増加する自転車愛好者【交通】

増加する自転車愛好者


 近年のエコブームや、昨年起きた東日本大震災で多くの帰宅難民が出たことなどで、通勤や通学の交通手段に自転車を利用する人が増えています。自転車は誰でも手軽に乗れる乗り物ですが、正しいルールが知られていないことが多く、それによる自転車事故の増加や、違法自転車の摘発といった問題が続出しています。自らや周りの安全のために、意外と知られていない自転車のルールや法律を、改めて見直してみましょう。
 近年のエコブームや、昨年起きた東日本大震災で多くの帰宅難民が出たことなどで、通勤や通学の交通手段に自転車を利用する人が増えています。自転車は誰でも手軽に乗れる乗り物ですが、正しいルールが知られていないことが多く、それによる自転車事故の増加や、違法自転車の摘発といった問題が続出しています。自らや周りの安全のために、意外と知られていない自転車のルールや法律を、改めて見直してみましょう。


- 自転車は法律上「自動車」と同じ扱い -
 平成18年度の自転車産業振興協会の調査では、日本の自転車保有台数は7189万3千台と、子どもからお年寄りまで幅広い年代が手軽に利用できる乗り物です。しかし、歩行者として歩道を歩いている時、自転車の運転にヒヤリとした経験を持つ人も多いでしょう。
 自転車は、法律上は軽車両にあたり自動車と同じ扱いとなるため、自動車と同様に「道路交通法(道交法)」が制定されています。道交法とは、交通事故などの危険防止を目的とした「安全」と、渋滞の緩和などの「円滑」のバランスを図ることを目的とした法律です。ただし、道路状況や道路利用者の通行形態はさまざまなので、状況に応じた判断や解釈が重要となります。
 自転車は、免許の要らない車だといえます。一人ひとりがルールやマナーをきちんと知り、守る必要がある乗り物だということを認識しておきましょう。

増加する自転車愛好者 - 事故を防ぐカギ「自転車安全利用五則」 -
 自転車による事故数の増加を受けて、平成19年に警視庁の交通対策本部は「自転車安全利用五則」を設定しました。
①自転車は、車道が原則、歩道は例外
 道路交通法上、自転車は軽車両と位置づけられています。そのため、歩道と車道の区別があるところでは、車道通行が原則です。
②車道は左側を通行
 自転車は、道路の左端に寄って通行しなければなりません。
③歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
 歩道では、すぐに停止できる速度で、歩行者の通行を妨げる場合は一時停止しなければなりません。
④安全ルールを守る
・飲酒運転、二人乗り、並進の禁止
・夜間はライトを点灯
・信号を守る
・交差点での一時停止と安全確認
⑤子どもはヘルメットを着用
 児童・幼児の保護責任者は、児童・幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるようにしましょう。
※歩道通行については①「普通自転車歩道通行可」の標識や表示がある場合②運転者が、児童・幼児(13歳未満)・70歳以上の高齢者などの場合③車道又は交通の状況からみてやむを得ない場合などの例外を除いて、走行が禁止されています。

増加する自転車愛好者 - 自転車事故の多くがルール違反によるもの -
 平成22年度の警察庁の統計では、自転車が当事者となった交通事故は15万1626件で、これは交通事故全体の20・9%にあたります。さらに、事故の死傷者のうち65・2%、15歳以下の子どもにおいては73・4%が、安全確認を怠った飛び出しや歩道上でのジグザグ運転などによる衝突事故といった、道交法や自転車安全五則のルール違反によるものです。
 自転車には、自動車やバイクの違反に見られるような、前科とならないために反則金を科すための交通反則切符(いわゆる青切符)の適用がありません。そのため、悪質な違反はストレートに刑事処分に繋がってしまうのです。実際に摘発も多数行われており、飲酒運転やひき逃げによる逮捕者も出ているほか、歩行者との人身事故で数千万円の賠償金が命じられたケースもあります。
 信号無視や一時停止違反、傘をさしての片手運転による違反についても、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。昨年度は携帯電話を使用しながら自転車に乗っていた15歳の女子高校生が、度重なる注意を無視したとして罰金の支払いが命じられました。
 ルール違反で事故を起こした場合、年齢に関わらず、事故を起こしたという刑事上の責任だけでなく、被害者に対する謝罪、高額の賠償金の支払いなど民事上の責任も大きくのしかかってきます。
増加する自転車愛好者 - 歩道では歩行者優先の意識を! -
 警視庁が2010年にまとめた交通事故の発生状況によると、自転車の関連事故のうち相手が歩行者のケースは、1999年に801件だったのが2003年に2000件を超え、09年には約3000件と大幅に増加しています。このうち、2009年度は4件の死亡事故が発生しました。
 最も多い事故は、繁華街での自転車と歩行者による接触事故です。中高校生による自転車事故も増加しており、損害賠償については、就職後に収入を得られるようになってからの支払いが定められています。昨年、歩行者のショルダーバッグに自転車をひっかけて転倒させた男子高校生には、1743万円の支払いが命じられました。携帯電話の使用中、歩行者に衝突して後遺障害を負わせた女子高生には、5000万円の高額賠償が命じられています。
 標識により、歩道で自転車走行が可能な場合でも、歩行者優先という意識が大切です。あまり知られていませんが、自転車が歩行者にベルを鳴らして道をあけるよう促すのは、歩行者通行妨害として違反にあたり2万円以下の罰金が科せられます。

