「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!!【医療】

「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!!


【人類の歴史は、感染症との闘いでもある】

 - 以前は、伝染病と呼ばれた「感染症」 - 
 感染症とは、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が私たちの身体に入り、病原体そのものの力や病原体が出す毒素などで身体に異常が現れる病気です。そして、感染するのが大きな特徴で、これまで一般に「伝染病」と呼ばれてきました。しかし、1999年4月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」が施行され、感染症と呼ばれるようになりました。
 人類の歴史は、感染症の脅威にさらされ、その戦いの歴史であったといえます。ウイルスの一部はワクチンの開発で対処し、細菌の恐怖にはペニシリンをはじめとする抗生物質で、感染症の制圧に努めてきました。ところが、たえず新しい感染症が出現し、人類と感染症間で終わりのない戦いを続けています。例えば、2002年に中国で端を発したSARS(サーズ)、アメリカで報告されたAIDS(エイズ)、牛の脳に異常が出るBSE(狂牛病)など、皆さんもよく耳にする新しい感染病が世界各地から報告されています。その中の一つ、「鳥インフルエンザ」が、現在世界中で大きな関心を集めています。

「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!!  - 細菌とウイルスはどう違う? - 
 ウイルスと細菌(バクテリア)の大きな違いは、その大きさです。細菌は約1000分の1・程度で、普通の光学顕微鏡で見ることができ、1個、2個と数えられます。
 一方、ウイルスは電子顕微鏡でしか見えない大きさで、粒子という単位で表現されます。さらに、細菌は1個の生き物として細胞の中に養分を取り込みながら生命を維持しています。ところが、ウイルスには細胞がなく、他生物(宿主)に寄生して、そこから養分を吸収して増殖します。
 ウイルスの種類は豊富で、現在約3万種が見つかっているそうです。ウイルスが原因で発生する感染症には、日本脳炎、はしか、天然痘、狂犬病などがあり、一度かかるとはしかのように免疫を獲得して、二度とかからないものもあります。細菌が原因の感染症としては、結核、赤痢、コレラ、ジフテリアなどが良く知られています。
 




【「高病原性鳥インフルエンザ」を引き起こすウイルスとは?】
 - インフルエンザウイルスは3種類 - 
 インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型が存在し、冬季を中心に学級閉鎖など人に集団感染させるのがA型とB型です。この中で、遺伝子の複製過程で間違いが生じて、新型ウイルスが出現し、世界的大流行(パンデミック)を引き起こすのがA型ウイルスです。インフルエンザウイルスの表面には、HA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ)という、トゲのようなたんぱく質が突き出しています。このトゲは、宿主に取り付くときや、複製を終えて出て行くときに重要な役割を果たすのですが、突然変異を起こしやすい性質を持っています。このHAやNAの遺伝子に突然変異が起こると、同じウイルスであってもその表情を変えることになります。少しずつ表情を変えるため、人がせっかく作った免疫を巧妙にくぐり抜け、毎年のように流行を繰り返しています。
毎年、どの型のインフルエンザが流行するか分からないため、Aソ連型(H1N1)やA香港型(H3N2)、B型の3種類を混合したワクチンを作り、毎年姿を変えるウイルスに備えています。

 - A型ウイルスの供給源は水禽(アヒルやカモ)類 - 
 A型インフルエンザウイルスは、人間などの哺乳類や鳥類に広く分布していますが、その起源を遡ると水禽類、中でもカモが有力と見られています。この鳥のインフルエンザウイルスと人のウイルスとは異なったウイルスで、鳥類のインフルエンザを「鳥インフルエンザ」と呼んでいます。
 一般に、鳥インフルエンザウイルスは、野生の水禽類に自然宿主し、腸管で増殖しています。宿主自体に病原性を発生させることはなく、弱毒性インフルエンザと呼ぶこともあります。しかし、鶏やうずらなどの家禽類が感染することで病原性を発揮させます。しかし、大部分は病原性が低く、死に至ることはほとんどありません。ところが、感染の過程で遺伝子の変異が起こり、鳥類の大量死亡など非常に高い病原性を示すものがあり、これを「高病原性鳥インフルエンザ」と呼び、世界中で恐れられています。それは、鳥から人への感染が心配されるからです。
「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!!  - 鳥から人への感染例も報告 - 
 これまで、ウイルスは宿主となる動物の種の壁によって、鳥から人に感染しないと考えられてきました。ウイルスが取り付く受容体(細胞)が鳥と人とは異なるため、鳥と鳥、人間同士といった互いの感染以外は考えられなかったのです。
 ところが、香港で1997年に発生した鳥インフルエンザに18名が感染し、6名が死亡。2003年にも、同じく香港で2名の感染が確認され1名が亡くなりました。オランダでも同年、防疫に関わっていた人を中心に数十人がインフルエンザの症状を示し、死亡した1名の獣医師から鳥インフルエンザウイルスが見つかっています。
 アジアを中心に2003~2004年に流行したH5N1型高病原性鳥インフルエンザは、家禽類はもとより、猫科の動物や人間にも感染しました。ベトナムやタイなどで多くの人が感染し、数多くの死亡例が報告されています。
「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!!  - 感染者が増えることで、世界的大流行の懸念 - 
 種の壁に守られていると考えられていましたが、この壁は絶対的な物ではなかったのかも知れません。鳥から鳥に感染していく中で遺伝子の突然変異が起こり、変異した大量のウイルスの中から、種の壁を乗り越えるウイルスが生まれた可能性が考えられます。
 そして恐ろしいことに、一時的に鳥インフルエンザの感染、発病を食い止めてもこうしたウイルスは世界各国にあっという間に広がり、静かに潜んでいる可能性が高いのです。これだけ人間の感染者が増えると、人間のインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが混じり合い、人間から人間に感染しやすいウイルスが誕生し、世界的な大流行(パンデミック)の発生が懸念されます。
 この場合、これまでとは異なる新型インフルエンザウイルスが誕生したことになり、効果的な予防法や治療法が整備されておらず全世界で多くの犠牲者が出ることが予想されます。WHOなど国際機関が積極的に取り組んでいるのはこのためです。

