国の利害がぶつかり合う外交交渉【国際】

国の利害がぶつかり合う外交交渉


【平和のための静かな戦い - 外交を考える】
 いま、世界各地で小競り合いや紛争が絶えません。当事国どうしの話し合いや周辺国を含めた多国間協議、首脳会談や国連などの外交の場で、平和解決のための交渉がなされています。戦争を避けるための静かな戦い、国と国との利害の衝突を話し合いで解決する外交を考えてみましょう。


国の利害がぶつかり合う外交交渉 - 今年は第一次世界大戦が始まって100年目 -
 今年は第一次世界大戦の勃発から100年目に当たります。5年にわたってヨーロッパ全土を戦火に巻き込み、900万人以上の兵士が死亡した悲惨な戦争でした。戦争が終結して22年足らずで、より悲惨な地球規模の第二次世界大戦が発生しました。何が原因だったのでしょうか。
 プロシャの軍人、クラウゼヴィッツは「戦争は他の手段でする政治(外交)の延長である」と『戦争論』で述べていますが、話し合いによる外交努力で戦争は避けられなかったのでしょうか?
国の利害がぶつかり合う外交交渉 - イギリス・フランスとドイツが植民地争奪で対立 -
 産業革命による生産過剰で、ヨーロッパは1870年代から20年以上におよぶ「大不況」と呼ばれる世界同時不況に見舞われました。不況から脱するためヨーロッパの列強は植民地経営に力を入れますが、「植民地先進国」であるイギリスやフランスと、遅れて植民地獲得に乗り出したドイツが対立します。
 一方、オスマントルコの支配下にあったバルカン諸国は、オスマントルコの衰退に伴って民族主義熱が高まり相次いで独立を宣言します。
 汎スラブ主義を掲げるロシアと、汎ゲルマン主義を掲げるドイツ・オーストリアが、勢力圏の拡大を図ってバルカン半島で激しく対立しました。

- 第一次大戦の導火線となったバルカン半島の民族対立 -
 1914年6月にオーストリア皇太子がセルビアの一青年に暗殺されるサラエボ事件が発生し、またたく間に同盟国側(ドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマントルコ、ブルガリア)と連合国側(イギリス、フランス、ロシア、セルビア、イタリア、日本など)による世界大戦に拡大していきました。
 第一次大戦の戦後処理を決めたヴェルサイユ条約で、ドイツは全植民地の放棄と本国領土の一部を喪失し、莫大な賠償金が課せられました。さらに世界恐慌が追い打ちをかけ、ドイツは超インフレに見舞われて経済混乱に陥り、500万人もの失業者が発生して社会不安が増大しました。

国の利害がぶつかり合う外交交渉 - ナチスドイツに対する融和外交が第二次大戦を招く -
 ヒトラーが率いるナチス政権は、第一次大戦で失った領土の回復、ドイツ民族が住む地域のドイツへの併合を叫んで再軍備による膨張政策を推し進めました。
 これに対してイギリスやフランスなどの連合国は、新たに誕生した共産主義国家ソ連の圧力をけん制するため、反共を掲げるナチスドイツの膨張主義に妥協を重ねる融和外交を展開していました。
 1938年のミュンヘン会議ではイギリス、フランスが、ドイツによるチェコ領ズデーテン地方の併合やポーランド、ハンガリー領の一部領有を認め、「交渉によって戦争は回避された」と平和外交の成果を強調しました。
 しかし、実際は強大な軍事力を背景にしたナチスドイツの覇権主義、膨張政策を容認することになり、翌年9月にドイツはポーランドに侵攻し第二次世界大戦が始まりました。

- 社会主義陣営(ソ連)と自由主義陣営(米国)の東西冷戦 -
 第二次大戦後の世界は、ソ連(ロシア)を盟主とする社会主義陣営(東側)と、アメリカを中心とする自由主義陣営(西側)の2大陣営に分かれ、多数の核兵器でお互いを牽制(核抑止力と言います)し合う「東西冷戦」の時代が続きました。
 この間にも、朝鮮戦争、中東戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、イランイラク戦争など局地的な戦いが起こりましたが、東西2大陣営による核の抑止力が働いて、世界規模の全面戦争を回避してきたともいわれます。

- 東西冷戦の終結で民族主義熱が高まり、不安定さを増す国際社会 -
 1989年の東欧革命で東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊し、1991年にソ連が滅んで東西冷戦が終結しました。世界の構図はこれまでの東西2大陣営の対立から、アメリカの一極支配体制となり、国際政治は国連中心主義に移っていきました。
 一方、経済のグローバル化が進み、国境を超えた資源や市場の激しい争奪(国際競争と言います)が繰り広げられて途上国間の格差が拡大しています。
 こうした一方で、民族主義の高まりと共に反政府ゲリラや反米テロが多発し、国際社会は不安定さを増し紛争や内戦の危機が増大していきました。