- 自動車と自転車との共存に向けて進む専用道の設置 -
 歩道での歩行者と自転車との事故の増加を受けて、自転車を車道で走らせる指導や対策が進められてきました。しかし、実際には自転車が関係した交通事故のうち、8割以上が車との接触事故によるものです。車道を走る自転車は、スピードを上げる車の傍を怯えながら走行しなければならず、事故が発生する状況は極めて高くなります。
 このため、全国で自転車専用道路や自転車の通行帯のある道路の設置に向けて、整備が進んでいます。しかし、自転車通行路の確保に伴う道路整備には、莫大な費用や時間がかかります。 整備を促進させるため、警視庁は昨年7月に、自転車一方通行の標識を新設する「標識標示令改正案」をまとめました。現在設置されている専用道は約3千キロ、自転車の走行が認められている歩道は全国で約7万6600キロに及びます。整備前と整備後では、事故が約30%前後減少したという調査結果もあります。
 専用道の設置により、自転車事故の危険が少なくなると期待される一方で、道路沿いや歩道脇にある店の売り上げが減少するなど新たな問題も持ち上がっています。そのため、地域ごとの細かい実態調査や実験も求められています。
増加する自転車愛好者 - 1月1日より「自転車総合対策推進計画」が実施 -
 警視庁では今年1月1日より「自転車総合対策推進計画」を実施しました。これは、通勤や通学時の自転車利用者の増加を受けて、安全確保を目的として策定されたものです。危険な自転車や乗り方に対して取り締まりを強化するとともに、自転車の歩道の通行に対する柔軟な運用が盛り込まれています。
 例えば、警察署ごとに街頭指導などを集中的に実施する重点路線を設け、自転車の交通量や実態などに応じた対策や指導を徹底。ブレーキが正しく取り付けられていない自転車に対して警告なしに交通切符を適用するほか、携帯電話を使用しながらの走行やヘッドフォンを付けての走行などへ、指導強化を行います。
 歩道の通行にあたっては、むやみに自転車の車道通行を強制するのではなく、歩行者を妨害するような行為に対して指導を強化するともに、歩道での徐行を促します。また、車道や歩道の交通量が多い場所では、自転車専用通行帯の整備を進めていく方針です。

- 教育現場や地域で安全の意識付け -
 自転車の安全な利用を推進するには、交通安全教育によるマナーやルールを徹底して周知させる必要があります。文部科学省は昨年12月、「安全な通学は危険回避力の育成から」として、児童生徒の通学時の安全を確保するための、映像教材の作成を決定しました。
 通学時に使用する自転車と歩行者の事故や、登下校中に危害を加えられる事件を減らす目的で、実践的な内容が盛り込まれます。自転車に乗る時のルールや注意点を重点的に教えると同時に、事故の際の応急手当ての仕方や、補償問題、防犯などについて、実例を交えた対応を学ぶことができます。
 また、徳島県や鳥取県などの一部地域で「自転車検定」という取り組みが行われています。この検定が取り入れられている小学校では、自転車検定に合格しなければ自転車に乗ることが認められません。マナーやルールの意識付けなどに欠かせないと各地からの注目度も高く、もしかすると近い未来、自転車にも免許が必要な時代がやってくるかも知れません。

- ブレーキ無し自転車の摘発が増加 -
 最近、ピストバイクと呼ばれる競技用自転車の摘発が相次いでいます。ピストバイクは、脚力で自転車を止める仕組みで、ブレーキが付いておらずファッション性が高いとされ、アメリカ映画の影響を受けてブームとなりました。しかし、ブレーキが付いていない自転車は、制動装置不良として道交法違反にあたり、公道を走ることは禁止されています。違反した場合は、5万円以下の罰金が科せられます。2009年に2件だったピストバイクの摘発件数は10年に686件と急増しています。昨年起こったピストバイクとお年寄りとの衝突が死亡事故へと発展し、警察による取締りが本格的になりました。
 また、自転車は「道路交通法施行規則の制動装置の基準(ブレーキ基準)」によって、通常の乾燥した路面において時速10キロで通行中、3メートル以内でスムーズに自転車を停止させる性能を有していなくてはなりません。ピストバイクは、危険を察知してからの制動距離が、ブレーキの付いている自転車の2~3倍になるといわれます。

- 事故件数に比例する自転車保険の需要 -
 自転車利用者の加害事故は、実際に賠償が発生しているものが多く、近年自転車保険の需要が高まっています。自分がけがをした時に備える「交通事故傷害保険」や、他人にけがをさせたり物を壊したした時にも補償がある「自転車総合保険」「TSマーク」などがあります。
 TSマークとは、東京都の公益財団法人である日本交通管理技術協会が管理する、自転車安全整備に保険が付いたものです。協会が認定した自転車安全整備士が点検し、安全が証明された自転車にマークが貼られます。
 コンビニや携帯電話で気軽に申し込みができる、利便性の高い保険が注目されているようですが、自転車保険への加入は強制でないため、本格的な普及にはまだまだ時間がかかるでしょう。
 事故の減少のためには、取り締まりの強化や保険加入の推進はもちろん、個人個人が安全への心がけを持つことが求められています。
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