中東情勢のカギ握る知られざる国イラン【国際】

中東情勢のカギ握る知られざる国イラン


 【核開発に揺れる孤高のイスラム大国】
 1948年のイスラエル建国以来繰り広げられる果てしないパレスチナ紛争。2011年から始まった長期化するシリア内戦。内部抗争で迷走を続けるイラク。アラブの盟主を自認するサウジアラビアとカタールの断交。混迷する中東はアメリカと欧州、ロシアと中国の利害が交錯し、中東情勢の鍵を握るのは核開発問題で揺れるイランだともいわれます。
 アメリカは昨年5月にイランの核開発を制限する「イラン核合意」を破棄し、イランに対する制裁措置を強めて緊張を高めています。ペルシャの栄光を引きずる孤高のイスラム大国イランとはどんな国なのでしょう。

中東情勢のカギ握る知られざる国イラン - イランは古代ペルシャ末裔のアーリア人種の国 -
 イラン人はインド人と同じインド・ヨーロッパ語族(アーリア人種)に属し、BC2000年ごろ南ロシアから南下してイラン高原に入ったとされます。BC6世紀にアケメネス朝ペルシャが西アジアを征服しました。
 BC3世紀に入ってササン朝ペルシャが西アジア全域を支配しましたが、ローマ帝国と激しく争って国力が衰退し、その後アラビア半島に起こったイスラム帝国に滅ぼされてイランはイスラム化しました。
 16世紀にイラン人国家としてサファヴィー朝が成立し、イスラム教シーア派の国家として独自の道を歩みます。以後西のオスマン帝国、東のムガール帝国というイスラム教スンニ派の国々と抗争を続けました。
中東情勢のカギ握る知られざる国イラン - イラン革命で反米イスラム原理主義国家へ -
 その後イギリスやロシア帝国の支配を受けますが、20世紀に入ってパフラヴィ朝が独立を回復。第2次大戦後は欧米化を進めましたが、1979年にアメリカへの従属政策に反発した宗教指導者ホメイニを中心としたイラン革命が起こりました。
 これによって親米のパフラヴィ朝が倒れ、シーア派イスラム原理主義の宗教国家「イラン=イスラム共和国」が成立しました。
 イランはパフラヴィ朝時代にアメリカの援助で原発建設を進めてきましたが、イラン革命後欧米諸国との対立を強め、独自の外交・安全保障政策を展開して孤立化していきます。
 そして2002年にイラン国内で核兵器への転用が疑われるウラン濃縮施設が確認され、イランの核兵器開発疑惑が表面化しました。これに対して国連安保理常任理事の5カ国(米・英・仏・中・ロ)にドイツを加えた6カ国がイランに対して経済制裁を加えました。

- 米国がイラン核合意破棄で経済制裁を開始 -
 2013年に穏健派のロウハニが大統領に就任して、イランは国際協調路線に舵を切りました。15年7月にイランは6カ国との間で、核開発を大幅に制限する見返りとして金融や原油取引の制裁を緩和する「イラン核合意」がなりました。
 しかしアメリカのトランプ大統領は昨年5月、「核合意による制裁解除でイランは核開発を促進し、テロを支援して中東に大混乱を招いてきた」としてイラン核合意を破棄し、イランへの経済制裁を再開しました。
 イランはシーア派系のアラウィ派が主体となっているシリアのアサド政権をロシアとともに支援しています。これに対してアメリカはトルコ、サウジアラビア、ヨルダンなど近隣アラブ諸国とともに反政府勢力を支援して、シリア内戦は泥沼化しています。
 さらにイランは、レバノンのシーア派ゲリラ組織「ヒズボラ」を支援して自国製の武器を供給する一方、サウジアラビアと対立しているイエメンのシーア派反政府武装組織「フーシ」を支援しています。またイランは、その中継拠点となるイラクにシーア派勢力圏の構築を図って介入を強め、アメリカと激しく対立しています。

- 米国、サウジ、イスラエルと対立深めるイラン -
 イスラム教のシーア派とスンニ派の覇権争いに加えて、同じスンニ派のアラブ諸国でもイランを巡る対立が生じています。2017年6月にサウジアラビアやオマーンなど湾岸・アラブ4か国が、「テロ組織の支援やイランと密接に関係している」ことを理由にカタールと断交しました。
 世界最大の天然ガス産出国であるカタールは、イランの支援を受けて自主外交を展開しています。カタールとの関係親密化を進めるイランは、ロシアのバックアップを受けてイラク、シリア、レバノンなどへの影響力を強めています。
 アメリカはイランが核兵器はもとより、核搭載可能なミサイルを開発してテロを支援することに強い懸念を抱いています。アメリカの「イラン核合意」破棄でイランの核開発が野放しになれば、敵対するイスラエルがイランの核関連施設を攻撃したり、対立するサウジアラビアがイランに対抗して核武装に走る可能性が指摘されています。
中東情勢のカギ握る知られざる国イラン 【スンニ派とシーア派】

- ムハンマドの後継を巡って歴史的に対立 -
 イスラム教は7世紀に開祖ムハンマドの後継者(カリフ)を巡ってシーア派とスンニ派に分裂しました。指導者はムハンマドの教えである「スンナ(慣行)」を重視して話し合いで決めるべきだとするスンニ派と、4代目カリフの子孫を指導者として「アリーに従え(シーア・アリー)とするシーア派に分かれます。 
 イスラム教徒約16億人のうちスンニ派が約9割を占め、シーア派は1割程度ですが、イランではシーア派が約9割、イラクやバーレーンなどでも半数以上を占めています。
 スンニ派のボス的存在がサウジアラビアで、シーア派の頭目がイランです。またサウジと断交しているカタールもスンニ派ですが、アラブ諸国の中でも、中東を二分するシリア内戦やパレスチナ紛争を巡るイランの影響などで亀裂が生じています。
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