 - 心配される人から人への感染は? - 
 すでに鳥インフルエンザウイルスが、人から人へ感染した例が世界各地で報告されています。2003~2004年にかけてアジアで流行した鳥インフルエンザで、ベトナムで15人、タイで8人が死亡、またインドネシアでも多くの死者が出ました。この中に、明らました。この中に、明らかに人から人への感染と見られるものが含まれています。
 ベトナムの家族内での感染死亡例を見ましょう。長男が、自分の結婚式の披露宴で招待客に料理を振舞うため、生きた鳥を調理したことで毒性の高いインフルエンザに感染し、死亡しました。兄を見舞った姉妹も感染し、姉が死亡しました。また、インドネシアでは第三世代までの感染例が報告されています。
 こうした例が繰り返されると、人に対して非常に強い感染力を持つウイルスに変化してしまう可能性が心配されています。

 - 高病原性インフルエンザの症状は? - 
 弱毒性のインフルエンザウイルスは、呼吸器や消化器の粘膜に留まりますが、高病原性鳥インフルエンザは、鶏などの家禽の全身がウイルスに感染し、ほぼ100%死に至る恐ろしい病気です。感染した鶏が100羽単位で死んでいる写真や映像を目にした人もいることでしょう。
 人がこのウイルスに感染すると、突然38度を越える高熱に見舞われ、咳や痰などの気道症状が現れます。さらに下痢、嘔吐、腹痛や胸痛などを発症し、全身倦怠に陥ります。そして重症の人は、肺炎や全身の多臓器不全で命を落とすのです。H5N1型高病原性鳥インフルエンザによる致死率は、60%前後と大変恐ろしい数字を示しています。
「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!! 【恐ろしい鳥インフルエンザから身を守るには!】
 - 通常のインフルエンザ対策を徹底 - 
 鳥インフルエンザは通常のインフルエンザと同様に、感染した人の咳やつばなどから放出されたウイルスを吸入することで感染します。
 このため、個人でできる対策としては、ウイルスの吸入を避けるために外出時のマスクの着用、人込みに必要意外に立ち入らないことや、外出後のうがいや手洗いなどが上げられます。さらに、バランスのよい食事と十分な休養など、通常のインフルエンザ対策を徹底させることが大切です。
 また、風邪の諸症状を訴える人には、マスクの着用や自宅での療養を促すことも大切になってきます。

 - 「鳥インフルエンザ」が発生すると - 
 鳥インフルエンザは、そのウイルスが完全に滅んでいない以上、いつどこで出現するか予測できません。残念ながら、鳥インフルエンザの発生を未然に封じ込める方策がまだ見つかっていません。このため、感染拡大を防ぐためには、感染した鳥を速やかに殺処分することが大切になります。それが、人への感染源となるウイルスを減らし、人がウイルスに触れる可能性を減少させるからです。
 不幸にして鳥インフルエンザに感染すると、最新の医療体制を持つ医療機関でも、有効に対処するのは至難の技とされています。現在では、ウイルスの増加を抑制する抗インフルエンザウイルス薬の早期投与が有効とされていますが、治療効果はまだ実証されていません。
 予防の決め手になるのはワクチンですが、ワクチン開発には新型インフルエンザの株をもとに開発するため、発生から製造まで半年以上もかかり、大流行を食い止める決め手になるか疑問です。
「鳥インフルエンザ」はこんなに恐ろしい!!  - 国際機関が協力して世界的大流行(パンデミック)を阻止 - 
 不幸にして、鳥インフルエンザが発生し、流行の兆しを見せると世界的な対応が求められます。交通機関の発達などで、数日でウイルスは世界中に飛散し、数多くの人の命を奪うことになるかも知れません。
 鳥インフルエンザは、地域限定の感染症ではなく、地球規模でとらえる必要があります。先進国や途上国などの壁を乗り越えて対処していかなければなりません。このため、日本はもとよりWHOやFAO(国連食糧農業機関)、OIE(国際獣疫事務局)などの国際機関が、協力してこの対策にあたっています。注意深く見守るとともに、各自ができることを実行していくことが大切です。
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