今年は地球の水資源を守る 「国際水協力年」【国際】

今年は地球の水資源を守る 「国際水協力年」


 開発途上国の工業化や都市化で水の需要が急増しています。しかし、気候変動による砂漠化や氷河の縮小、河川の汚染などで世界の水資源の枯渇が心配されます。国連では今年を「国際水協力年」に定めて水資源を守る国際協力を訴えています。あらためて深刻化する世界の水不足問題を考えてみましょう。

今年は地球の水資源を守る 「国際水協力年」 - 世界で7億人を超える人が水不足の状態に -
 地球は水の惑星といわれますが、地球上にある約13億5100キロ立方メートルの水の総量のうち97.47%が海水で、淡水は2.53%です。
 その淡水も大部分が氷河などに閉じ込められ、人間がすぐに使える河川や湖沼などの淡水は全体の0.01%にあたる約10万キロ立方メートルに過ぎません。そして今、供給可能な水資源は、気候変動や河川の汚染などで減少傾向にあります。
 一方、世界の水需要は人口の増加や途上国の工業化、都市化が進んで加速度的に増加し、地球規模での水不足が深刻となっています。 
 国連水資源報告書によりますと、約70億人の世界の人口のうち、現在7億人を超える人が水不足の状況にあり、不衛生な水しか得られないため毎年約180万人の子供が亡くなっています。

- 途上国の工業開発と都市化で水需要が急増 -
 途上国の人口が爆発的に増加し、それに伴って食糧の増産に追われています。その結果、農地に適さなかった乾燥地帯で大量の水を用いた灌漑農業が行われ、過去50年で水の需要は約3倍に膨らみました。穀物1キログラムを生産するのに約1000倍の1トンの水が必要といわれます。水不足はそのまま食糧難に直結します。 
 一方、中国や開発途上国の急激な工業化、都市化によって工業用水と生活用水の消費量も急増しています。2025年には工業用水と生活用水がともに50%以上増加する見通しです。今後、食糧増産や途上国の経済発展でますます水の需要が増え、水不足は一層深刻になると心配されます。

今年は地球の水資源を守る 「国際水協力年」 - 河川の汚染、過剰な揚水、気候変動などで細る水資源 -
 乱開発による水資源の破壊も深刻です。インドでは1億7500万人分、中国では1億3000万人分の穀物生産のため、過剰な揚水(地下水の取水)が行われています。中国の北東部では地下水の水位が低下し、年間2300平方キロメートルが砂漠化しています。また、内陸部の河川の汚染や黄河の干上がりなども指摘されています。
 気候変動による水資源の枯渇も大きな問題です。アジアは世界の人口の約6割を占めるにもかかわらず降水量は4割弱と少なく、気温の上昇と降雨量の減少で収穫期が短くなっています。さらに、アジアの大水源であるヒマラヤ山系のチベット氷河が近年小さくなって、水資源の枯渇が心配されています。

今年は地球の水資源を守る 「国際水協力年」 - 取水をめぐる利害の対立で国際紛争が -
 深刻化する水不足は、世界の各地で水の奪い合いによる紛争を引き起こしています。複数の国を流域に持つ国際河川では、それぞれの流域国が取水をめぐって利害が対立し、スムーズで合理的な水資源の利用を妨げています。
 中央アジアの内陸湖であるアラル海海域、インダス川、ヨルダン川、ナイル川、チグリス・ユーフラテス川流域は、古くから五大紛争地域と呼ばれてきました。インドシナ半島のメコン川やアフリカ西部のニジェール川などで水紛争の懸念が高まっています。
 アメリカ政府は2012年3月の水問題に関する報告書で、今後10年間で水不足によって世界各地で国家や地域間の緊張が高まる可能性があると警告しています。

- 国連が国際水協力年を設け協調を呼びかける -
 国連は2013年を「国際水協力年」に指定して、各国が協力して水資源の利用に取り組もうと呼びかけています。国連の調査では、世界の半分以上の人々が複数の国が共有する水資源に頼って生活しています。
 国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、国際水協力年に向けたあいさつで「水は人間と地球の福利の中心にある」と述べ、「すべての人が良質な水を利用する機会を確保するには、各国が協力して取り組むことが極めて重要」と訴えています。
「21世紀は水の世紀」
- 水資源の利害対立から多発する国際紛争 -
 石油や石炭、鉄鉱石などの資源争奪をめぐって戦争が繰り返された20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれました。対して21世紀は、水資源の確保や利権をめぐって国家間の紛争が激化する「水の世紀」ともいわれます。
 インドシナ半島を流れるメコン川は、中国、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ、カンボジアといった複数の国々にまたがる国際河川です。ところが近年、上流の中国やラオスのダム建設によって下流の水量が減少し、農業や漁業に深刻な被害を及ぼすとしてタイやベトナムがダムに反対して中国、ラオスと対立しています。
 同じようにインダス川やガンジス川の水利用でインドとパキスタンが対立を深めていますし、ナイル川でも上流のタンザニアやエチオピアのダム建設に反対して下流域のエジプトやスーダンと紛争の火種になっています。
 中東の水争いはもっと深刻で、チグリス・ユーフラテス流域のシリア、トルコ、イラクや、ヨルダン川流域のイスラエル、ヨルダン、パレスチナの間で紛争が絶えません。
 国連によると、現在国際河川は276ありますが、その60%が流域の国々による共同管理体制もなく、紛争の火種となる危険性があるとのことです。
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