企業の海外進出に欠かせない「語学力」【国際】

企業の海外進出に欠かせない「語学力」


 海外でビジネス展開をめざす企業は、さまざまな形で英語を中心とした語学力の向上に力を注いでいます。こうした中、昨年インターネットを通じて電子商取引を手がける「楽天」や、「ユニクロ」の世界展開をめざすファーストリテイリングが相次いで、社内の公用語を英語にする方針を打ち出し世間を驚かせました。
 なぜ、日本企業でありながら英語を重視し、社内の公用語にするようになったのでしょうか。こうした動きの背景を考えてみることにしましょう。

企業の海外進出に欠かせない「語学力」 - 海外進出で新たなビジネスチャンスを!! -
 バブル崩壊後、日本経済は長期低迷状態に陥っています。加えて、2008年に起こったリーマンショックがそれに追い打ちをかけ、残念ながら景気回復の気配がまだ見えないのが日本の現状です。
 この結果、国民所得は減少し、少子化による人口減、若年層の就職難などによって国内市場が縮小する一方です。こうした中、日本企業が生き残るには海外の新興成長市場に進出し、優れた日本製品やサービスなどを提供することが不可欠です。こうした厳しい経済環境に置かれている日本企業にとって、英語による国際的コミュニケーション能力は必要不可欠なものとなっています。
 楽天やユニクロが「英語を社内の公用語にする」と表明したことで大きな関心を集めました。シャープも、研究開発部門で英語を公用語化する方針を決定しました。まだ一部門に過ぎませんが、企業のグローバル化をめざした動きであることは間違いありません。
 海外展開をめざす多くの企業は、それぞれ独自の方法で英語を通じて国際的コミュニケーション能力の育成を図っています。

- 社内英語公用語化への移行期間に入った楽天 -
 昨年6月、楽天の三木谷社長は「2012年のうちに社内の公用語を英語にする」と表明し、その理由として「日本企業であることをやめ、世界企業になる」ためだと説明しました。楽天は、近い将来には27カ国・地域での事業展開を行ない、取引高で27兆円を目標とする戦略を打ち立てています。そのため、海外ビジネスに精通した人材を育て上げる必要から今回の取り組みになったのです。
 社員に求められる英語レベルは、入社3年程度でTOEIC600点以上、管理職級は700点、役員候補級では750点以上が求められています。社員がレベル向上を図るため、語学学校に通う場合は割安で受講できるシステムを導入しています。すでに移行期間に入っており、社員食堂のメニューは英語で表記され、朝礼を英語で行なっている部署もあるそうです。

- 社員の目標はTOEIC700点レベル -
 ユニクロを展開するファーストリテイリングは、今後5年間で売り上げに占める海外の割合を、現在の10%から50%に引き上げる計画です。目標を実現させるためには、海外出店を積極的に進めていかなければなりません。そのため、企業活動のグローバル化が急務になってきます。英語の公用語化は、そのための一つの対策となっています。ファーストリテイリングで働く約4000人の社員に求められている英語レベルの目標は、2012年3月までにTOEICで700点のレベルに達することです。
 もっとも、両社とも強力な個性を持つオーナーが率いているため、「社内の英語の公用語化」に思い切って踏み切れたという声も聞かれます。こうした取り組みに対して「日本人同士がなぜ英語でやり取りしなければならないのか」、「英語力の優劣で昇進・昇給につながるのではないか」、「英語が目的化すのではないか」、「日本人が育んだ文化を軽視している」などと疑問を投げかける企業もあります。
 このため、英語の公用語化はまだ限定的な取り組みになっていますが、企業のグローバル化にともなって国際ビジネスの最前線では英語力は欠かせないツールになっていることは間違いありません。
企業の海外進出に欠かせない「語学力」 - 進む企業のグローバル化 -
 日本国内の市場が縮小する中、積極的に海外進出をめざす企業は増え続けています。当然、外国人社員の増加が見込まれ、日常会話はもちろんビジネスの最先端の現場で英語に接する機会が増えてくるでしょう。英語を自由に使いこなせないと、企業も社員もグローバル化に取り残されてしまいます。
 パナソニックの2011年の新卒採用は1390人ですが、このうち外国人を採用する「グローバル採用枠」を1100人設けています。なんと新卒者の8割を外国人が占めることになったのです。さらに、国内の新卒採用は290人ですが、この中には海外からの留学生も含まれているため、日本の学生の就職はライバルが増え一層厳しくなっています。こうした背景には、企業のグローバル化を図り2018年には売上高の海外比率を60%にまで引き上げる計画を実現させるため、日本人よりもそれぞれの国情を熟知する優れた外国人を採用した方が効率的だと判断したためです。
 外国人が企業の最高責任者を務めている会社もあります。イギリスのハワード・ストリンガー氏が率いるソニー、フランス人のカルロス・ゴーン氏の日産などの会社では、経営会議など主だった会議は英語で行われ、社内の資料なども日本語と英語で記されているそうです。人材の採用にあたっては、「国籍に関係なく、世界中から優れた人材を採用する」という方針を取り、世界を見据えたビジネス展開を行なっています。

- 求められる、「語学力」と「専門知識」 -
 企業のグローバル化が進展するにともなって、コミュニケーション手段としての英語とともに、ビジネスの現場で使用する専門的な語学力も要求されるようになってきました。ここで取り上げた各企業は、日本を代表するグローバル企業であるため、こうした取り組みは当然かもしれません。
 しかし、中小企業が日本を支えていると言われているように中小企業がひしめきあっています。そして、より大きな市場を求めて積極的に海外進出をめざす中小企業も少なくありません。これらの中小企業は、これまで蓄積してきた技術やノウハウを駆使し、オンリーワン企業として外国人と同じ土俵に立って競争しているのが現実です。
 将来、海外で活躍したいと思っている人は、企業の大小にかかわらず英語力とともに優れた専門的知識が求められています。このため、社会の流れを読み解き、将来に向けて充実した学生時代を過ごすことが重要です。就職してから英語を学び直すようでは、世界に伍して羽ばたくことは困難でしょう。
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