訪日外国人が5年連続で過去最高を更新【国際】

訪日外国人が5年連続で過去最高を更新


【東京五輪までに4000万人に増やす計画】
 日本を訪れる外国人は、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の年を除いて毎年のように増加し続けています。2013年に初めて1000万人を突破し、それ以降、5年連続で過去最高を更新し続けています。政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに、訪日外国人を4000万人に増やすという目標を掲げ、受け入れ態勢の拡大、充実を急いでいます。

訪日外国人が5年連続で過去最高を更新 【世界も日本にも国際観光客が増加】
- 「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始 -

 2003年、当時の小泉純一郎首相は、外国人の訪日を促して経済の活性化を図る「観光立国日本」という構想を打ち出しました。 この構想とは、2010年までに訪日外国人を1000万人にまで増加させるというものです。これを受け、国土交通大臣を本部長とする政府や地方公共団体、民間が参加する「ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部」が同年4月に発足しました。06年には観光立国推進基本法が成立し、08年には観光庁が設置されました。
 キャンペーンがスタートした03年の訪日外国人は521万人だったのに対し、海外に出かける日本人は1330万人に達していました。この格差を是正するため、海外での訪日プロモーションの展開、外国人への観光ビザの発給要件の緩和や免除、免税対象品の拡大や免税条件の緩和などを進めました。一方、国内でも観光資源の開発、空港や港湾の整備など受け入れ態勢の強化に取り組みました。
訪日外国人が5年連続で過去最高を更新 - 一時期を除いて順調に増加した訪日外国人 -
 キャンペーン実施以降、訪日外国人は順調に増加していきました。ところが2008年のリーマンショックで金融市場がマヒし、世界同時不況が始まりました。これを受け、訪日外国人も2009年には、前年の835万人から679万人に減少しました。
 東日本大震災が発生した2011年の訪日外国人は622万人で、前年の861万人より239万人(約28%減)も減少しました。28%減という下げ率は、統計が残る1950年以降、最大の下げ率です。
 しかし、その後はアジア太平洋地域での高い経済成長、円安基調の継続、格安航空会社(LCC)の増便・路線拡大や燃料サーチャージの低下、大型クルーズ船の寄港増加などさまざまな好条件が重なり、アジア地域を中心に訪日外国人の大幅な増加につながっています。
 訪日外国人数の推移表にみられるように、09年と11年を除いて訪日外国人数は毎年増加し、13年には1036万人と初めて1000万人を突破しました。以降、14年が1341万人、15年が1974万人で、16年が2404万人、17年も2869万人と5年連続で過去最高を更新しています。なお、2015年に訪日外国人(1974万人)と出国日本人(1621万人)の数が初めて逆転し、現在まで続いています。
訪日外国人が5年連続で過去最高を更新 - 増加が目立つアジア太平洋地域 -
 訪日外国人数は、5年連続で過去最高を記録しましたが、世界全体を見ると日本に来る旅行者だけが増えたわけではありません。海外旅行する人全体が増えているのです。国連世界観光機関の調べでは、16年の世界全体の国際観光客数は前年より4600万人増(対前年比3・9%増)の12・4億人を記録しました。09年はリーマンショックの影響で減少しましたが、それ以降は7年連続で増加しています。
 国際観光客を地域別にみると、紛争が続く中東地域以外は観光客が増加しています。人気の高い欧州は着実に増加し、16年では前年に比べて1220万人(2・0%増)増の6億1970万人となっています。アジア太平洋地域を訪れた観光客数は、前年に比べて2360万人増加(8・4%増)し、3億290万人と最も高い伸び率となっています。国際観光客受け入れ数は、ヨーロッパが依然として過半数を占めていますが、過去10年を見ると横ばい傾向を続けています。これに対し、アジア太平洋地域は、06年に19・4%でしたが16年には24・5%にまで拡大しています。
 なお、日本の16年の2404万人という訪日外国人数は、世界の外国人受け入れ数では15位、アジアでは中国、トルコ、タイ、香港に次ぐ5位となっています。
訪日外国人が5年連続で過去最高を更新 - 全体の83%を占めるアジアからの訪日客 -
 2016年のアジアからの訪日外国人は、前年比22・8%増となる2010万人になり、訪日外国人全体の83・6%に達しています。
 なかでも中国は、個人旅行やクルーズ船、航空路線の充実なども相まって、初めて600万人を超える637・3万人もの人が日本を訪れました。韓国も初めて500万人を超える509万人が訪日し、台湾でも個人旅行を中心に順調に推移して416・8万人が訪れました。東南アジアでは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の主要6か国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)から約250万人が日本を訪れました。
 欧州の主要5か国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)から日本を訪れた人は約94万人となっています。北米からは151・6万人で、このうちアメリカ人は124・3万人です。オーストラリアからは44・5万人が日本を訪れ、南米から7・8万人、アフリカからは3・4万人となっています。ロシアは経済制裁による経済の停滞などで海外旅行需要が低迷し、訪日客は前年とほぼ同じ5・5万人に留まりました。
訪日外国人が5年連続で過去最高を更新 - 訪日外国人による消費額は過去最高 -
 2017年の訪日外国人の消費額は4兆4161億円(前年比17・8%増)と過去最高を記録しました。一人当たりの消費額は15万3921円(前年比1・3%減)とわずかに減少しました。
 国・地域別にみると、中国が1兆6946億円と最も多額を消費しています。次いで台湾の5744億円、韓国の5126億円、香港の3415億円、アメリカの2503億円と続き、これら上位の5か国で全体の76・4%を占めています。
 訪日外国人の消費項目は、買物代が1兆6398億円と一番多く、次いで宿泊費の1兆2451億円、飲食費の8856億円と続きます。中国人の一人当たりの消費額は23万382円と他国の消費額に比べて群を抜いて多く、このうち買物に11万9319円も投じています。中国人による爆買い現象はこの数字からも伺えます。
 宿泊料金では、イギリス、オーストラリア、フランス、イタリア、ドイツ、アメリカなどが上位を占めています。訪日外国人の平均宿泊数は9・1日ですが、これらの国々の宿泊数は10~15日となっています。欧米豪からの旅行者は、宿泊費や飲食費、観光などにお金を使っているのに対し、アジアからの旅行者は買物に多くの費用を投じているようです。

