「民主主義」とは何か?民主主義 思想・制度の歩み【政治】

「民主主義」とは何か?民主主義 思想・制度の歩み


【全ての国民が国の意思決定に参加】
 政治のスタイルには、権力者が中心になって行う「君主制」「独裁制」などといった権威主義と、国民による国の意思決定、つまり国民主権を基本とする民主主義があります。私たちは各種報道で連日のように民主主義という言葉を見聞きし、実際に口にすることも珍しくありません。この民主主義はどのように始まり、その中身はどのようになっているのでしょう。

「民主主義」とは何か?民主主義 思想・制度の歩み 【民主主義の今日までの歩み】
- 民主主義の起源は古代ギリシャ -
 民主主義の原型は、市民の政治参加が認められていた古代ギリシャの都市国家(ポリス)に認められます。民主主義を表す英語のデモクラシー(democracy)は、もともとギリシャ語のデモス(人民 demos)とクラティア(権力 kratia)が結合した、デモクラティア(democratia)が語源になっています。
 古代ギリシャの都市国家アテネでは、紀元前500年ごろから女性や奴隷、他のポリスからの移住者を除く市民が直接政治に参加して意思決定をしていました。しかし、全ての市民が話し合うのは困難なためにリーダーを選び、リーダーが国の方針をまとめ、それを市民が判断するようになりました。ところが、時の経過とともに市民は扇動的なリーダーの意向に流され、政治は混乱していきます。当時のプラトンやアリストテレスなどの知識人は、こうした状態を多数の愚民による衆愚政治と厳しく批判しました。

- 古代ローマの政治体制は -
 衰退した古代ギリシャに代わって覇権を握ったのは古代ローマです。古代ローマは、大衆市民に国家を統治していく能力はないと考え、デモクラシーという言葉の使用は避けました。
 古代ローマは王政期、共和政期、帝政期と変遷していきます。王政ローマでは、王は貴族を含めたローマ市民の中から選ばれ、共和政ローマでは、元老院の執政官が市民集会での意見を反映する形で政治がおこなわれました。帝政ローマでも、元老院と市民が中心となって市民集会などでの市民の意見を反映させながら政治を遂行していきました。
 このように、市民が直接政治に参画することはありませんが、どの時代においても市民の意見は元老院を介して政治に反映されていました。

- 市民革命と近代民主主義 -
 民主主義的な考えや制度が政治の世界で重要な地位を占めるようになったのは、17〜18世紀にイギリスやフランスなどで起こった市民革命以降のことです。市民革命の原動力となったのが民主主義的な考え方でした。抑圧からの解放に向けた戦いの中で、国民主権、基本的人権の尊重、法の支配、民主的政治制度の確立などといった民主主義的思想・制度の原型が形成されていきました。
 こうした考え方を提唱し、体系化していったのがイギリスのジョン・ホッブスやフランスのジャン・ジャック・ルソーなどの思想家で、1775年から始まったアメリカ独立戦争にも多大な影響を与えました。現在でも、当時の思想をイギリスやアメリカ、フランスなどの各種法律の中に垣間見ることができます。

【民主主義とはどのような政治体制?】
「民主主義」とは何か?民主主義 思想・制度の歩み - 民主主義体制と権威主義体制 -
 政治体制を大別すると、民主主義体制と権威主義体制に分けることができます。権威主義体制とは非民主主義体制の総称で、独裁制や君主制などが含まれます。政治のスタイルで見ると、国民が選挙で選んだ人に権力を与えるか、生まれつき独裁的な権力を与えられている人が政治を行うかに分けられます。
 権威主義体制では、独裁的な権力を持った権力者が素早く的確な判断を下すことで国は発展していきます。しかし、こうした優れた権力者が何代も続くとは限らず、悪政を行う権力者が出てきても国民が辞めさせることは不可能です。権力者の周囲にいる人も、自分の地位を保持するために口出しできません。権力者を引きずり下ろすには、革命や内戦、クーデターなどといった暴力に訴える他ありません。

