若者を中心に 「新型うつ病」が増加【医療】

若者を中心に 「新型うつ病」が増加


- 医学的定義や学術上の根拠は不明 -
 厚生労働省が全国の医療機関に対して3年ごとに実施している「患者調査」によると、気分障害患者(うつ病など)数はここ12年間で2・4倍に増加し、2008年には104万1000人にも達しています。うつ病患者の医療機関への受診率は低いことが分かっており、実際にはもっと多くの患者がいると推測されています。
 こうした中、近年20〜30代前半の若い世代に、従来のうつ病とは異なる「新型うつ病」患者が増加し大きな関心を集めています。

若者を中心に 「新型うつ病」が増加 - 「うつ病」ってどんな病気? -
 うつ病は、一言で説明するのは大変難しい病気です。一般的にうつ病とは脳のエネルギーが欠乏した状態であり、それによって憂鬱な気分やさまざまな意欲が減退するという心理的症状、身体的な症状をさします。具体的には、社会的環境の変化に上手く対応できず、不安感や焦燥感にかられて自責的になり、症状としては食欲の減退、不眠、精神活動の減退などが現れます。しかし、人間には自然治癒力が備わっているため、規則正しく普通の生活をしていると多くの場合は時間の経過とともに元の状態に戻ります。病気として捉えられるのは、時間が経過しても改善しない場合や、悪化して生活への支障が大きくなった状態のことです。
 うつ病は症状の現れ方によって、うつ状態だけのものを「うつ病」、うつ状態と躁状態の両方が起こるものを「双極性障害(躁うつ病)」、以前は神経症と呼んでいた軽い抑うつ状態が長期間続く「気分変調症」などに分類されます。

- 若者を中心に発症する「新型うつ病」 -
 これまで、うつ病は社会生活を長く経験し、さまざまなストレスを積み重ねてきた中高年層に多く見られてきました。
 これに対して注目を集める新型うつ病は、20〜30代前半の若者に多く見られ、過食や過眠、パニック発作、対人過敏などといった従来のうつ病にはない症状を訴えます。自分を責めるという自責的な従来型のうつ病と異なり、他人や周りの環境のせいにする他責的な傾向を示し、患者の多くは他者への配慮が乏しい成熟度の低い若者に発症するケースが多く見られます。
 職場などで人間関係が上手くいかない時、会社や上司、同僚のせいにするため、逃避型のうつ、回避型のうつと呼ばれることもあります。職場にいる間は憂鬱で仕事が手に付きませんが、職場を離れて自分に合った好ましい環境であれば元気に活動できます。このため、「ただ怠けているだけではないか」と批判されることもあり、新型うつ病に苦しむ患者さんを悩ませます。
 近年、増加傾向を示す新型うつ病ですが、まだ医学的な定義もはっきりせず、その扱いも精神科医師の間で意見が分かれているそうです。
若者を中心に 「新型うつ病」が増加 - 複雑な要因が重なってうつ病に -
 うつ病を引き起こす原因は一つではなく、日常生活の中で起こるさまざまな要因が複雑に結びついて発症します。
 その要因として大切な人の死や離別、仕事や財産などの喪失、職場や家庭での人間関係や役割の変化などの環境要因があります。また、強い責任感、仕事熱心、完璧主義、几帳面といった性格傾向も発症要因と考えられています。
 努力の成果が現れている時は、脳のエネルギーを放出しても回復しますが、結果が得られない場合は回復されず、脳のエネルギーの枯渇につながり発症の危険が高まります。さらに、「遺伝的要因」や「慢性的な身体疾患」もうつ病の発症要因と考えられています。
 新型うつ病は、本人の気持ちや心構えといった内的要因と、職場などでの人間関係という外的要因とが複雑に絡み合い、結果として新型うつ病を発症させます。内的要因については、病院での診察や友人に悩みを打ち明けることで回復します。外的要因については、転職や引っ越しなど、患者の環境を変えることで症状が軽減する場合があります。
 ただ、職場にいると発症することから、職場に問題があると考えがちですが、実は本人の心構えといった内面に問題を抱えていることも珍しくありません。この場合は、環境を変えても良くならず、新型うつ病の原因解明を困難にしています。

- 精神疾患が自殺に大きく関与 -
 厚生労働省は2011年、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に、増え続けるうつ病や認知症などの精神疾患を加え、5大疾病として重点的に医療体制を整備することにしました。新しく加わった精神疾患の患者数は2008年で約323万人に達し、がん患者の2倍以上、4大疾病で最も多い糖尿病の237万人に比べてもずば抜けた数字となっています。
 精神疾患の中でも一番多いのがうつ病で、日本人の約15人に1人が一生のうちに一度はかかる病気だといわれています。うつ病は本人に病気という自覚が乏しく、周囲も気づかないのが現状です。体調に変調が起きても、怠けていると見られたくないため治療をためらう人も少なくありません。
 毎年、3万人を超える自殺者の大多数は、何らかの精神疾患が関係していると言われています。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、自殺やうつ病による社会的損失は2009年で約2・7億円と推定しています。増え続けるうつ病を、現代病として決して軽視することなく、正面から立ち向かっていきたいものです。
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