国の利害がぶつかり合う外交交渉 - 不安定な東アジア情勢。山積する日韓、日中、日露の外交課題 -
 アフガン戦争やイラクとの戦争などで膨大な財政赤字に悩む米国は、国防費の削減などで軍事的プレゼンス(影響力)が後退し、アメリカの一極支配が揺らいできたといわれます。逆に中国やロシアの政治的、軍事的プレゼンスが増大して、新たな国際緊張を招いています。
 とくに日本を取り巻く最近の東アジア情勢は、現在非常に不安定な状況にあります。隣国の韓国とは竹島問題、慰安婦問題、歴史認識の問題などで日韓関係はぎくしゃくしています。
 中国は「海洋強国化」を掲げて過去10年で国防予算は4倍(今年は約13兆4000億円)に増大し、東シナ海や南シナ海に大量の艦艇や航空機による海洋進出を進めて緊張を高めています。日本とは尖閣諸島の周辺海域を巡ってとくに緊張が高まっています。
 ロシアとは北方4島(択捉・国後・色丹・歯舞)の帰属に関する「北方領土問題」を抱えています。

国の利害がぶつかり合う外交交渉 - 北朝鮮とは拉致、核問題解決に向けた公式、非公式の外交交渉 -
 さらに国交のない北朝鮮とは、拉致問題、核開発問題の解決に向けた難しい外交交渉を強いられています。北朝鮮は米・ロ・英・仏・中国の5カ国以外に核兵器の拡散防止を取り決めた核拡散防止条約(NPT)から脱退を表明し、2005年、09年、13年に核実験を行いました。
 北朝鮮は核弾頭の運搬手段となり得るミサイル発射実験のほか、テロ組織や第三国への核兵器技術の移転が警戒されています。
 北朝鮮の核問題を話し合いで解決しようと、北朝鮮、韓国、中国、ロシア、米国、日本の局長級外交担当者で構成する6カ国協議は、2008年以降開かれていません。
 日本は北朝鮮と拉致問題の解決に向けた公式、非公式の政府間協議を通じて粘り強い外交交渉を重ねています。

- 多極化する国際情勢と日本の外交戦略 -
 日本の外交戦略の基本的スタンスは、日米同盟を基軸に国連と協調しながら、東アジアをはじめとした世界の安定と平和に貢献するというものです。
 憲法で国際紛争の解決に武力行使を放棄した日本は、1952年のサンフランシスコ条約で独立以来、日米安全保障体制をよりどころとして日米関係の強化を外交戦略の基本としてきました。
 かつて日本は、帝政ロシアの南下政策に対抗した日英同盟(1902〜23年)を外交戦略の基本としていました。
 戦後の日米同盟も社会主義陣営の盟主だった旧ソ連(ロシア)に対抗したものでしたが、東西冷戦の終結以降、多極化する国際情勢に対応した新たな外交戦略が求められるようになってきたといえます。

【多極化する国際情勢と日本の外交戦略】
- 日本は国連刷新と常任理事国入りを目指す -
 今、国際社会は飢えや貧困、テロの多発、絶え間ない紛争や難民問題、核兵器の拡散、環境問題など多くの課題を抱えています。世界の平和と安定を実現するためには、こうした問題解決に各国が足並みをそろえて取り組んでいかなければなりません。その唯一のよりどころとなるのが国連です。
 第二次大戦後の1945年に加盟51カ国で発足した国連は、現在193カ国が加盟し、活動領域は平和・安全保障から経済、社会、文化、教育、人道支援、環境など幅広い分野にわたっています。
 近年、東西冷戦構造の崩壊とEU(欧州連合)の拡大、中国やインド、ブラジルをはじめとした新興国の台頭などで世界は多極化し、グローバル化が進展して、国連を中心とした国際秩序の構築が強く求められるようになりました。
 現在、日本は国連を通じた多国間協力と、友好・協力関係を基盤とした関係国との二国間協力が相互に補完し合う形での外交を基本にしています。また日本は国連に対して、国際社会の平和と安全の維持に関する様々な意思決定を行う安全保障理事会(安保理)の改革を呼びかけています。
 安保理は15カ国の理事国で構成されますが、このうち拒否権を持つ5カ国の常任理事国は第二次世界大戦の戦勝国であるイギリス、フランス、アメリカ、ロシア、中国で構成されています。創設以来変わらない安保理のしくみは現状にそぐわなくなり、代表制や実効性の観点から改革を求める声が高まっています。
 日本は現実的な国連外交の成果を得るために、安保理改革を中心とした国連刷新と常任理事国入りをめざしています。
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