルを一手に引き受ける「国連」とは? - 安全保障だけを扱う安保理。
                  旧連合国5カ国が拒否権を持つ常任理事 -

 「国際連合は連合国」という印象は、国連で最も強い権限を持つ安全保障理事会の組織と機能を見ればよく分かります。
 ニュースでよく出てきますが、国連の中で最も重要で、最も大きな権限を持っているのが安全保障理事会です。通称、「安保理」と呼ばれています。 国連の最大の目的は世界の平和の維持です。安全保障理事会は、この最大の仕事を独占的に担当しているのです。
 国連総会が、環境や医療、食糧、教育、人権問題など何でも討議するのに対して、「安保理」は世界の平和と安全保障の問題だけを取り扱います。
 この「安保理」は15の理事国で組織しています。このうちアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の旧連合国の5カ国が常任理事国で、永久メンバーとなっています。その他の10カ国は非常任理事国で任期は2年です。国連総会で選出されます。
 そして、「安保理」の投票(議決)は9カ国の理事国が賛成して可決します。しかも、5カ国の常任理事国の1カ国でも反対すると決議は通過しません。これを「拒否権」といって、常任理事国(旧連合国)には、非常に大きな権限が与えられているのです。
地球上のあらゆるトラブルを一手に引き受ける「国連」とは? - 日本、ドイツなど常任理事国入り主張。年々高まる国連改革の声 -
 第二次大戦の敗戦国である日本やドイツは、その後目覚ましい発展を遂げて、現在の世界に大きな影響力を持っています。そこで日本やドイツは、常任理事国への就任を働きかけていますが、ロシアや中国などの反対にあって実現していません。
 常任理事国だけに与えられている「拒否権」も、国連の平等性という理念に矛盾しているため、改めるべきだという意見も多いのですが、ずっと無視されています。
 また、国連加盟国が192という大所帯となったため、重要な決定を行なう安保理のメンバーを増やし、アジア、アフリカ、中南米の各地域から新に常任理事国を選ぶべきだという議論もあります。
 こうした国連改革の声は年々高まっていますが、旧連合国を中心とした大国が主導権を持つ国連機能の抜本的な改革には至っていません。
地球上のあらゆるトラブルを一手に引き受ける「国連」とは? - 15件、11万6000人が世界各地で平和維持活動を展開 -
 国連は世界の平和維持のためどのような活動を行なっているのでしょうか。
 現在、国連が世界で展開している平和維持活動は15件あります。主なものを挙げますと、パレスチナとイスラエルの中東和平の国連休戦監視機構が、1948年6月以来現在まで展開しています。
 カシミール地方の支配を目指したインドとパキスタンの紛争調停のための、インド・パキスタン軍事監視団が1949年1月から現在なお活動中です。
 コンゴの独立維持と内戦防止のための国連コンゴ活動は1999年11月から続いていますし、地中海のキプロス島では、ギリシャ系住民とトルコ系住民の内戦拡大を防ぐため、1964年3月から国連キプロス平和維持軍が駐屯しています。
 1974年6月から中東のゴラン高原には、イスラエルとシリアの停戦維持のための国連監視団がいますし、1978年3月からは、イスラエルとレバノンの紛争防止のため、国連レバノン暫定軍が平和維持活動を行なっています。
 このほか、イラクとクウェートの国境沿いを非軍事化する国連イラク・クウェート監視団や、ロシアとグルジアの停戦監視を行なう国連グルジア監視団など、15の平和維持活動に世界で11万6000人が現地で活躍しています。
 国連は設立以来60年以上にわたって、63件の平和維持活動を行なってきました。こうした平和維持活動によって、多くの紛争が全面戦争に発展することを防いできたのです。

- 日本、国連分担金第2位。ドイツ3位。国連への貢献度高い日独 -
 国連活動の資金は各加盟国が分担していますが、2010年の通常予算は21億6650万ドルでした。分担金のトップはアメリカの5億1710万ドルで比率は22%。日本は2位で2億6500万ドルで12.5%です。
 以下、ドイツの1億6950万ドル(比率8%)、イギリスの1億3960万ドル(同6.6%)、フランスの1億2850万円(同6%)、イタリアの1億2950万ドル(同5%)と続きます。
 参考までに中国は6740万ドルで比率は3.1%、ロシアは3390万ドルで1.6%に過ぎません。
 かつて2000年のピーク時には、日本の分担比率は20%を超えていました。国連への分担金、貢献度をみても、日本やドイツが重要な決定権を持つ安保理の常任理事国に就任するのは理にかなった主張だといえましょう。

《国連憲章に今なお残る旧敵国条項》
- 総会で削除が採択されたが実現は難しい! -
 国連憲章には旧敵国条項と呼ばれる一文が残っています。
 『第二次大戦中に連合国の敵国であった国が国連憲章に違反する行動を起した場合、国連加盟国は国連決議に関係なく、単独でも無条件に軍事的制裁を行なうことができる』
 日本やドイツなどは、この旧敵国条項の削除を訴え、1995年の国連総会で旧敵国条項を削除することを多数決で採択しました。
 しかし、この採決が効力をもって正式に国連憲章が改正されるには、安保理常任理事国すべてを含めた国連加盟国の3分の2の政府によって批准されなければなりません。
 192カ国の加盟国のほとんどは、実際の国連活動に何ら影響のない、現実性の乏しい旧敵国条項に関心がありません。
 しかも多くの発展途上国や新興国が、自国の国会で進んで批准する可能性は非常に低く、国連憲章が改正されて旧敵国条項が正式に削除されるのはかなり難しいと見られています。
 今の国連活動にはほとんど影響はありませんが、歴史を感じさせる「旧敵国条項」が今なお国連憲章に残っているということは知っておいていいでしょう。

《国連ミレニアム開発目標とは》
- 貧困と飢餓の撲滅、生活改善に8つの目標! -
 国連は、2015年までに達成を目指したミレニアム開発目標と呼ばれる8つの重要な活動を展開しています。貧困と飢餓を撲滅し、エイズの蔓延を防ぎ、妊婦や幼児の死亡率を半減させようという、世界を救う世紀をかけた大プロジェクトです。
 まず第1に、1日1ドル未満で生活する人々や飢餓で苦しむ人々の割合を半減させます。第2に、世界のすべての子供たちが男女の区別なく初等教育の全過程を修了できるようにします。
 第3には、男女が平等な社会の推進と女性の地位の向上を図り、第4に5歳未満の幼児の死亡率を3分の2引き下げます。
 第5にお産で死亡する人の割合を4分の3に低下させ、第6にエイズやマラリアなどの蔓延を防ぎ、その病気に罹る人を減少させます。
 第7に、安全な飲料水やトイレなど基礎的な衛生施設に恵まれない人々の割合を半減し、20年までにスラムで暮らす約1億人の生活を大幅に改善します。
 最後に、開発の遅れた国や地域の産業や暮らしの向上に取り組んでいきます。国連のミレニアム開発目標に、今世界の大きな期待と関心が集まっています。
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