- 権力者を選び、チェックする -
 民主主義の特徴は、国民が選挙で政治家を選び、大きな権力を委ねるとともに絶えずチェックして、これはおかしいとなると辞めさせることができることです。選ばれた政治家は、辞めさせられる可能性があるため緊張感を持って仕事にあたります。一方、国民にも選んだ責任が生じます。こうした関係から政治の腐敗、間違った判断を防ごうというものです。
 民主主義とは、選挙で政治家を選び権力を委ねてみる。思わしい成果が望めないなら、次の選挙で新しい別の人に代わるということを繰り返します。つまり、試行錯誤の繰り返しで、この面からみると完璧な政治制度とはいえません。しかし、国民が政治家の選任に失敗したとしても、その失敗を取り返すことができるのです。こうした試行錯誤を繰り返す中で、より精度の高い民主主義が構築されると考えられています。

- 民主主義の克服すべき課題 -
 民主主義は、権威主義体制などと比較すると大変手間暇のかかる制度です。権威主義体制ではトップダウンで意思決定ができるのに対し、下から議論を積み上げる形で意思決定するため、多くの時間や手間、費用がかかるという問題を抱えています。一昨年の東日本大震災などの緊急時などでは、民主的な手続きにこだわるあまり、迅速な対応が遅れたという批判もあります。
 意思決定の最終形態として、多数決型民主主義と合意型民主主義があります。一部の小国を除いて大半の国は多数決型を導入しています。多数決型は合意型に比べて、意思決定が速くできるという半面、少数意見をどのように扱うかという問題があります。また、多数派支配をめざして特定の地域・階層・職種などの利益誘導型に陥りやすく、利益誘導にあたってさまざまな腐敗も起こります。
 民主主義の基本は、問題が生じると国民の意思で新しい人に権力を委ねると紹介しました。しかし、頻繁に政権の交代が行われると、政策の継続性が損なわれる可能性があります。これを防ぐために安易な妥協、時には議会の駆け引きで矛盾した決定がなされることも考えられます。民主主義は、他にもさまざまな問題を抱えていますが、国民の強い意志で問題を克服していく中で意識の向上、政党や政治家の政策力向上を図ることができます。

【民主主義をより発展させるためには】
「民主主義」とは何か?民主主義 思想・制度の歩み - 国民に主権があるのが民主主義 -
 民主主義の基本は国民主権です。国によって民主主義制度に微妙な違いがありますが、この大原則では一致しています。権威主義体制では、独裁者や王を頂点としたピラミッド型の支配体制が構築され、その中に国民は入ることができませんでした。 日本でも戦前までは、貴族や武士、天皇に権力が集中し、国民に政治的自由はありません。戦後、日本国憲法が施行され、その三原則「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」に見られるように、日本は民主主義国家に生まれ変わりました。
 民主主義の考え方に沿って行われる政治が民主政治です。日本の民主政治は、三権分立によって成り立っています。まず、政治を担う政治家を選ぶため、国民は自由な選挙で政治家を選び、彼らに権力を委ねます。日本では選ばれた政治家は国民のために奉仕しなければなりません。この関係がうまく機能しなければ、次回の選挙で別の人が選ばれることはすでに紹介したとおりです。

- 三権分立で互いにチェック -
 三権とは、法律を作る立法(国会)、法律に基づいて政策を実行する行政(内閣)、法律が憲法に違反していないか審査する司法(裁判所)のことです。この表は、これまで何度も目にしたと思いますが、三つの機関が互いにチェックし合っていることが良く分かります。法律を作る国会には衆議院と参議院の二院があり、より慎重に審議するようになっています。そして何よりも大切なことは、主権者である国民が真ん中に位置し、それぞれの機関に対して厳しい目を向けていることです。民主主義とは互いにけん制し合う制度、信用しない制度であるという見方もできます。

- 的確な判断を下すために -
 民主主義は、国民が制度の中心であることが良く分かります。国の動きに絶えず目を向け、時にはNOを突き付けることも必要です。このため、国民は政府からの説明、報道機関からの情報などを入手し、的確な判断を下さなければなりません。
 国民全てが満足できる民主主義は、まだ世界のどの国にも存在しません。民主主義とは失敗を繰り返し、試行錯誤しながら国民全てが切磋琢磨し、高めていくものです。民主化の深化の度合いは、国それぞれの民度のレベルを示しているといえるかも知れません。
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