与党が過半数を確保、 ねじれ国会が解消【政治】

与党が過半数を確保、 ねじれ国会が解消


 -参議院選挙を振り返って-
 第23回参議院選挙が7月21日に投開票され、自民党が過去最高の65議席を確保しました。自民党と連立を組む公明党も11議席を確保し、非改選議員を含めると与党は135議席の安定多数となりました。この結果、国会で衆議院と参議院の多数派が異なる「ねじれ国会」は解消されることになりました。
 今回の参議院選挙は、初めてネット選挙運動が解禁された選挙でもありました。ネット選挙運動の解禁で投票率の向上が期待されましたが、投票率は52・61%で戦後3番目の低さとなりました。また、選挙後ただちに一票の格差の問題も指摘されています。さまざまな角度から今回の参議院選挙を振り返ってみましょう。


与党が過半数を確保、 ねじれ国会が解消 - 衆議院と参議院の違い -
 日本の国会は、衆議院と参議院からなる二院制をとっています。二院制の大きな目的は、国にとって大切な法律などの審議を慎重に行い、一方の院の行き過ぎを抑えることです。このため、衆議院と参議院で大きな違いが見られます。
 衆議院選挙では、全国300の小選挙区から300人、全国11ブロックから比例で180人、合計480人を選びます。参議院選挙は各都道府県を単位とした47の小選挙区で146人、全国を1区とした比例代表96人を選びます。
 衆議院の任期は4年ですが、途中で解散があれば議員全員が資格を失います。参議院は解散がなく任期6年間務めますが、3年ごとに半数が改選されます。つまり、参議院議員の定数242人のうち半数の121人が、3年ごとの選挙で入れ替わっていきます。衆議院は任期が短く、いつ解散があるか分からないため国民の意思が反映しやすいとされています。このため、衆議院にはより強い権限、衆議院の優越が認められています。反面、参議院の被選挙権は30歳以上のため、キャリアを積んだ人が衆議院の判断をチェックできます。このため、「良識の府」と呼ばれることもあります。
与党が過半数を確保、 ねじれ国会が解消 - 「ねじれ国会」解消とは -
 7月21日の選挙翌日から、各メディアでは自民党の大勝を報じるとともに、「ねじれ国会」解消といった見出しが躍っていました。この「ねじれ国会」とはどのような国会のことでしょう。
 ねじれ国会とは、衆議院の多数派、つまり政権与党が参議院で少数派になり、野党が多数を占めている状態です。具体的には、昨年12月の第46回衆議院選挙で民主党が敗北し、現在の安倍政権が誕生しました。現在、衆議院では自民党は295議席、連立を組む公明党も31議席を持ち、両党合わせた政権与党の議席は過半数を大きく上回る326議席を占めています。
 しかし、今回の選挙前まで参議院の自民党は84議席、公明党は19議席で両党合わせても過半数には届いていません。つまり、衆議院と参議院とで多数派が異なるねじれ状態になっていたのです。
 今回の参議院選挙で、自民党は過去最多だった2001年の64議席を上回る65議席を確保、非改選議席と合わせると115議席と大幅に議席を増やしました。公明党も11議席を確保し、非改選と合わせると20議席になりました。この両党を合わせると135議席となり、各委員会の委員長の独占など安定した国会運営が可能になる安定多数を確保し、ねじれ国会は解消されました。
与党が過半数を確保、 ねじれ国会が解消 - 参議院選挙でも一票の格差が -
 選挙の度に問題になるのが1票の格差の問題です。今回の参議院選挙では、1票の格差を是正するため、定数の配分が変更されました。神奈川と大阪の両選挙区の定数を6から8に増やす一方、福島と岐阜の選挙区の定数を4から2に減らす「4増4減」が実施されました。この結果、1票の格差は最大4.77倍になり、前回の2010年の第22回参議院選挙の5.00倍よりわずかに縮小しました。しかし、格差が是正されないまま行われた今回の選挙は法律違反だとして、弁護士グループが高等裁判所に提訴しています。
 最高裁判所は昨年10月、2010年の参議院選挙で生じた最大5.00倍の格差を「違憲状態」と判断しています。今回、定数を4増4減したことで格差は縮まったものの依然として5倍近い格差が残り、こうした状況を裁判所がどのように判断するか注目されます。
 また、昨年12月の衆議院選挙の1票の格差をめぐる訴訟で、広島高裁が「違憲・無効」と判断し、他の高裁も「選挙は有効だが違憲」、「違憲状態」といった判断を示しています。今年中にも示される最高裁大法廷の判断が注目されます。