- 訪日外国人旅行者をさらに増やすために -
 政府が17年に決定した新しい観光立国推進基本計画では、20年に訪日外国人数4000万人、消費額8兆円を目標にしています。この目標をクリアするためには、さまざまな対策が必要です。
 外国人旅行者が、日本で一番困っているのはコミュニケーションが取りにくいという問題です。今年1月、通訳案内士法が改正され、国家資格がなくても有料で訪日外国人向けの通訳ガイドができるようになりました。また、無料公衆無線LANの環境整備、交通機関などの外国語表示、外貨の両替所、観光案内所の整備を拡充するなど、外国人旅行者が安心して観光できる環境づくりを進める方針です。
 訪日外国人に人気の関東や関西などの大都市圏では、ホテルなどの宿泊施設の稼働率は8~9割まで上昇し、宿泊料も上昇しています。政府は17年6月に民泊新法を制定し、旅館業法との間で問題があった民泊を、年間180日を限度に営業を認めることになりました。また、政府は「地方創生のための観光地づくり」として予算を計上し、訪日外国人の地方誘致を進めています。地方ならではの自然や文化に触れ、日本の伝統文化を肌で感じてもらう「着地型観光」を推進し、地方の活性化を図る方針です。
 言語や宗教、習慣や食文化などが異なる外国人旅行者に、安全に楽しく日本を旅してもらい、リピーターとなってもらうには他にも方法がありそうです。官民一体となった受け入れ環境の整備が急がれます。
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