【ネット選挙運動が解禁された最初の選挙】
与党が過半数を確保、 ねじれ国会が解消 - 情報の充実、政治参加を求めて -
 インターネットを用いた選挙運動を解禁する公職選挙法の改正が、2013年4月に可決・成立しました。これまで、選挙の公正、候補者間の平等を期すため、選挙運動期間中に行われる文章図画の頒布・掲示、その他の選挙運動について一定の規制が行われていました。インターネットなどによる情報の伝達も、文書図画にあたるものとして規制されてきたのです。しかし、インターネットの普及や選挙期間中の候補者に関する情報の充実、有権者の政治参加を促すために、インターネットによる選挙運動が解禁されたのです。
 ネット選挙運動が解禁されたことで候補者や政党は、ウェブサイト(ホームページ、ブログ、ツイッターやフェイスブックなどのSNS、動画共有サービス、動画中継サイトなど)や電子メールを利用した選挙運動が可能になります。有権者もウェブサイトなどを利用した選挙運動が可能になりますが、電子メールを使用した選挙運動は禁止されています。

- 有権者が政治の主体に -
 これまでの選挙運動は、有権者ならだれでも選挙運動の主体になれるという建前とは異なり、候補者の陣営に属する「選挙のプロ」が取り仕切ってきました。このため、主権者であるにもかかわらず一般の人が選挙に関わるには、特定の陣営に参加しない限り選挙運動を行うことが困難だったのです。
 ネット選挙運動が解禁されたことで、有権者個々が支持する候補者を応援するために、SNSなどを通じて自らの意見を述べることができます。また、SNSを通して有権者と候補者との対話も可能になります。ネット選挙運動解禁によって、有権者の政治参加が促進されると期待されています。
 反面、個人でネット選挙運動を行うには、公職選挙法に定められたルールを個人の責任で負うことが求められます。このため、解禁後のルール変更については一人ひとりが十分に理解する必要があります。

- ネット選挙運動の主な禁止事項 -
 ネット選挙運動が解禁されるまでには長い道のりがありました。それはさまざまな違法行為が心配されたからです。ネット選挙運動を行うに当たって主な禁止事項は次のようになっています。
 選挙運動の方法に関しては、未成年の選挙運動は如何なる方法でも禁止されています。ネット選挙運動が解禁されても選挙運動期間外に選挙運動はできません。電子メールを使った選挙運動は候補者や政党に限られ、有権者は電子メールを使って選挙運動することは禁じられています。また、HPや電子メールなどを印刷して頒布することも禁止されています。
 さらに、候補者などのウェブサイトの改ざん、虚偽の事項の公表、氏名等を偽っての通信、悪質な誹謗中傷などは処罰の対象になっています。

- 投票率は52.6%と過去3番目の低さ -
 今回の参議院選挙は、ネット選挙運動解禁後、初の国政選挙ということで大きな関心を集めました。候補者の約9割がSNSを利用し、各政党もネットでの情報発信に力を注ぎました。
 しかし、期待された双方向での政策論争はあまり見られず、多くは演説会の中継や身辺雑記などに費やされたようです。こうしたこともあってか、ネット情報を参考に投票した人は10〜20%程度にとどまり、投票率は52.6%と過去3番目の低さとなりました。
 初めてのネット選挙運動ということで、候補者や各政党、有権者も手探りだったかも知れません。今後は、ネット選挙運動のメリットを最大限に生かし、双方向で政策論争などを行うことで、政治への関心の高まりが期待されています。
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